【札幌発 父と同居の姉夫婦があやしい!】親族が銀行の取引履歴開示請求することは可能か? 札幌の行政書士やっくんが解説

今回は、「銀行の取引履歴開示請求が親族という立場で出来るのか?」という疑問について、一つのご家族の話をもとに、解説したいと思います。

「同居している兄弟が、高齢の親の財産を勝手に使い込んでいるかもしれない……」

こうした疑念は、家族間だからこそ非常に切り出しにくく、かつ一度不信感が芽生えると大きなストレスになるものです。同じような不安を抱えている方は、決して少なくありません。

本記事では、主人公である「小山みゆきさん」の視点を通じて、高齢の親の財産を守るために「親族が単独で銀行の取引履歴(取引明細)を開示請求する方法」や、その際の注意点、さらには「成年後見制度」との向き合い方について、実務の視点から分かりやすく解説します。

目次

主人公(みゆきさん)の悩み  大きな邸宅と、変わり果てた父の姿

札幌市内に住む主婦、小山みゆきさん(48歳)には、最近どうしても心が晴れない大きな悩みがあります。それは、同じく札幌市内の実家に暮らす、80歳になる実父・佐藤幸男さんのことです。

幸男さんは、70歳まで地元の有力企業の役員を務め上げた、非常に実直で聡明な人でした。札幌市内の閑静な住宅街にある実家は、建坪が70坪もある立派な一戸建てです。幸男さん自身、生前に「母さんが苦労しないように、家だけでなく、現金や有価証券などで1億円近くの資産は残してある」と、みゆきさんにも話していました。

しかし、2年前に最愛の妻(みゆきさんの母)を亡くしてから、幸男さんの様子は一変してしまいました。長年連れ添った伴侶を失ったショックはあまりにも大きく、日に日に気力が衰え、自宅に閉じこもりがちになってしまったのです。

1.姉夫婦の突然の同居と、募る不信感

母が亡くなるとほぼ同時に、みゆきさんの姉である高島きよこさん(51歳)と、その夫のたかしさん(53歳)の夫婦が、実家へ移り住んできました。

建前は「一人になったお父さんの介護をするため」ということでした。みゆきさんも、当初は「近くにいてくれるなら安心」と姉夫婦を頼もしく思っていました。しかし、時間の経過とともに、実家を訪れるたびに不自然な変化が目につくようになったのです。

① 変わり果てた父の食事と生活環境

みゆきさんが実家に顔を出すと、かつてあんなに堂々としていた父が、どこか小さくなり、元気がありません。食卓に並んでいるのは、安価なカップ麺や菓子パンばかり。「本当にろくな食事を与えられているのだろうか」と、みゆきさんの胸は痛みました。

② 突然の贅沢品と高級車の購入

その一方で、姉夫婦の生活派手さは明らかに増していました。これまでは古い軽自動車に乗っていたはずなのに、実家のガレージにはいつの間にか、ピカピカに輝くトヨタの「アルファード」が停まっています。さらに、専業主婦であるはずの姉のきよこさんが、これまでは持っていなかったような海外の有名ブランドのバッグを嬉しそうに肩に下げているのを目撃しました。

③ 軽いアルツハイマー型認知症の診断

先日、姉が同伴して病院へ連れて行ったところ、父は「軽いアルツハイマー型認知症」と診断されました。父の認知機能が衰えているのをいいことに、姉夫婦が父の莫大な財産を少しずつ食いつぶしているのではないか…。みゆきさんの中で、その疑惑は確信へと変わりつつありました。

2.姉から告げられた「成年後見人」という言葉

きわめつけは、数日前に姉のきよこさんから言われた一言でした。

「お父さんも認知症って診断されたし、これからの銀行の手続きとか大変だから、私が成年後見人になろうと思っているのよね」

みゆきさんは凍りつきました。もし、今でも父の財産を自由に使い込んでいるのだとしたら、姉が法的な窓口である成年後見人になってしまえば、実質的に父の財産はすべて姉夫婦の管理下に置かれ、みゆきさんが中身をチェックすることは完全にできなくなってしまうのではないか。

「何とかして、父の今の正確な預貯金の残高や、これまでの出入金の履歴を調べる方法はないのだろうか」

一人で悩みを抱え込み、精神的にも追い詰められていたみゆきさんは、意を決して、夫の高校時代の同級生であり、地元・札幌で開業している行政書士の元へ相談に訪れることにしました。

行政書士への相談  親族が単独で銀行の取引履歴を開示請求できるのか?

