札幌の街並みも四季折々の美しさを見せますが、年齢を重ねるごとに「これからの暮らし」についてふと考える時間が増えるものではないでしょうか。特に70歳という年齢は、体力的にも精神的にもまだ元気に活動できる一方で、将来の健康や生活の管理について具体的な備えを始める絶好のタイミングです。
近年、テレビや新聞などで「終活」や「認知症対策」という言葉を頻繁に目にするようになりました。その中で、将来の安心を支える重要な法的手段として注目されているのが「任意後見制度」です。
「まだ元気だから関係ない」「認知症になったらその時に家族に頼めばいい」と考えてしまいがちですが、実は「元気な今だからこそ」選べる選択肢があります。本記事では、札幌でこれからのシニアライフを地道に、かつ安心して送りたいとお考えの皆さまに向けて、任意後見制度の仕組みやメリット、最新の利用実態までを分かりやすく解説します。
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なぜ「70歳」が任意後見を考えるベストタイミングなのか
まずは、なぜ70歳を過ぎたタイミングで任意後見制度を意識すべきなのか、その理由を3つの視点から紐解いていきます。
厚生労働省等のデータによると、日本の認知症高齢者数は増加の一途をたどっています。75歳を過ぎる頃からその発症率は段階的に上昇していく傾向にあります。70代前半の「心身ともに健康で、自分の意思をはっきりと周囲に伝えられる時期」こそ、将来の財産管理や医療・介護の希望を冷静にデザインできる貴重な期間なのです。
「自分が認知症になっても、同居している家族が代わりに預金を引き出してくれれば問題ない」と思われている方は非常に多くいらっしゃいます。しかし現現実異なります。
銀行などの金融機関は、口座名義人の判断能力が低下したことを知った場合、財産保護のために口座を凍結します。たとえ配偶者や子どもであっても、本人の同意なしにまとまったお金を引き出すことは原則としてできなくなります。施設への入所費用や医療費が必要なのに、本人の口座からお金が出せないという事態を防ぐための備えが必要です。
現在、国全体で成年後見制度の大幅な見直し(法改正)に向けた議論が進んでいます。より使いやすく、本人の「自己決定権」を尊重するオーダーメイド型の支援へとシフトする動きが本格化しています。この時代の転換期において、「誰に、どのようなサポートを頼みたいか」を自分自身で決めておく「任意後見」の重要性はますます高まっています。
任意後見制度の仕組みとは?「法定後見」との決定的な違い
成年後見制度には、大きく分けて「法定後見」と「任意後見」の2種類があります。この2つの違いを正しく理解することが、確実な終活への第一歩となります。
もっとも大きな違いは、本人の判断能力があるうちに、自分でサポート役(後見人)と支援内容を決められるかどうかです。
| 項 目 | 任意後見制度 (元気なうちに備える) | 法定後見制度 (判断能力低下後に利用) |
| 手続きを行う時期 | 本人に十分な判断能力があるうち | 本人の判断能力が低下・喪失した後 |
| 後見人を選ぶ人 | 本人自身が信頼できる人を選ぶ | 家庭裁判所が最適な人を選任する |
| 支援(権限)の内容 | 契約(公正証書)で自由に定めた内容 | 法律や類型(後見・保佐・補助)で定められた範囲 |
| 費用の見通し | 事前の契約で報酬等を決めておける | 裁判所が本人の財産額等から総合的に決定する |
判断能力が不十分になった後に利用する法定後見では、家族が「自分が後見人になりたい」と申し出ても、家庭裁判所の判断により、見ず知らずの弁護士などの専門職が選ばれるケースが多々あります。また、一度始まった法定後見は、原則として本人が亡くなるまで一生涯続き、専門職への報酬(月額数万円)も発生し続けます。
一方の任意後見制度であれば、「信頼できる長男に財産管理を任せたい」「地元の専門家に介護手続きをサポートしてほしい」といった希望を、元気なうちに契約という形で確実に残すことができます。
