皆様はエンディングノートを作成していますか?これは相続のトラブルを回避するための重要なポイントとなります。相続の準備は「遺言書だけ」で十分と思われがちですが、実際の現場では“どこに何があるか分からない「連絡先が不明」「契約や口座が見つからない」といった情報不足がトラブルの火種になります。
この記事は、相続トラブルを減らすためのエンディングノートの書き方、遺言書との違い、テンプレートの選び方、保管・共有のコツ、相続発生後に役立つチェックリストまでを行政書士やっくんが一気通貫で解説します。すごく長くなりますがそれだけ大切なことなので最後までお付き合い下さい。
エンディングノートと遺言書
相続トラブルの多くは「財産の多寡」よりも「情報の不足」と「認識のズレ」から起きます。
エンディングノートは、相続手続きに必要な情報(口座・不動産・保険・借入・連絡先)を一冊に集約でき、遺族の探索コストを大幅に下げます。
また、介護や医療、葬儀の希望、家族へのメッセージを残すことで、遺族が判断に迷う場面を減らし、感情的な対立の予防にもつながります。
ただし「エンディングノートは遺言書の代わりにはならず、法的効力もありません。
遺言書は民法で定められた厳格な要式行為であり、自筆証書遺言や公正証書遺言として適切に作成された場合、そこに記載された財産分与や身分行為(子供の認知など)は法的な強制力を持ちます。一方で、エンディングノートはあくまで「私的なメモ」や「手紙」の延長線上に位置するものであり、そこに「自宅は長男に譲る」と記載しても、相続人全員の合意があれば無視して遺産分割協議を行うことが可能です 。
| 比較項目 | エンディングノート | 遺言書(自筆証書・公正証書) |
| 法的効力 | なし(希望・申し送り事項) | あり(法的強制力を持つ) |
| 形 式 | 自由(市販ノート、大学ノー ト、アプリ等) | 民法等の法律で厳格に規定(形式不備 は無効) |
| 主な記載内容 | 介護、医療、葬儀、供養、メッ セージ、自分史、デジタル遺品 | 財産分与、遺産分割方法の指定、遺言 執行者の指定、認知 |
| 開封・確認 | 生前いつでも確認可能、家族共 有推奨 | 原則死後(自筆証書は家庭裁判所の検認 が必要な場合あり) |
| 費 用 | 数百円〜(無料もあり) | 数千円〜数万円(公正証書は資産額に よる) |
| 作成の柔軟性 | 何度でも書き直し、修正が容易 | 訂正にも厳格なルールがあり、書き直 しは手間がかかる |
遺言状について詳しく知りたい方はこちら

表の通り、両者は対立するものではなく、相互に補完し合う関係にあります。財産の法的な分配に関しては遺言書に委ね、その「理由」や「背景にある想い」、そして遺言書には書ききれない事務的な詳細(相続人の連絡先、財産の一覧、借入の有無、保険・年金の情報、葬儀の希望など)をエンディングノートで補足するという「併用」こそが、最もリスクの低い終活戦略となります。
遺言書には「付言事項(ふげんじこう)」という項目を設けることができます。これは法的効力を持たないメッセージ部分ですが、この付言事項の有無が相続人の納得感を大きく左右します。しかしながら、遺言書という硬い文書の中では、書き記せる分量や表現に自ずと限界があります。
エンディングノートは、この付言事項を無制限に拡張したような機能を持ちあわせており、例えば、ある特定の相続人に多くの財産を残す場合、遺言書には「全財産をAに相続させる」としか書けなくても、エンディングノートには「Aは長年にわたり私の介護に尽くしてくれた。
Bには生前に住宅購入資金として3000万円を援助したので、今回はAに多く残したい」といった具体的な経緯や感謝の言葉を綴ることができます。判例においても、故人の真意を探る資料としてエンディングノート的な記録が参照されるケースが増えており、法的な拘束力はなくとも、事実上の「争族防止ツール」として極めて高い効果を発揮します 。
死後の事務手続きシミュレーション ~ なぜ「記録」が必要なのか