みゆきさんは、夫に紹介された行政書士の事務所の門を叩きました。緊張した面持ちで、これまでの経緯、父の資産状況、そして姉夫婦に対する不信感を包み隠さず話しました。

話を聞き終えた行政書士は、みゆきさんの気持ちに寄り添いながら、静かに、しかし明確に答え始めました。

結論 現在の状況では、娘であっても「単独での開示請求」は非常に難しい

行政書士の解説

「みゆきさん、お父様のご様子や姉夫婦の行動、本当にご心配ですね。お気持ちは痛いほどよく分かります。

ですが、結論からお伝えしますと、『お父様がご存命の段階』において、いくら実の娘(将来の相続人)であっても、他の親族に内緒で単独で銀行に赴き、お父様の口座の取引履歴を開示請求することは、原則としてできません。

みゆきさんはショックを受けました。「実の親子であっても、見ることすらできないのですか?」

行政書士は、その理由を法的な観点から丁寧に説明しました。

理由1 銀行の「守秘義務」と「個人情報保護」

銀行などの金融機関は、預金者の個人情報や取引内容について、非常に厳格な守秘義務を負っています。口座の所有者であるお父様(佐藤幸男さん)がご存命である以上、その財産は100%お父様個人のものです。たとえ実の子供であっても、名義人以外の第三者に口座情報を開示することは、銀行側としては「顧客の個人情報漏洩」になってしまうため、絶対にそれに応じることはありません。

理由2 お父様が「存命」であるということ

もしお父様が亡くなった後(相続開始後)であれば、法律上の最高裁判所の判例により、共同相続人の一人は、単独で被相続人(亡くなった方)の口座の取引履歴を請求する権利があると認められています。しかし、お父様がご存命のうちは、このルールは適用されません。

「では、私はただ指をくわえて、姉夫婦が父の財産を使っていくのを見ているしかないのでしょうか?」と、みゆきさんは声を震わせました。

「いいえ、決してそんなことはありません。いくつかアプローチする方法はあります」と行政書士は言葉を続けました。

存命の親の口座履歴を確認するための 3つのアプローチ

行政書士は、みゆきさんが今取ることができる具体的な選択肢を3つ提示しました。

アプローチ1 お父様「本人」から委任状をもらう、または同行する

お父様は「軽いアルツハイマー型認知症」と診断されたばかりであり、まだ自分の意思をしっかりと表明できる場面もあるはずです。完全に判断能力が失われているわけではありません。

もし、お父様が「自分の通帳の中身がどうなっているか、みゆきにも一緒に確認してほしい」という意思を持っているのであれば、以下の方法が最もスムーズです。

① お父様と一緒に銀行の窓口に行く

お父様本人が窓口に足を運び、通帳や印鑑、本人確認書類(マイナンバーカードや運転免許証など)を提示して「これまでの取引明細(取引履歴)を出してください」と請求すれば、銀行は当然それに応じます。みゆきさんはその付き添いとして同行すれば、その場で内容を確認することができます。

② お父様自筆の「委任状」を作成してもらう

お父様が足腰の衰えなどで銀行に行くのが難しい場合、お父様自身に「娘の小山みゆきに、私の〇〇銀行の取引履歴開示請求の手続き一切を委任します」という内容の委任状を書いてもらい、お父様の登録実印(または届出印)を押印します。みゆきさんはその委任状とお父様の本人確認書類、ご自身の本人確認書類を持って銀行に行けば、代理人として請求することが可能です。

⚠️注意点とハードル

この方法の最大のネックは、「姉夫婦に気づかれずに実行するのが難しい」という点です。お父様が実家で姉夫婦と同居している以上、みゆきさんがお父様を連れ出そうとしたり、委任状を書かせようとしたりする動きは、すぐに姉夫婦に察知されてしまう可能性が高いでしょう。また、お父様の認知症の症状の波によっては、銀行の窓口で「自分の意思で請求しているのではない」と判断され、手続きがストップしてしまうリスクもあります。

アプローチ2 姉夫婦に対して「不当利得返還請求」などの法的措置を視野に、弁護士を通じて「弁護士法第23条の2に基づく照会(弁護士照会)」を利用する

もし、どうしても姉夫婦の使い込みの証拠を掴みたい、将来的に裁判も辞さないという強い覚悟がある場合、行政書士ではなく「弁護士」に依頼するステップへと進みます。

弁護士は、受任した事件の証拠集めや事実確認のために、所属する弁護士会を通じて、銀行などの金融機関に対して「佐藤幸男さんの口座から、いつ、いくらの出金があったか」という開示を求めることができます。これを「弁護士照会(23条照会)」と呼びます。

