住宅、中古車、リフォーム工事、高額な家電、事業用の機械設備など、私たちの生活の中には「大きな買い物」をする場面があります。
普段の買い物であれば、「少し思っていたものと違った」「使い勝手が悪かった」という程度で済むこともあります。しかし、金額が大きい買い物になると、そう簡単には割り切れません。
たとえば、購入した中古住宅に雨漏りがあった。中古車を買った直後に重大な故障が見つかった。事業用に購入した機械が、説明されていた性能を満たしていなかった。こうした場合、「契約した以上、泣き寝入りするしかないのでしょうか」と不安になる方も多いと思います。
そこで重要になるのが、売買契約 と 契約不適合責任 という考え方です。
少し難しい言葉ですが、簡単にいえば、「引き渡された物が、契約で約束された内容に合っていなかった場合に、売主が一定の責任を負う」という制度です。
以前は「瑕疵担保責任」という言葉が使われていましたが、2020年(令和2年)4月1日に施行された改正民法により、現在は「契約不適合責任」という考え方に整理されています。民法では、売買の目的物が種類・品質・数量について契約内容に適合しない場合、買主が追完請求などをできることが定められています。
今回は、札幌で暮らす皆さまにも身近な「大きな買い物」を例にしながら、売買契約と契約不適合責任について、できるだけわかりやすく整理していきます。かなり長くなりますが、重要な内容なのでぜひ読んでください。
そもそも売買契約とは? 基本と法的性質をおさらい
契約不適合責任の話に入る前に、まずはすべての基本となる「売買契約」の仕組みについて、簡単におさらいしておきましょう。
売買契約とは、売主が「ある財産権を買主に移転すること」を約束し、買主が「それに対して代金を支払うこと」を約束することによって成立する契約です(民法第555条)。
ここで重要なのは、多くの売買契約において「契約書を作らなくても、お互いの意思が合致すれば(口約束でも)法律上は成立する」ということです。お店でレジに商品を持っていく行為も、ネットショッピングで「購入ボタン」を押す行為も、すべて立派な売買契約です。
口頭でも成立する売買契約ですが、なぜ不動産や自動車のような高額な取引では、必ずと言っていいほど分厚い「売買契約書」を作成するのでしょうか。
理由はシンプルで、「言った・言わない」のトラブルを防ぐため、そして「万が一、商品に問題があった時のルールをあらかじめ細かく決めておくため」です。
コンビニで150円のペットボトルのお茶を買うとき、万が一中身が濁っていれば、その場ですぐに交換してもらえますし、金額的にも大きな泥沼の裁判に発展することはまずありません。しかし、これが数千万円の「家」や、数百万円の「車」だったらどうでしょうか。 「ここは直してくれるって言いましたよね?」「いや、その分安くしたんだから現状渡しのはずだ」といった、お互いの記憶のすれ違いは、人生を揺るがすような大トラブルに発展してしまいます。
そのため、大きなお買い物であればあるほど、契約内容を「文字」として残すことが、自分自身を守る最大の防衛策になるのです。
瑕疵担保責任から契約不適合責任へ! 何が変わったのか
さて、ここからが本題です。 ある程度年齢を重ねられている方や、過去に不動産を購入されたことがある方は、「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
実は、民法は2020年4月に約120年ぶりとなる大改正が行われました。その際、この瑕疵担保責任という古い言葉とルールが廃止され、新しく生まれ変わったのが契約不適合責任です。
「名前が変わっただけでしょう?」と思われるかもしれませんが、中身は買主保護の観点から、大幅に分かりやすく、そして強力に進化しています。どのように変わったのか、比較しながら見ていきましょう。
昔の法律で使われていた瑕疵(かし)とは、簡単に言うと「隠れたキズや欠陥」のことでした。 旧民法では、普通に注意して見ていたけれど、契約した時点では気づかなかった隠れた欠陥(瑕疵)があった場合に限り、売主が責任を負うというルールになっていたのです。