エンディングノートを作成する最大のメリットの一つは、残された家族の事務的負担を劇的に軽減することにあります。多くの人は、自分が亡くなった直後から、まだ寂しさや悲しみの中で粛々とやらなければならない手続きが、家族にどれほどの負担が強いられるかを具体的にイメージできていません。ここでおさらいの意味で、自分が亡くなった後の手続きをまとめてみたいと思います。
身内が亡くなったその瞬間から、遺族は悲しむ暇もなく法的な手続きのタイムリミットに追われることになります。
① 死亡診断書の取得と死亡届の提出(7日以内):これが行われなければ火葬許可証が発行されず、葬儀を行うことができません。本籍地や届出人の住所地役場での手続きとなります 。
(死亡届、火葬(埋火葬)許可申請は依頼した葬儀会社が代行して行うケースが多いです。)
② 葬儀の手配:故人の宗旨・宗派は何か、連絡すべき親族や知人は誰か、遺影に使う写真はどこにあるか、これらを数日以内に決定しなければならなりません。エンディングノートに「連絡先リスト」や「遺影のデータ場所」が記載されていれば、遺族は迷うことなく手配を進められます 。
(特に、お盆等で帰省する習慣がなく、お寺やお墓に行ったことがないという子供が喪主となる場合は注意が必要。葬儀会社で僧侶を紹介してくれるケースもあるが、宗派の違う僧侶となってしまうこともあり、これでは故人であるあなたはうかばれません。)
葬儀が終わった後も、怒涛の期限付きの手続きは続きます。
・ 市役所、役場:世帯主変更届、国民健康保険の資格喪失手続き(保険証返却)又は後期高齢者医療保険の資格喪失手続き(被保険者証返却)、介護保険資格喪失届(介護保険被保険者証返却)、マイナバーカード・運転免許証返却
・ 年金事務所:国民年金受給権者死亡届、厚生年金受給権者死亡届(注意1)、遺族年金受給のための請求(注意2)
注意1 厚生年金は10日以内
注意2 期限がありませんが5年で時効となりますので、手続きを忘れた場合5年間しか遡れません。また、受給権者がいる場合、今後の大切な生活の基盤となる大事なお金であるため、死亡届の手続きの際、合わせて手続きして下さい。
・ 家庭裁判所:相続放棄、限定承認
これが最も重要な法的ハードルとなります。もし故人に多額の借金があった場合、相続人は3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きをしなければ、相続人は大変な事態の追い込まれることになります。エンディングノートに「借入先」や「連帯保証の有無」が明記されていなければ、遺族は借金の存在に気づかず、この期限を過ぎて、多額の借金を背負うことになってしまいます。故人の借金を回避する方法としては、相続放棄の他に限定承認という方法もあります。ただし、限定承認は相続放棄が相続人単独で行えれるのに対し、相続人全員の申請となる点が違います。
相続放棄と限定承認の比較
| 項 目 | 相続放棄 | 限定承認 |
|---|---|---|
| 負債の扱い | 一切引き継がない | 財産の範囲内で返済 |
| プラス財産 | 受け取れない | 残れば受け取れる |
| 手続きの難易度 | 比較的簡単 | 複雑 |
| 相続人の人数 | 個別に可能 | 相続人全員の同意が必要 |
| 期 限 | 死亡を知った日から3カ月以内 | 同じ |
・ 管轄税務署 準確定申告
故人に所得があった場合1月1日から死亡日までの所得を計算し、申告・納税する必要があります 。この手続きには、源泉徴収票、事業帳簿、不動産収入の明細が必要となります。
※ 下記の所得があった場合に必要 (主なもの)
個人事業主としての事業所得
不動産収入(アパート・駐車場など)
法人等に勤務していて給与収入、役員報酬が2,000万円超
給与を2か所以上から受けていた
株式・不動産の売却益
公的年金が400万円超
・ 管轄税務署 相続税の申告
相続税の申告は、相続手続きの中でも特に期限が厳しく、内容も複雑な分野です。「相続開始を知った日の翌日から10カ月以内」という期限は延長ができないため、早めの準備がとても大切になります。相続がまとまらない場合でもとりあえず法定相続扱いで納税しなくてはいけません。この場合、配偶者控除、小規模宅地等の特例という大きな節税対策が行えなくなります。(申告3年以内ならば後に提出すれば後に適用になります。)