⚠️注意点とハードル

弁護士照会は、単に「怪しいから調べてほしい」という段階では、弁護士会が審査を通さないケースがほとんどです。具体的に「訴訟(裁判)を提起する予定がある」「遺産分割を巡る具体的な紛争が存在する」といった、法的な必要性が厳格に求められます。また、銀行側が「プライバシー保護」を理由に、照会を拒絶することもあり、100%確実に履歴が開示されるとは限りません。そして何より、費用が大きくかかり、姉夫婦との全面戦争(親族間トラブルの激化)が避けられなくなります。

アプローチ3 裁判所に「成年後見人」の選任申し立てを行い、中立な専門家後見人を立ててもらう

みゆきさんにとって、現在最も現実的であり、かつ姉夫婦の暴走を止める強力な防衛策となるのが、この「成年後見制度の活用」です。

姉のきよこさんは「私が成年後見人になる」と言っていましたが、実は「誰が成年後見人に選ばれるか」を決めるのは、姉ではなく「家庭裁判所」です。

みゆきさん自身が家庭裁判所に対して、お父様の成年後見人の選任申し立てを行うことができます。その際、申立書の中に「親族間で財産管理を巡る意見対立(使い込みの疑い)があるため、親族ではなく、弁護士、行政書士などの中立な第三者の専門家を成年後見人に選任してほしい」という希望を強く書き込むのです。

家庭裁判所は、親族間に少しでも紛争の火種があると判断した場合、親族を後見人に選ぶことはまずありません。ほぼ確実に、中立な専門家後見人を任命します。

専門家後見人が選任されれば、以下のような劇的な変化が起こります。

① 財産管理権の完全な移行

お父様の通帳、印鑑、キャッシュカード、不動産の権利証などはすべて、選任された専門家後見人が引き取り、厳格に管理します。姉夫婦は、お父様の口座から1円たりとも自由にお金を下ろすことができなくなります。

② 過去の取引履歴の調査

専門家後見人は、就職するとすぐに、お父様の全財産の調査を行います。もちろん、過去数年間にわたる銀行の取引履歴もすべて金融機関から取り寄せます。そこで、もし姉夫婦による「使途不明な巨額の出金(不当な使い込み)」が発覚した場合、後見人はお父様の代理人として、姉夫婦に対して「お金を返しなさい」という不当利得返還請求の裁判を起こす義務を負います。

みゆきさんは、行政書士のこの説明を聞いて、目の前がパッと明るくなるのを感じました。

「姉が後見人になってしまったら終わりだと思っていましたが、私が先に申し立てをして、専門家の方に入ってもらえば、父の財産を守ることができるのですね!」

今すぐ動くべき!  放置することの恐ろしいリスク

行政書士は、みゆきさんに「もしこのまま何もせずに放置してしまった場合」に起こり得る、最悪のシナリオについても警鐘を鳴らしました。

放置した場合のリスク具体的な内容
① 財産の完全な枯渇お父様の資産が1億円近くあったとしても、高級車の購入やブランド品の購入、
生活費の補填などが続けば、数年で数千万円単位の資産が消えていく可能性が
あります。気づいたときには「実家しか残っていない」という事態になりかね
ません。
② 証拠の隠滅と記憶の風化銀行の取引履歴は、永久に遡れるわけではありません(一般的には過去10年
程度が限度です)。また、時間が経てば経つほど、姉夫婦から「あの時のお金は
お父さんから『もらった(贈与された)』ものだ」「お父さんの医療費や実家の
修繕費に使った」と言い逃れをされる材料が増えてしまい、使い込みの立証が
極めて困難になります。
③ お父様の医療
介護の質の低下
財産が使い込まれてしまうと、今後お父様の認知症が進行し、手厚い介護施設への
入所や、高度な医療が必要になった際に、十分な費用を支払うことができなくなるという、お父様自身にとって最悪の結果を招きます。

姉夫婦が言う「私が後見人になる」という言葉を待っていてはいけません。お父様の認知症の診断書が出た今こそ、みゆきさんが主導権を握って動くべきタイミングですと、行政書士は強く背中を押しました。

行政書士が教える 「成年後見・申立手続き」の実務ステップ

では、みゆきさんが「中立な専門家後見人」を選んでもらうために、具体的にどのように手続きを進めていけばよいのでしょうか。札幌市(北海道)での実務の流れに沿って解説します。

STEP
医師の「診断書(成年後見用)」の取得

まずは、先日お父様が受診した病院の主治医に、「成年後見制度の申し立てを行いたいので、所定のフォーマットの診断書を作成してください」と依頼します。この際、家庭裁判所が指定する特有の診断書(見当識や判断能力の程度が段階的に記載されたもの)が必要となります。