しかし、この「隠れていたかどうか(瑕疵にあたるかどうか)」の判断は、一般の人には非常に難しく、裁判でも度々激しい争いになっていました。
そこで新しい法律では、主語をガラリと変えました。 「引き渡された目的物が、種類・品質・数量に関して、契約の内容に適合していない状態」 これを「契約不適合」と呼び、売主が負う責任を「契約不適合責任」としたのです。
新しいルールにおける最大のポイントは、不具合が「隠れていたかどうか」ではなく、「契約書で約束した内容と、実際に届いたものが合致しているかどうか」という点です。
例えば、中古住宅の契約で、雨漏りがあることを売主も買主も知らなかったとします。
・ 旧民法(瑕疵担保責任): 「隠れた欠陥(瑕疵)」にあたるため、売主が責任を負う。
・ 現行民法(契約不適合責任): 契約書に「雨漏りなし、健全な状態」と書かれている(またはそう想定される)にもかかわらず、実際には雨漏りしていた。つまり「契約の内容に適合していない」ため、売主が責任を負う。
結果として売主が責任を負う事実は同じように見えますが、アプローチが違います。新しい法律では、「とにかく契約書に書かれた通りのものを、きっちり引き渡しなさい。それができないなら、売主の債務不履行(約束違反)ですよ」という、非常にシンプルで分かりやすい契約の原則に統一されたのです。
契約不適合にあたる3つのパターン
具体的に、どのような状態が契約不適合とみなされるのでしょうか。法律では、大きく分けて「種類」「品質」「数量」の3つの不適合が定められています。それぞれ具体例を交えて見ていきましょう。
これは一番分かりやすいパターンです。契約した商品とは「別の種類」のものが引き渡された場合を指します。
具体例
① ブランドAの最新のシステムキッチンを導入する契約だったのに、ブランドBの型落ちのキッチンが設置された。
② 車のディーラーがグレード間違えて納車した。
③ 業務用の高機能プリンターを注文したのに、汎用のプリンターが届いた。
このように、個体や種類そのものが契約内容と異なっているケースが「種類の不適合」です。
大きな買い物のトラブルで最も多いのが、この「品質」の不適合です。契約書で予定されていた、あるいは通常備えているべき「品質や性能、状態」を満たしていないケースです。
具体例(不動産)
① 購入したマイホームにシロアリの被害が蔓延しており、柱がスカスカだった。
② 基礎部分に重大なひび割れが入っており、耐震性に問題がある建物だった。
③ 土地を購入したが、土壌汚染や地下に過去の建物の廃材が大量に埋まっていた。
具体例(自動車)
① 修復歴なし(事故車ではない)という条件で中古車を買ったのに、実際には過去に大きなフレーム損傷があり溶接された形跡があった。
② 納車された翌日に、エアコンが全く効かない、あるいはトランスミッションが故障して動かなくなった。
これらはすべて、買い手が「当然これくらいの品質はあるだろう」と契約し、売り手もそれを前提に売ったはずなのに、実際の品質が著しく劣っている状態です。
これは、契約書に記載されている「数や量、面積」が、実際の製品・土地と異なっていて、不足しているパターンです。
具体例
① 契約書には「土地の面積:200平方メートル」と記載されており、それを基準に代金を支払ったが、後から実際に測量し直してみたら「195平方メートル」しかなかった。
② オフィス用のデスクと椅子のセットを「10セット」購入したのに、引き渡し時には「9セット」しか届かなかった。
このように、目に見える数字の不足も明確な契約不適合となります。
欠陥を発見した買主ができる 4つの強力な請求権
もしあなたが大きな買い物をして、上記のような「契約不適合」を発見した場合、法律は買主に対して非常に強力な4つの権利(請求権)を与えています。
昔の瑕疵担保責任の時代は、原則として「損害賠償の請求」と「契約の解除」の2つしかできませんでしたが、現在の契約不適合責任では、より実態に即した柔軟な解決ができるよう、