身寄りがない「おひとりさま」こそ、特にこの制度を活用すべき理由
配偶者がいない、子供がいない、親族とも疎遠であるといった「おひとりさま」にとって、任意後見制度は一般的なご家庭以上に「今すぐ用意すべき必須のセーフティネット」と言えます。
身寄りのない方が、もし何の備えもなしに認知症などで判断能力を失ってしまった場合、以下のような極めて深刻な問題に直面します。
1.病院の入所手続きや施設の契約がストップする
体調を崩して入院が必要になったり、介護施設への入所を検討したりする際、必ず求められるのが「契約手続き」と「身元保証」です。判断能力が不十分な状態では、本人が法律行為(契約)を結ぶことができません。身寄りがなければ、代わりに手続きを進めてくれる人もおらず、医療や介護が必要なのに受けられないという事態に陥る恐れがあります。
2.日常の支払い(家財の管理や家賃)が滞る
口座が凍結されてしまえば、公共料金や家賃、医療費の支払いがすべて止まってしまいます。督促状が届いても本人が認識できず、最悪の場合は住まいを強制退去させられるリスクすらあります。
3.任意後見なら「信頼できる第三者(専門家)」を国が公認してくれる
「頼める親族がいないから諦めるしかない」と思う必要はありません。任意後見制度では、行政書士などの専門家を「将来の後見人(任意後見受任者)」として指名し、あらかじめ契約を結ぶことができます。
おひとりさまの最大の安心ポイント:
専門家と任意後見契約を結んでおけば、将来あなたの判断能力が落ちたときに、国(家庭裁判所)がその専門家をあなたの正式な代理人として認めます。これにより、親族がいなくても、プロの手によってお財布の管理から施設選びまで、あなたの意思に沿ったサポートが確実に実行されます。
任意後見制度の具体的な3つの利用形態
任意後見制度は、個人の生活状況や家族構成に合わせて、以下の3つの形態(プラン)から選んで利用することができます。
現在は完全に自立して暮らしている方が、「将来、認知症などで判断能力が衰えた時」に備えてあらかじめ契約を結んでおく方法です。元気なうちは何も発動せず、いざという時だけサポートが始まります。
任意後見契約と同時に、現在の元気なうちから財産管理や事務手続きを委任する「財産管理契約」をセットで結ぶ方法です。
体力が落ちて銀行へ行くのが大変になったら日常の管理を任せ(財産管理)、将来的に認知症を発症したらスムーズに「任意後見」へ切り替えます。段階を踏んで切れ目のない支援を受けられるため、現在もっとも推奨されている形です。特におひとりさまの場合は、この移行型を選ぶことで、元気な時期の身体的な衰えから認知症発症後までをトータルでカバーできます。
軽度の物忘れが始まっているなど、判断能力が低下しつつある段階で、すぐに任意後見を開始することを前提として契約を結ぶ方法です。ただし、契約時点で公証人が「本人に契約の意思能力がある」と認めなければ利用できません。
最新データから見る任意後見制度の「利用実態」
ここで、最高裁判所事務総局家庭局が発表している「成年後見関係事件の概況」などの最新データを交えながら、実際の利用実態を見ていきましょう。
成年後見制度全体の利用者数は全国で約25万〜26万人規模で推移しています。しかし、その中で「任意後見」が占める割合は、実は全体の数パーセント程度にとどまっており、大半が判断能力を失った後に申し立てる「法定後見」となっています。
データ 最高裁判所事務総局家庭局 成年後見関係事件の概況 令和6年1月~12月
これには明確な理由が2つあります。
① 制度の認知不足
元気なうちに契約しておく必要があるという仕組み自体が、一般に広く浸透していないこと。
② 任意後見監督人」のハードル
任意後見を実際にスタートさせるためには、家庭裁判所に「任意後見監督人(後見人が適切に仕事をしているかをチェックする人)」を選んでもらう必要があります。この監督人(主に弁護士などの専門職)への報酬が毎月発生するため、その費用負担を懸念して躊躇する方が多いのが実情です。