相続税には大きな基礎控除があり、課税割合は国税庁の統計(令和4~5年)では10%弱と言われています。従いほとんどの相続人は気にしなくて大丈夫です。ただ、素人では価値のわからないものが相続された場合(不動産、高額な骨董品、金、宝石類)は必ず専門家に相談して下さい。
※ 基礎控除(相続税の申告が必要のない金額)の計算方法
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
例:相続人が配偶者+子2人(計3人) → 基礎控除額 = 3000万円 + 600万円×3 = 4800万円
※ 生命保険の非課税枠(上記基礎控除とは別扱い)
500万円×法定相続人の数
例:相続人3人 → 1500万円まで非課税
・ 不動産所在地の管轄法務局 相続に伴う土地・家屋の所有者移転登記
不動産(土地・建物)を相続・遺贈によって取得した相続人に対して、「一定期間内に相続登記をしなければならない」と法律上の義務を課す制度です。不動産登記法改正により、令和6年4月1日(2024年4月1日)から施行されています。
※ ① 相続開始があったことを知りかつ不動産を所得した事を知った日から3年以内 ② 遺産分割が成立した日から3年以内 ①が基本で、遺産分割協議があった場合は②となります。
・ 公的機関以外
■ 銀 行
亡くなると銀行口座は凍結されてしまいます。これを解除しなくてはなりません。
手続きの内容: ①預金の払い戻し ②名義変更(相続人名義へ) ④貸金庫の開扉手続き
必要書類: ①戸籍(除籍)謄本 ②相続人全員の戸籍 ③遺言書又は遺産分割協議書
④印鑑証明書
■ クレジットカード
手続きの内容: ①カード会社へ死亡連絡 ②自動引き落としの停止 ③ポイントの扱い(会社によって相続不可)
■ 証券会社
手続きの内容: ①証券会社へ死亡連絡 ②相続手続き(口座名義変更または解約)③上場株式・投資信託の評価額の取得(相続税申告に必要)
■ 生命保険
手続きの内容: 死亡保険金の請求
必要書類: ①死亡診断書 ②保険証券 ③受取人の本人確認書類
※ 保険金の請求期限は3年以内となっています。
■ 自動車関係
手続きの内容: ①車検証の名義変更 ②自動車税の納税義務者変更 ③廃車手続き(不要な
場合)④自動車保険会社に契約者死亡の連絡 ⑤車の保険の名義変更
■ ライフライン、各種サブスクリプション
手続きの内容: ①電気・ガス・水道の名義変更または解約 ②インターネット・電話・NHKの解約または名義変更 ③Amazon、Netflix、携帯電話などの解約
■ その他よく忘れられるもの
- SNSアカウントの削除(Facebook、Xなど)
- 電子マネー(PayPay、楽天Payなど)の残高確認
- ポイント(楽天・Tポイントなど)の相続可否確認
- 町内会・自治会の脱退
- 介護サービスの解約・返却(ベッド・車椅子など)
一人の人間が亡くなられると相続人はこれだけの膨大な手続きをしなくてはいけません。たとえば銀行口座の情報がわからなかった場合、相続人は公共料金の引落口座や年金の振込口座等を探り出し、取り合えずはメインバンクは見つけることが出来ますが、一気に全部の銀行を調べるシステムはありませんので、見つからない場合は休眠預金となってしまいます。
銀行口座ばかりではありません。皆様がエンディングノートに書き記しておけば、相続人が苦労せずにすむことが山とあります。このことについて次に章で説明します。
ツールの選択ガイド
エンディングノートには多種多様なフォーマットが存在します。無料で配布されるものや長期保存が可能なしっかりとしたものまで様々です。
長期保存を前提とするならば、紙質や製本がしっかりしている文具メーカー製をお勧めします。
【おすすめ】コクヨ「もしもの時に役立つノート」 (LES-E101等) エンディングノートのスタンダードとも言える製品です。特徴は、銀行口座や保険、クレジットカードなどの記入欄が詳細に設計されており、今日からすぐに書き始められる構成になっている点です。また、重要なデータを保存したCD-Rや写真を収容できるディスクケースが付属している点も、遺影データやデジタル遺品のバックアップ管理において実用的です 。