4つのステップが用意されています。
まずは「約束通りの完璧な状態にしてください」と求める権利です(民法第562条)。これが基本中の基本になります。具体的には以下の3つの方法を請求できます。
① 目的物の修補: 雨漏りを修理する、車の壊れた部品を直す。
② 代替物の引渡し: 傷のない別の新品、あるいは同等の正常な中古車と交換する。
③ 不足分の引渡し: 足りない1セットの椅子を後から持ってこさせる。
なお、どの方法で「追完(不備を埋めること)」するかは、原則として買主が選ぶことができます。ただし、売主に過度な負担をかけないよう、売主側から「修理のほうが費用も安く、あなたにとっても不利益がないので、修理にさせてください」と変更を申し出ることができる場合もあります。
もし、買主が「直してください(追完請求)」と売主に伝えたにもかかわらず、売主がいつまでも修理をしてくれない場合、あるいは「これは構造上、もう修理できません」と断られた場合には、「じゃあ、その欠陥の分だけ、購入代金を安くしてください」と請求することができます(民法第563条)。
具体例
3,000万円で購入した中古住宅で、直すのに200万円かかる不具合が見つかった。売主が修理に応じないため、「代金を2,800万円に減額してください。すでに支払った3,000万円のうち、200万円を返金してください」と要求する。
まずは「1.追完請求」をして、それでもダメな場合のセカンドステップとして用意されているのが、この「2.代金減額請求」です。
※ 最初から修理が不可能な場合は、催告なしですぐに減額請求をすることも可能です。
不具合が大きすぎて、とてもそこには住めない、あるいはその車には乗れないという場合、最終手段として「契約そのものをなかったことにする(解除)」ことができます(民法第541条、第542条)。
契約を解除すると、以下の状態になります。
・ 買主は、手に入れた物件や自動車を売主に返す。
・ 売主は、受け取った代金を「全額」買主に返す。
ただし、どんなに小さなキズでも解除できるわけではありません。法律上、「契約の不適合が、契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるとき」は、解除が認められないことになっています。例えば、「高級外車の内装に、ミリ単位の小さな擦り傷があった」という程度であれば、修理(追完)や値引き(代金減額)で解決すべきであり、契約全体の解除までは認められない可能性が高いでしょう。
契約不適合によって、買主に具体的な「実害(損害)」が発生した場合、売主に対してお金を支払うよう請求できます(民法第415条)。これは上記の①〜③の権利とあわせて、同時に請求することが可能です。
具体例
・ 中古住宅の雨漏りのせいで、大切にしていた高級家具や家電が濡れて壊れてしまった。その家具の買い替え費用を売主に請求する。
・ 購入した車が故障したせいで、レッカー代や、修理期間中に乗るためのレンタカー代が必要になった。その実費を請求する。
【注意!】損害賠償だけは「売主の落ち度(過失)」が必要
ここで1点、非常に重要な法律の注意点があります。 1の修理、2の値引き、3の契約解除については、売主に「わざとやった(故意)」や「うっかり気づかなかった(過失)」がなくても、欠陥があるという事実だけで請求できます(無過失責任)。
しかし、4の「損害賠償請求」だけは、売主に落ち度(過失など)がない場合には、売主は責任を免れることになっています。売主が「どれだけ事前に点検しても、科学的に絶対に発見不可能だった原因」などの場合は、損害賠償までは認められないケースがあることを覚えておきましょう。
タイムリミットに要注意! 「知ってから1年」の罠
買主にとって非常に手厚い「契約不適合責任」ですが、いつでも、何年後でも請求できるわけではありません。法律では、売主がいつまでも不安定な立場に置かれないよう、明確な「期間の制限(タイムリミット)」を設けています。ここが実務上、最もトラブルになりやすいポイントです!
