古物商許可、聞いたことはあるけど詳しい内容はわからないという方は多いと思います。ただ、副業で転売やせどりを行っている方にとっては重要な許可です。
昨今、フリマアプリやネットオークションの普及により、誰でも簡単に物を売買できるようになりました。「副業で少し稼ぎたい」という軽い気持ちで始めたことが、実は法律違反になっていた……そんなケースが後を絶ちません。
今回は、ゲームソフトやトレカの転売で年間1,000万円を売り上げていたものの、古物商許可を持っていなかったために取り返しのつかない事態に陥った「W氏」の実例を交え、古物商許可の重要性について解説します。
古物商許可とは?意外と知らない法律の基礎
まずは、「自分は関係ない」と思っている方のために、法律の基本を確認しましょう。
古物商許可とは、「古物営業法」という法律に基づき、中古品(古物)をビジネスとして売買するために必要な都道府県公安委員会の許可のことです。 この法律の最大の目的は、「盗品の売買防止」と「被害の速やかな回復」にあります。そのため、管轄は警察署(生活安全課)となります。
ここが最も勘違いされやすいポイントです。 許可が必要なのは、「転売(利益を出す)目的で、中古品を買い取る(仕入れる)場合」です。
① リサイクルショップやフリマアプリで安く仕入れて、高く売る。
② 「新品・未開封」として出品されている物を個人から買い取って売る(※一度消費者の手に渡った物は、未開封でも法的には「古物」です)。
③ ジャンク品を買い取り、修理して売る。
④ 中古品を買い取りレンタルをする。
⑤ 自分以外の第三者から商品を預かり、販売を行う。(マージンを受け取る)
これらはすべて「古物商許可」が必要です。
逆に、以下のようなケースでは許可は不要です。
① 自分が長年使っていた不用品を売る。
② 無償でもらった物を売る。
③ メーカーや卸問屋から「新品」を仕入れて売る(一般的な小売業)。
④ 海外で自分で購入したものを売る。
⑤ 食料品等消費して無くなるものを売る。
・ 許可の申請先
営業所(自宅兼事務所など)を管轄する警察署の防犯係(生活安全課)です。 書類を作成し、平日の日中に警察署へ出向く必要があります。
・ 許可に必要なもの
① 手数料: 19,000円(申請時に証紙で納付)
② 申請書: 様式が決まっています。
③ 添付書類: 住民票、身分証明書(マイナンバーカードや運転免許証ではありません。本籍地の役所で取得する証明書です)、誓約書、略歴書など。
④ 管理者: 営業所ごとに管理者を置く必要があります(申請者本人でも可)。
古物営業法施行規則では次の13品目に区分されています
| 区分 | (1)美術品類 | 書画、彫刻、工芸品等 |
|---|---|---|
| (2)衣類 | 和服類、洋服類、その他の衣料品 | |
| (3)時計・宝飾品類 | 時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等 | |
| (4)自動車 | その部分品を含みます。 | |
| (5)自動二輪車及び原動機付自転車 | これらの部分品を含みます。 | |
| (6)自転車類 | その部分品を含みます。 | |
| (7)写真機類 | 写真機、光学器等 | |
| (8)事務機器類 | レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等 | |
| (9)機械工具類 | 電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等 | |
| (10)道具類 | 家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、 蓄音機用レコード、磁気的方法又は光学的方法により 音、影像又はプログラムを記録した物等 | |
| (11)皮革・ゴム製品類 | カバン、靴等 | |
| (12)書籍 | ||
| (13)金券類 | 商品券、乗車券、郵便切手及びこれらに類する証票その他の物として古物営業法施行令第1条に定められているもの |
※ 埼玉県警察HPより引用
ここを甘く見てはいけません。無許可で古物営業を行った場合の罰則は非常に重いです。
・3年以下の懲役 または 100万円以下の罰金(もしくはその両方)
「知らなかった」では済まされず、逮捕される可能性もある重罪です。
ここで、古物商無許可で仕入れ、販売を繰り返していたあるオタクの悲惨な末路についてお話します。
年間1千万円の売上!古物商無許可 渡辺さんの末路
きっかけはささやかな生きがいだった
会社員の渡辺さんは、世間一般でよく言われるオタクという部類の人物です。子供のころから、ゲームやトレーディングカードが大好きで、この知識は他に類をみない程でした。特に、普通なら見逃してしまうような希少性の高い商品を格安で見つけることを得意としていました。これらをコレクションにして、部屋に1つ1つ飾るのが至福のひと時でした。ある時同じ商品が幾つもあることに気づき、その商品をオークションに出品しました。たまたま希少な商品ということもあり、信じられないような高値で売れました。このことで何とも言えない高揚感を感じ、気づけば自分のコレクションの一部をフリマアプリで販売し収益を得ることを繰り返していました。
軽い気持ちでのスタート
フリマアプリの渡辺さんへの評価を日に日に高まり、一部コレクターからはよく知られる存在となっていました。このような中で渡辺さんは、古い商品を仕入れして販売するスキームを確立し、副業に出来ないかを考え始めました。そして最初はお小遣い稼ぎのつもりで、中古販売店で状態の良い中古品を買い集め 、フリマアプリで販売することを始めました。「アプリなら顔も見えないし、バレないだろう」「個人でやっている人はみんな許可なんて取っていないはずだ」 そんな軽い気持ちで、古物商許可を取らずに仕入れと販売を繰り返していました。