製品ページへ コクヨ LES-E101
① ダイソー「もしもノート」: B5サイズで5種類(じぶん、おかね、けんこう、おつきあいれんらく、うちのこ)あり、これらで、エンディングノートの全てを網羅出来ます。現代的なニーズに対応した項目が設けられているうえ、初めての方でも一目で理解できる内容となっています。店舗にない事が多く、複数店舗回るか、ダイソーのサイトでの購入が必要となります。
製品ページへ ダイソー「じぶんノート」
② セリア「 もしもに備える情報ノート 」:A5サイズで全32ページとコンパクト。必要最低限の項目をサッと書きたい場合や、持ち歩き用、下書き用として適しています。
東京都や大阪府の一部自治体ではエンディングノートを印刷物で配布していますが、残念ながら、札幌市を含め北海道では印刷物を配布している自治体はありません。しかしながら、北海道内の各法務局・地方法務局と各司法書士会が共同して作成したエンディングノートが無料で配布されています。またPDF形式でのダウンロードも可能です。詳しい情報は下記をご覧ください。
エンディングノートの実践的作成マニュアル(資産・契約編)
ここからは、「トラブルを防ぐための具体的な書き方」を解説します。
① 預貯金:金融機関名、支店名、口座種別、口座番号をリスト化する。特にネット銀行や、通帳を発行していない口座(Web通帳)については、ここで記載されないと休眠預金となってしまう可能性があるため、最優先で記載しましょう。
② クレジットカード:カード会社名だけでなく、年会費の有無も記載しましょう。死後に解約し忘れると年会費が発生し続けるリスクがあります 。
③ サブスクリプション:動画配信、音楽、ジム、サプリメントの定期購入など。これらはクレジットカード明細から追うのが困難な場合があり、解約漏れによる「死後の課金」が続きやすい。IDとサービス名を一覧にしましょう。
① 借入金:住宅ローン、カードローン、知人からの借金。複数ある場合はリストにしましょう。借入先、借入金の総額、残債(1年に1度額を更新)等出来るだけ細かく情報を記載しましょう。
② 保証人:誰の、何の契約の保証人になっているか、また通常の保証人なのか連帯保証なのかを詳細に記しましょう。 これらの情報が漏れていると、遺族が相続放棄の判断を誤り、後から多額の請求を受けるという最悪の事態を招きかねません 。
① 本人情報:氏名/生年月日/本籍/住所/運転免許証・パスポートの保管場所
② 緊急連絡:親族/友人/勤務先/主治医/介護事業者
③ 重要書類の場所:印鑑/通帳/権利証(登記識別情報)/保険証券
不動産に関しては、自宅だけでなく、地方にある山林や原野、私道の持分なども漏らさず記載しましょう。固定資産税の納税通知書が届かないような免税点以下の土地は、家族が存在を知らないまま放置され、数世代後に所有者不明土地問題へと発展するケースがあります。権利証や実測図の保管場所も明記しましょう。
エンディングノートの実践的作成マニュアル(デジタル・医療・生活編)
資産以外の項目、特にデジタル遺品や医療ケアの希望は、「長生き」よりも「その人らしく生きられること」を重視する考え方(QOL)に直結します。
① スマートフォンのロック解除:これが全ての入り口です。スマホが開かなければ、中の連絡先も写真も、ネット銀行の認証アプリも使えません。
② SNS・クラウド: FacebookやInstagramなどのアカウントを「削除してほしい」のか「残してほしい」のか。Googleフォトなどのクラウドストレージにある写真データの扱いを記しましょう。
【セキュリティ対策】 ただし、パスワードをそのままノートに書くのは盗難・紛失の危険性があります。何かしらの対策が必要となります。例として①IDだけ書いて、パスワードは自分にしか分からないヒントを書く②パスワードの一部を伏せ字にする③重要なパスワードを書いた紙は封筒に入れ、信頼できる相続人にのみ保管場所を伝える④銀行の貸金庫に保管するといった工夫が必要です 。
判断能力を喪失した際、どのような医療を受けたいか。
① 延命治療:胃ろうや人工呼吸器による延命を望むか、自然な最期を望むか(尊厳死の希望)。
② 告知:ガンなどの重篤な疾患が見つかった際、余命告知を希望するか。