STEP
必要書類・財産資料の収集

申し立てには、非常に多くの書類が必要です。

お父様、みゆきさん、姉のきよこさんらの戸籍謄本、住民票

お父様の本籍地で取得する「登記されていないことの証明書」(すでに後見人がついていないことの証明)

お父様の財産がわかる資料(手元にある通帳のコピー、不動産の登記事項証明書、固定資産税評価証明書、有価証券の残高証明書など)

今回のケースでは、姉夫婦が通帳などを隠している可能性が高いため、手元にある範囲の資料(実家の不動産登記や、お父様がかつて話していた銀行名などのメモ)だけでも、申し立て自体は受け付けられます。

STEP
申立書類の作成と「専門家選任」の希望記入

家庭裁判所に提出する「申立書」「親族関係図」「財産目録」「収支予定表」などの書類を作成します。

ここで最も重要なのが、「後見人候補者」の欄を「空欄」にするか、あるいは「専門家(行政書士など)を希望する」と明記し、その理由書に「親族間で財産管理に関する意見の対立があり、不穏な空気があるため」と詳細に記入することです。

STEP
札幌家庭裁判所への申し立て

佐藤幸男さんの住所地(札幌市)を管轄する「札幌家庭裁判所」(札幌市中央区)に書類一式を提出し、申し立てを行います。

STEP
家裁調査官による調査・面談

家庭裁判所の調査官が、申立人であるみゆきさんや、本人の佐藤幸男さん、そして同居している姉のきよこさんに対しても面談や意向確認を行います。ここで姉のきよこさんが「私が後見人になりたい」と主張したとしても、みゆきさん側から「使い込みの疑念があり、親族間での合意が形成されていない」という事実が伝えられているため、裁判所は親族間の対立を認識し、結果として第三者の専門家を選任する判断を下します。

行政書士からみゆきさんへのアドバイス

すべての説明を終えた行政書士は、みゆきさんに向けて、最後に大切な心構えを伝えました。

行政書士からのメッセージ

これから手続きを進めるにあたって、一つだけ心に留めておいていただきたいことがあります。それは、「姉夫婦に対して、感情的に直接対決を挑んではいけない」ということです。

突然実家に乗り込んで「お父さんのお金をいくら使い込んだの?!」「高級車なんて買って!」と責め立ててしまうと、姉夫婦は警戒し、通帳や証拠書類を完全に隠匿したり、お父様とみゆきさんを一切会わせないように実家から締め出したりする強硬手段に出る危険性があります。

非常に悔しいとは思いますが、今は平静を装いながら、裏で淡々と家庭裁判所への申し立て準備を進めてください。裁判所という国家機関の力を借りて、公的な専門家後見人という盾を実家に送り込むこと。これこそが、お父様を護り、結果として姉夫婦の不適切な行為を白日の下に晒す最も安全で確実なルートなのです。

みゆきさんは深く頷きました。

「よく分かりました。感情に任せて姉と大喧嘩をする一歩手前でした。夫の同級生である先生に相談できて、本当に良かったです。法的な手続きに則って、お父さんの財産とお父様自身の生活を守るために、まずは家庭裁判所への申し立ての準備を始めます。」

深々とお辞儀をして相談室を後にするみゆきさんの表情は、事務所に来たときの暗く怯えたものから、自らの足で歩み出す力強いものへと変わっていました。

まとめ ~ 親の財産を守るために、悩んだらまずは専門家へ

今回のみゆきさんの事例のように、高齢の親と同居する親族による財産の「使い込み」や「不透明な管理」は、表沙汰になりにくいものの、非常に多くの家庭で深刻な問題となっています。

親がご存命であるうちは、他の親族が銀行に対して単独で取引履歴を開示請求することは原則できません。しかし、だからといって諦める必要はありません。

  • 本人の意思確認ができるうちに、同行して開示を受ける
  • 認知症が疑われる場合は、速やかに「成年後見制度」を申し立て、第三者専門家を介入させる

この2つのアプローチによって、不適切な財産の流出を食い止め、過去の履歴を厳格に調査することが可能になります。

「もしかして……」という違和感を覚えたら、それは家族の未来を守るためのサインかもしれません。手遅れになって財産がすべて底をついてしまう前に、まずは信頼できる専門家へお気軽にご相談ください。

当事務所では、札幌市内および近郊の皆様からの、高齢期における財産管理、成年後見申し立てのサポート、相続トラブルのご相談をいつでもお受けしております。あなたの大切なご家族の平穏な暮らしを、法的手続きを通じて全力で守ります。

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