民法第566条では、目的物の「種類」または「品質」に関する契約不適合については、「買主がその不適合を知った時から1年以内に、その旨を売主に通知しなければならない」と定めています。
昔の民法(瑕疵担保責任)では、「1年以内に裁判を起こすなど、具体的に権利を行使しなければならない」という非常に厳しいルールでしたが、現在は「1年以内に、こういう不具合がありますよ、と売主に手紙やメール等で伝える(通知する)」だけで、ひとまずは権利が守られるようになりました。
しかし、安心はできません。「知った時から1年」ですので、例えば「引き渡されてから3年後に初めて雨漏りに気づいた」という場合、気づいたその日から1年以内に売主に通知すればセーフです。
「じゃあ、引き渡されて15年後に気づいても大丈夫なの?」というと、それは不可能です。 民法の一般的な消滅時効のルール(民法第166条)が適用されるため、以下のいずれかの期間が経過すると、完全に権利は消滅します。
① 買主が「権利を行使できる(不具合がある)こと」を知った時から5年間行使しないとき
② 権利を行使できる時(=通常は物件の引渡しの日)から10年間行使しないとき
つまり、どんなに遅くとも、家や車を引き渡されてから10年が経過してしまえば、それ以降に見つかった不具合については、原則として契約不適合責任を追及することはできなくなります。
数量・権利の不適合は例外!
ちなみに、「面積が足りない(数量の不適合)」や「他人の権利がついていた(権利の不適合)」については、この「知ってから1年以内の通知」という厳しい制限はありません。引渡しから10年(または知ってから5年)の一般的な時効にかかるまでは、いつでも請求が可能です。なぜなら、数量や面積の不足は、売主側も書類等を見れば最初から容易に把握できるはずであり、売主を過剰に保護する必要がないからです。
特約の魔術 契約書の「現状渡し」「免責条項」に騙されないで!
ここまで解説してきた民法のルールは、実は「絶対に変えてはいけないルール(強行規定)」ではなく、当事者間の合意で自由に変更できる「任意規定」という位置づけになっています。
つまり、売買契約書の中に「民法のルールとは違う独自の特約」が書かれていれば、原則としてそちらの特約が優先されてしまうのです!ここに、大きなお買い物をする際の大いなる落とし穴があります。
売主(特に中古品の売主や個人)は、売った後にガタガタ言われたくないため、契約書に以下のような条項を入れたがります。
・ 売主は、本物件について一切の契約不適合責任を負わないものとする
(瑕疵免責・契約不適合責任の免責)
・ 本物件は現状渡しとし、引渡し後の修補請求や代金減額請求は一切受け付けない
・ 契約不適合責任の期間は、引渡し日から1週間(または1ヶ月)とする
もし、あなたがこの内容が書かれた契約書にサインをしてしまうと、引き渡された翌日にどれだけ重大な雨漏りが見つかろうが、エンジンが爆発しようが、「免責することに同意しましたよね」と言われ、1円も請求できなくなってしまう危険性があります。
「そんなの不公平だ!買った側が絶対的に不利じゃないか!」と思いますよね。その通りです。そのため、日本の法律では、特定の取引において、こうした買主に厳しすぎる免責特約を「法律の力で強制的に無効にする」という強力なブレーキ(特別法)を用意しています。
ここが非常に重要ですので、売主が誰であるかに注目して、以下の3つのパターンを押さえておきましょう。
パターン1 売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合【超重要】
あなたが個人として、プロの不動産会社から中古マンションや一戸建て、土地を購入する場合です。この場合、プロとアマチュアの格差が大きいため、「宅地建物取引業法(宅建業法)」という法律が買主を強力にバックアップします。
宅建業法第40条により、売主が宅建業者の場合、契約不適合責任の期間を「引渡しの日から2年以上」とする特約を除き、民法よりも買主に不利な特約(例えば、免責とする、期間を1年にする等)を課すことは一切禁止(無効)となります。
