親が認知症になるとどんな理由であれ親名義の口座から勝手にお金を引き出すことは出来ません。このためには事前の対策が必要になります。
この記事は、親や配偶者など身近な人の将来の認知機能低下に備えて『銀行で今できること』を具体的に知りたい家族や当事者に向けたガイドです。
口座凍結や不正引き出しを避けるための事前準備と、手続きや制度の違い、実務でよくある誤解と対応を札幌の行政書士やっくんがわかりやすくまとめました。
転ばぬ先の杖、自分には関係ないなんて言わないで、ぜひこの記事をお読みください。
なぜ今、認知症になる前に銀行での準備が必要なのか
「親が認知症になったら、親の預金口座からお金が下ろせなくなる」 この事実をご存知でしょうか。
親の介護費用や医療費、生活費は、原則として親自身の財産から支払います。しかし、認知症により判断能力が低下したと金融機関が判断すると、資産保全のために口座が凍結され、たとえ家族であっても自由に引き出せなくなってしまうのです。
大前提として、法律上の契約行為(預金の引き出しや解約も含む)には「意思能力」が必要です。重度の認知症などでこの能力がないと判断されると、本人は手続きができなくなります。
ここでの最大の誤解は、「家族なら代わりに手続きできるだろう」という思い込みです。
銀行はあくまで「預金者本人」との契約に基づき財産を管理しています。不正な引き出しを防ぐため、原則として本人以外の手続きには応じられません。その結果、親の口座にお金があるのに、目の前の介護費用が払えないという事態に陥るのです。
このリスクを回避するための対策は、「親本人の判断能力がはっきりしているうち」にしか実行できません。だからこそ、今、準備が必要なのです。
銀行でできる9つの具体的対策
ここからは、銀行窓口で相談できる手続きから、将来の銀行取引をスムーズにするための法的な準備まで、9つの対策を紹介します。
キャッシュカードと暗証番号は最も利用頻度が高く、紛失や不正利用のリスクが高い資産です。基本ですが、親が元気なうちは、カードと暗証番号は本人が管理するのが原則です。しかし、物忘れが増えてきた段階で、誰がどのように管理をサポートするか、家族間でルールを話し合っておきましょう。また、紛失時の連絡先や停止手順を家族で共有しておきましょう。
- 注意点: 安易に暗証番号を聞き出したり、メモを共有したりすることは、盗難リスクや将来の相続トラブル(使い込みの疑いなど)の原因にもなるため慎重さが必要です。
認知症の初期段階では、何度も同じ金額を引き出してしまう、高額な商品を購入してしまうといった消費者被害のリスクが高まります。
- 対策: 1日のATM引き出し限度額を低く設定する、使っていないクレジットカードを解約するなどの対策を検討しましょう。また、本人の同意のもと、信頼できる家族が代理人カード(家族カード)を作成しておくことも有効です。
近年、多くの銀行が認知症対策として「代理人指名制度(予約型代理人サービス)」などを導入し始めています。 これは、本人が元気なうちに、将来認知症などで判断能力が低下した際に備えて、あらかじめ代理人(家族)を登録しておく制度です。この登録があれば、いざという時に代理人が預金を引き出しやすくなります。まずは取引銀行に制度の有無を確認しましょう。
やっくん都市銀行、地方銀行、信用金庫などほとんどの銀行でこのサービスをうけれるよ!
ここからは、銀行対策をより確実にするための法的な準備です。 銀行はリスクを回避するため、確実な権限証明を求めます。その最強の証明が「後見制度」です。
- 任意後見契約: 親が元気なうちに、「将来判断能力が落ちたら、財産管理をこの子に任せる」と契約し、公正証書にしておくものです。これを提示すれば、受任者(子供)はスムーズに銀行手続きを行えます。
- (法定)成年後見制度: すでに認知症が進行している場合は、家庭裁判所に申し立てて後見人を選任してもらうこの制度を利用することになります。
「家族信託」は、親が元気なうちに、信頼できる家族に財産管理を託す契約です。 信託した財産は、親の判断能力の有無にかかわらず、託された家族(受託者)の権限で管理・運用・処分ができます。銀行によっては、信託専用口座(信託口口座)を作成し、受託者がスムーズに管理できる仕組みを提供しています。非常に柔軟な財産管理が可能なため、近年注目されている対策です。



遺言より柔軟で成年後見制度より自由度が高く、最近注目されています。
まだ判断能力はあるものの、体が不自由で銀行窓口に行けない場合などに、家族に手続きを依頼するための書類です。 銀行は「本当に本人の意思か?」を慎重に確認します。私的なメモのような委任状では受け付けてもらえないこともあります。重要な取引の権限を委任する場合は、信用力の高い「公正証書」で作成しておくことを強く推奨します。
これは親が亡くなった後(相続)の口座凍結対策です。 銀行口座は名義人が亡くなると、遺産分割協議が整うまで凍結されます。遺言書で「この口座の預金は長男に相続させる」と明確に指定しておけば、遺産分割協議を経ずにスムーズに解約・名義変更手続きが進められます。遺言書の作成も、判断能力があるうちにしかできません。