③ 介護:施設に入りたいか、自宅で介護を受けたいか。また、その費用はどの資産から捻出してほしいか。
④ 既往歴・投薬:アレルギー情報や常備薬の記録は、救急搬送された際に医療従事者にとって貴重な情報源となるります。
⑤ ペット:引受人候補、かかりつけの病院、動物保険加入の有無、飼育費の準備などの情報。
特に延命治療に関しての意思表示は、家族が「延命治療を中止する」という重い決断を迫られた際、精神的な免罪符となり、家族の心の負担を大きく軽減する効果があります。
① 連絡リスト:訃報を知らせるべき友人・知人のリスト。逆に、関係が悪化しているなどして「知らせないでほしい人」がいれば、それも明記することでトラブルを防げます 。
② 形式:家族葬か一般葬か。宗教・宗派の指定。
③ 遺影:祭壇に飾る遺影は、遺族が慌てて探すと良い写真が見つからないことが多いです。お気に入りの写真データや保管場所を指定しておく ことが重要です。(※ 葬儀会社が集合写真などから亡くなった方を切り抜いてそれなりの写真にしてもらうことが出来ますが、不自然な写真となる場合が多く、やはり自分でお気に入りの写真を残しておくことが大事です。)
これは滅多にある事例ではありませんが、もし認知した子供がいるのに家族に隠したまま亡くなると、後の相続における戸籍調査で必ずその事が判明します。その際事情の分からない家族に、より深い悲しみをもたらすばかりか、亡くなった方への不信感及び相続の際のもめ事の原因となります。遺言書にその事について記載するのであれば、エンディングノートに事の経緯を記すことにより、家族の悲しみや不安、亡くなった方への不信感も幾ばくか和らぐこととなります。
【文 例】 私の人生には、家族に話せずにいた出来事があります。若い頃の未熟さから、戸籍上認知している子どもが一人います。このことを伝えられなかったのは、皆を傷つけたくなかったからです。しかし、結果として負担をかけてしまうことになり、本当に申し訳なく思っています。遺言書には、この事実を踏まえて私なりに考えた内容を記しています。どうか、私の気持ちを汲んで受け止めてもらえると嬉しく思います。そして、これまで支えてくれた家族に心から感謝しています。皆の幸せを、いつまでも願っています。
エンディングノートの実践的作成マニュアル(メッセージ編)
前項ではエンディングノートにおける必要不可欠な記載事項について説明しました。ただこれらだけでは遺言書の付言事項の延長でしかありません。最後は家族へのメッセージを必ず記しましょう。
エンディングノートに家族へのメッセージを書くことは、単なる「最後の挨拶」ではありません。 残される家族にとっては、心の支えとなる「あなたの声」を残す行為であり、相続や看取りの場面でも大きな意味を持ちます。
人は、大切な人を失った後、 「もっと話しておけばよかった」 「本当はどう思っていたのだろう」 と後悔や不安を抱えがちです。
メッセージがあるだけで、「本人の気持ちを直接聞けた」という安心感が生まれ、心の負担が軽くなります。
遺言書は法的な文書ですが、エンディングノートは気持ちを伝える場所です。
・ なぜその遺言内容にしたのか
・ 家族にどう受け止めてほしいのか
・ 争わないでほしいという願い
こうした想いが書かれていると、 家族が遺言を受け入れやすくなり、トラブルの予防につながります。
普段は照れくさくて言えない言葉も、 エンディングノートなら素直に書けます。
「ありがとう」「支えてくれて嬉しかった」 こうした言葉は、残された家族にとって一生の宝物になります。
エンディングノートは、人生の最終章を自分の言葉でまとめる機会でもあります。
・ どんな人生だったか
・ 何を大切にしてきたか
・ 家族に何を託したいか
これらを言葉にすることで、 自分自身の人生を肯定し、穏やかな気持ちで最期を迎えられるという効果もあります。
① 優しく感謝を伝えるメッセージ
親愛なる家族へ
これまでの人生を振り返ると、皆の存在が私にとって何よりの支えでした。
嬉しい時も苦しい時も、そばにいてくれたことに心から感謝しています。
皆と過ごした日々は、私の宝物です
どうかこれからも、お互いを思いやりながら歩んでいってください。