データを見ると件数自体は少なく見えますが、利用した方々の満足度は非常に高いのが特徴です。なぜなら、法定後見のように「裁判所に誰が選ばれるか分からない」という不安がなく、自分の信頼する人に財産を託せるため、親族間のトラブル(争族)防止に極めて有効だからです。特にお子様がいないおひとりさまや、特定の親族に負担をかけたくないという方の利用が、近年札幌市内でも着実に増えています。
任意後見契約を結ぶための 具体的な5つのステップ
任意後見制度を利用するためには、法律で定められた厳格な手続きを進める必要があります。具体的な流れは以下の通りです。
まずは「誰に後見人になってもらうか(任意後見受任者)」を決めます。家族や親族だけでなく、信頼できる行政書士などの専門職を指名することも可能です。どのような生活を送りたいか、希望をしっかり共有します。
任せたい仕事の範囲(財産管理や、施設の入所契約といった身上保護の権限)や、万が一の際の報酬額などを具体的に決定し、契約書の原案を作成します。
任意後見契約は、法律により「公正証書」で作成することが義務付けられています。札幌市内にある公証役場へ赴き(出張も可能)、公証人の前で契約書に署名・捺印を行います。
公正証書が作成されると、公証人の嘱託(手続き)によって、東京法務局に任意後見契約の内容が自動的に登記されます。これにより、将来「自分が誰とどのような契約を結んだか」が公的に証明されます。
将来、本人の判断能力が低下した段階で、本人や家族、後見人候補者が家庭裁判所へ「任意後見監督人」の選任申し立てを行います。監督人が選ばれて初めて、任意後見人の権限が正式にスタートします。
行政書士が教える、失敗しないためのチェックポイント
任意後見は非常に優れた安心の制度ですが、万全なものにするためにはいくつかの注意点があります。
任意後見契約がカバーするのは、あくまで「本人が生きている間で、かつ判断能力が低下している期間」です。
そのため、以下の2つの契約を組み合わせることで、老後の安心をより強固なものにできます。
① 見守り契約
任意後見が始まる前の「元気な期間」、定期的な連絡や面談を通じて健康状態や生活状況を把握してもらう契約。
② 死後事務委任契約
本人が亡くなった後の、葬儀・火葬の手配、未払い医療費の精算、お部屋の片付け(遺品整理)などを託す契約。
これらをパッケージで備えることで、まさに「これからの人生の終わりまで」を一本の線で守ることができます。
後見人にスムーズに財産を管理してもらうためには、自分の資産(預貯金口座、不動産、有価証券、保険など)を分かりやすくまとめた「財産目録」を作っておくことが欠かせません。また、どのような医療ケアを受けたいか(延命治療の有無など)、どの施設に入りたいかといった主観的な希望も、エンディングノート等に書き残しておくことが大切です。
よくあるQ&A
任意後見制度に関する代表的なご質問にお答えします。
まとめ ~ 札幌で心豊かなシニアライフを送るために
「任意後見制度」は、いわば将来の自分への贈り物であり、残される大切な家族、あるいはご自身を支えてくれる社会への優しさでもあります。
70歳を過ぎ、これからの生活に少しでも不安を感じたら、まずは現状の整理から始めてみませんか?任意後見契約は、お一人おひとりの家族構成や資産状況、将来のビジョンによって、最適な設計図が全く異なります。
当事務所では、札幌および近郊にお住まいの皆さまが、これからの人生を笑顔で、安心して過ごせるよう、任意後見契約の設計から公正証書の作成サポートまで、親身になってお手伝いをしております。「何から手をつければいいか分からない」という初期の段階でも、どうぞお気軽にご相談ください。あなたの理想とする未来の暮らしを、法律のプロフェッショナルとして地道に、しっかりと支えてまいります。
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札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
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