具体的な手続きの前に、まずは現状把握が必要です。 どこの銀行にいくらあるのか、負債はあるのか。「財産目録」を作成しましょう。また、「介護施設に入る場合はこの定期預金から解約する」といった、将来のお金の使い方に関する親の意向を確認し、判断基準を共有しておくことが、将来の家族間の争いを防ぎます。
ここまで8つの対策を挙げましたが、ご家庭の状況、資産規模、家族構成によって最適な組み合わせは異なります。 例えば、「任意後見」と「家族信託」はどちらが良いのか、併用すべきなのか。これらは専門的な知識が必要です。自己判断で進めると、書類の不備で銀行に受け付けてもらえなかったり、思わぬ税務リスクが発生したりすることもあります。 早い段階で、相続や成年後見、家族信託に詳しい行政書士などの専門家に相談し、オーダーメイドの対策プランを立てることをお勧めします。
SNS情報の落とし穴~銀行にばれない方法などの誤情報について
インターネットやSNSを見ていると、親の介護費用に悩む方向けに、こんな情報が流れてくることがあります。 「銀行に認知症だとバレなければ大丈夫」 「親のキャッシュカードで少しずつ引き出せば凍結されない」 「ネットバンキングで自分の口座に移してしまえばいい」
一見、手軽な解決策に見えるかもしれません。しかし、行政書士として断言します。 これらの「裏ワザ」や「抜け道」とされる行為は、あなた自身を犯罪加害者に変えたり、親族トラブルの火種になったりする「時限爆弾」です。
ネット上の無責任な情報がいかに危険か、そしてなぜ正規の手続きが必要なのかを、具体的なリスクと共にお伝えします。
ネットの情報: 「窓口に行くとバレるから、暗証番号を使ってATMで毎月生活費を引き出せば問題ない」
▼ここに潜む重大リスク
- 窃盗・横領の疑い: 法的には、親のお金は親のものです。たとえ子供でも、本人の明確な意思確認(同意)なく引き出せば、他の相続人から「使い込み」「横領」と訴えられるリスクがあります。「介護のために使った」と言っても、領収書などの証拠が完璧でなければ疑いは晴れません。
- カード紛失・磁気不良で詰む: もしカードが磁気不良で使えなくなったり、暗証番号を間違えてロックされたりしたら、その時点でアウトです。窓口での手続きには本人の意思確認が必須となるため、結局口座は凍結され、そこまでの「無断引き出し」の履歴だけが銀行に残ります。
ネットの情報: 「親のスマホを使ってネットバンキングを開設し、子供の口座に大金を送金してしまえば凍結されない」
▼ここに潜む重大リスク
- 銀行のモニタリングに引っかかる: 金融機関はマネー・ロンダリングや振り込め詐欺防止の観点から、高齢者口座からの急な高額送金や、普段と違う取引を24時間体制で監視しています。不審な動きがあれば一時的に取引停止となり、電話確認などで認知症の疑いが発覚すれば即凍結です。
- 贈与税の課税リスク: 親の口座から子供の口座に多額の資金が移動した場合、税務署はそれを「贈与」とみなす可能性があります。介護費用として預かっているつもりでも、実態の証明ができなければ、高額な贈与税が課される恐れがあります。
「バレなければいい」が招く4つの破綻
SNSの情報を鵜呑みにして「こっそり管理」を続けた場合、以下の4つの局面で破綻します。
1.対銀行: 疑わしい取引としてマークされ、最も困るタイミングで突然凍結される。
2.対親族: 将来の相続時、「通帳の使途不明金」として兄弟姉妹から追及され、裁判沙汰になる。
3.対税務署: 相続税調査などで過去の入出金を洗われ、認定課税(ペナルティ)を受ける。
4.対法律: 権限のないまま契約行為などを行い、私文書偽造などの犯罪に問われる可能性がある。
SNS上の「裏ワザ」は、成功したとしても一時しのぎに過ぎず、いつ発覚するか分からない恐怖と隣り合わせの生活になります。
私たち行政書士が提案するのは、「誰に見られても恥ずかしくない、クリーンな財産管理」です。 それが結果として、親御さんの財産を守り、あなた自身の社会的信用を守り、ご家族の絆を守ることにつながります。
「うちはどの方法が使えるの?」と迷われたら、ネット検索を止めて、まずは専門家にご相談ください。リスクのない安全な道筋を一緒に考えましょう。
やっくんからのアドバイス
認知症による口座凍結は、ある日突然やってくる現実的なリスクです。 対策の鍵は「親が元気なうちに動き出すこと」、これに尽きます。
まずは対策1~3のような銀行窓口で確認できることから始め、並行して対策4以降の法的な準備について、ご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。当事務所では、ご家族の状況に合わせた最適な認知症対策・財産管理プランをご提案いたします。お気軽にご相談ください。
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