皆の幸せを、いつまでも願っています。
② 遺言内容を受け入れてほしい時のメッセージ
家族へ
別途作成している遺言書には、私の考えを整理して記しています。
その内容は、皆がこれからも安心して暮らしていけるようにと願って決めたものです。
どうか、私の気持ちを汲んで受け止めてください。
そして、このことで家族の間に争いが生まれないよう、
穏やかに話し合ってくれることを願っています。
③ 家族にこれからの生き方を託すメッセージ
大切な家族へ
私は、皆が仲良く支え合って生きていく姿を見るのが何よりの喜びでした。
これからも、どうか助け合いながら、温かい家庭を築いていってください。
私がいなくなっても、皆の幸せをずっと願っています。
完成度を高めるための運用と保管
エンディングノートは「書いて終わり」ではありません。むしろ、書いた後の運用こそが重要です。
全ての項目を埋めようとすると挫折します。完璧を目指すのではなく、まずは「名前」と「緊急連絡先」から始めましょう。鉛筆やフリクションペンで書き、誕生日や正月など、年に一度は見直して情報を更新する習慣をつけ、ライフステージの変化(孫の誕生、配偶者との死別、資産の変動)に合わせて、ノートも成長させていくも一つです 。
エンディングノートの作成者からすると「見られたくない」が「見つけてもらわないと困る」という矛盾に直面します。 仏壇の引き出しや本棚など、分かりやすい場所に保管するのが基本ですが、内容はプライベートなものであり、生存中は誰にも知られたくはない情報もあります。たとえば、宝くじに当たって数億の当選金を手中にした場合などは、生存中は家族であっても知られるべきではありません。
そこで推奨されるのは、「エンディングノートを書いたこと」と「保管場所」だけを、信頼できる家族(キーパーソン)に伝えておくことです。中身を全て見せる必要はありませんが、緊急時にアクセスできなければ意味がありません 。大きな財産が絡む場合は、① 銀行の貸金庫に預ける(ただし死亡後すぐに開けられない)② 行政書士、司法書士、弁護士などの専門家に預ける③ デジタル保管(クラウド、USBドライブ等)が考えられます。
なお、法務局に自筆証書遺言書保管制度というものがありますが、残念ながら、法的効力のないエンディングノートは預けられません。
一人で書き上げる自信がない、あるいは法的な整合性をチェックしてほしいという場合は、行政書士による「エンディングノート作成支援サービス」を利用するのも有効です。
行政書士は、ヒアリングを通じて頭の中を整理し、書き漏らしを防ぐだけでなく、遺言書作成へのスムーズな移行や、尊厳死宣言公正証書の作成、さらには身寄りのない方のための「死後事務委任契約」の締結など、法的な裏付けを持った終活全体をサポートすることができます 。
特に、死後の事務手続きを委任する契約(死後事務委任契約)は、エンディングノートに書かれた希望(葬儀や遺品整理など)を、法的な契約に基づいて第三者に実行してもらうための強力な手段であり、おひとりさまの終活においては必須のスキームとなりつつあります 。
やっくんからのアドバイス
本記事を通じて解説してきたとおり、エンディングノートは単なる事務連絡帳ではありません。それは、自分がいなくなった後の世界で、大切な家族が迷路に迷い込まないための「地図」であり、あなたの人生の軌跡と想いを伝える「未来へのラブレター」です。
相続トラブルの多くは、金銭的な問題以上に、感情的な対立やコミュニケーション不足から生じます。エンディングノートによって、あなたの「意思」と「家族への愛」が明確に示されていれば、多くの事務的負担は解消され、家族はあなたを偲ぶための十分な時間を持つことができます。
行政書士として最後に伝えたいことは、先延ばしにしないで「まずはペンを執ってみる」ということです。今日書いた一行が、将来の家族の笑顔を守る防波堤となります。完璧でなくとも良いのです。あなたの言葉で、あなたの想いを残して下さい。
困ったときは下記までご相談下さい。
初回相談料無料
(ただし60分まで)

☎ 011-788-3883

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