エスカレートする取引と売上
もともと渡辺さんの目利きは確かなので、レアなゲームソフトや高騰するカードを安く仕入れては高値で売ることで、利益は右肩上がりになりました。開始1年後には年間の売上高は1,000万円を突破。 「これは立派なビジネスだ」と自負していましたが、それでも「手続きが面倒だから」「警察に行くのが怖いから」と許可申請を先延ばしにしていました。
突然の警察からの連絡
ある日、職場で昼休み中にスマホでトレーディングカードの販売価格を見ていたら、見知らぬ電話番号から着信がありました。恐る恐る出てみると何と警察からの電話でした。 フリマアプリでの販売行為についての出頭要請でした。きっかけは、渡辺さんから商品を買った人物の事情聴取で盗難被害に遭った商品が含まれていたことが判明したこと。また同業者からの通報及び警察のサイバーパトロールによる摘発でした。(フリマアプリの取引履歴は警察の捜査対象になります)
渡辺さんを待っていた悲惨な末路
警察署での取り調べを受けた渡辺さん。 「継続的に利益を得る目的で反復して取引を行っている」として、言い逃れようのない「無許可営業」と認定されました。
その結果、渡辺さんは以下のような代償を払うことになりました。
① 逮捕・送検: 略式起訴され、多額の罰金刑が科されました。
② 社会的信用の失墜: 警察沙汰になったことが勤務先にられ、懲戒解雇となってしまいました。
③ 許可の欠格事由: 処罰を受けたことで、今後心を入れ替えて古物商許可を取りたいと思っても、5年間は許可を取得できなくなりました。
更なる渡辺さんの悲劇
しかし、渡辺さんの悲劇はこれだけでは終わりませんでした。
・ 隠し続けていた「税金」の問題
年間1,000万円もの売上がありながら、渡辺さんは「どうせバレない」と高を括り、長年にわたって確定申告を一切行っていませんでした。
警察の捜査が入ると、銀行口座の入出金記録(お金の流れ)がすべて明らかになります。 当然、その情報は税務署にも共有されます。
・ 刑事罰の「ダブルパンチ」
渡辺さんを待っていたのは、古物営業法違反の罰則だけではありませんでした。
所得税法違反 : 本来納めるべき税金を納めていなかったため、過去に遡っての納税はもちろん、無申告加算税や、悪質な隠蔽とみなされ重加算税(最大40〜50%増)という重いペナルティが課されました。 さらに、悪質な脱税犯として刑事告発されれば、「10年以下の懲役 または 1,000万円以下の罰金」という、古物営業法よりもさらに重い刑罰の対象となります。
渡辺さんは、稼いだ利益をすべて吐き出すどころか、借金を背負い、前科までつくことになってしまったのです。
そもそも「転売」は違法なのか?
ソニーのPlayStation 5など手に入りづらいゲーム機を大量に仕入れ高額で転売する転売ヤーなる輩が現れ社会問題となりました。昨年販売された任天堂のSwitch 2 では徹底した転売対策が行われました。このことからも転売に対する世間の風当たりは厳しいものにあります。そもそも、転売自体を違法ととらえている方は少なくありません。それでは、実際のところはどうなのでしょうか?
1.新品の転売(基本的には合法)
家電量販店や小売店から「新品」として商品を仕入れ、それを販売する場合、原則として古物商許可は不要です。これは通常の「小売業」の範疇とみなされることが多いためです。 (※ただし、メーカーの規約違反や、新品として購入しても一度消費者の手に渡った物は古物とみなされる場合があるなど、グレーゾーンは存在します)
2. 中古品の転売(許可が必要)
問題になるのはここです。 「フリマアプリで個人から仕入れる」「リサイクルショップで仕入れる」 これらはすべて「古物(中古品)」の取引となります。これをビジネス(転売目的)として行うには、必ず「古物商許可」が必要です。
渡辺さんの失敗は、フリマアプリ等で「中古品(または新古品)」を反復継続して仕入れていたにもかかわらず、許可を取らなかった点にあります。
注意!「古物商無許可」だけじゃない!もっと罪が重くなる3つのケース
1. イベントチケットの転売【チケット不正転売禁止法】
「行けなくなったライブのチケットを定価で譲る」なら問題ありませんが、転売目的でチケットを確保し、定価を超えて販売することは法律で禁止されています。
罰則:1年以下の懲役 または 100万円以下の罰金(もしくはその両方) 古物商許可の有無に関わらず、この法律違反となります。
2. 国産ウイスキー等の海外転売【酒税法】
近年、ジャパニーズウイスキーが海外で高騰していますが、これにも注意が必要です。 お酒を継続的に販売する場合、税務署の「酒類販売業免許」が必要です。古物商許可だけではお酒の販売はできません。 無免許でお酒を転売した場合、酒税法違反となります。
罰則:1年以下の懲役 または 50万円以下の罰金
3. 人をだまして転売【詐欺罪】
これが最も罪が重いケースです。 例えば、「偽ブランド品を本物と偽って売る」「壊れていることを隠して完動品として売る」といった行為です。 これは単なる商取引のルール違反ではなく、刑法の「詐欺罪」に問われます。
罰則:10年以下の懲役 詐欺罪には「罰金刑」がなく、有罪になれば即「懲役刑」となる非常に重い犯罪です。
やっくんからのアドバイス
「知らなかった」「みんなやっている」 警察や税務署の前で、その言い訳は通用しません。
転売やせどり自体は、経済活動の一つです。しかし、そこには「古物営業法」「税法」「特別法(チケット・酒など)」といった数々のルールが存在します。
これらをクリアして初めて、胸を張って「事業」と言えるのです。
当事務所では、古物商許可の申請代行はもちろん、これから事業を始めるにあたってのリスク管理についてもアドバイスを行っております。 「自分のやろうとしていることは大丈夫か?」と不安な方は、まずは一度ご相談ください。
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