不動産会社から「現状渡しだから、後から文句言わないでね」と言われて契約書にそう書かれていても、その特約は法律上強制的に無効になります。そして、無効になった場合は、原則通り「民法のルール(知ってから1年以内に通知すればOK)」に引き戻されるか、最低でも「引渡しから2年間」はきっちり責任を追及することができます。
パターン2 売主が会社(事業者)で、買主が個人(消費者)の場合
不動産に限らず、売主が車屋さん(法人)で、あなたが個人として中古車を買う場合や、リフォーム会社に工事を頼む場合などです。この場合は「消費者契約法」という法律が適用されます。
消費者契約法第8条により、事業者が負うべき損害賠償責任を「完全に免除(一切責任を負わない)」とする特約や、事業者の重大な過失による責任を制限するような特約は、無効となります。 「中古車につき、ノークレーム・ノーリターン・一切の責任免除」と書かれていても、事業者対消費者の契約であれば、その責任を100%免れる免責条項は無効とされる可能性が非常に高いのです。
パターン3 売主も買主も個人(または事業者同士)の場合
これが一番注意しなければならないパターンです。例えば、メルカリやヤフオクなどの個人間売買、あるいは「個人の売主」から不動産仲介会社を通じて中古住宅を買う場合、また「会社対会社」のビジネスの取引の場合です。
この場合は、お互いの立場が(法律上は)対等とみなされるため、民法の原則通り「契約書に書かれた免責特約が100%有効」になってしまいます。 個人の売主から家を買う際、契約書に「売主は契約不適合責任を一切負わない」と書かれていれば、本当に一切請求できなくなります。
※ ただし、実務上の中古住宅の個人間売買では、「引渡しから3ヶ月間だけ品質の責任を負う」という折衷案のような特約を結ぶのが一般的です。
売主が個人同士の取引で、契約書に「完全に免責(責任を負わない)」と書いてあったとしても、例外的に売主が絶対に言い逃れできないルールがあります(民法第572条)。
売主自身が「ここに強烈な雨漏りがある」「この車は過去に大事故を起こしてフレームが歪んでいる」という事実をあらかじめ知っていたにもかかわらず、買主にそれをわざと隠して(告げずに)「責任は負いません」という契約を結んだ場合、その免責特約は無効になります。
これは「信義則(お互いに誠実でいようという法律の大原則)」に反する行為ですから、法律は絶対に売主を許しません。きっちり責任を追及することができます。
行政書士が教える トラブルを未然に防ぐ「売買契約」3つの防衛策
大きな買い物をする際、引き渡された後に「契約不適合だ!責任を取れ!」と揉めるのは、どれだけ自分が法律上正しくても、精神的にも時間的にも非常にエネルギーを消耗します。一番良いのは、「最初からトラブルにならないように完璧な契約を結ぶこと」です。
ここでは、契約の専門家である行政書士の視点から、皆様が大きなお買い物をする際に絶対に実践してほしい「3つの防衛策」をお伝えします。
「相手が用意してくれたひな形だから」「大手の不動産会社、ディーラーだから大丈夫だろう」という思い込みは禁物です。契約書にサインをする前に、必ず以下のポイントを血眼になってチェックしてください。
・ 契約不適合責任(または瑕疵担保責任)という項目があるか?
・ 責任を負う「期間」はいつまでになっているか? 引渡しから3ヶ月?2年?あるいは免責?
・ 自分が「絶対にこれだけは保証してほしい」と思っている性能 ( 例:寒冷地仕様である、雨漏りがない、等が、契約書や付属の「物件状況報告書」に明記されているか?)
もし契約書の中に「買主に著しく不利な期間(1週間など)」や「免責」が書かれていれば、サインをする前に必ず「この期間をもう少し延ばせませんか?」「この部分の免責を外してくれませんか?」と交渉しましょう。交渉に応じてくれないような売主からは、高い買い物をすべきではありません。
契約不適合責任は「契約内容と違うこと」が要件ですから、「契約した時に、どういう状態だったか」の証拠が非常に重要になります。
① 不動産の場合
契約前や引渡し前に、部屋のすべての壁、天井、床、床下、外壁などを写真や動画で撮影しておきましょう。特に中古住宅の場合、最初からあった傷なのか、引渡し後に発生した不具合(雨漏りのシミなど)なのかを証明する決定的な証拠になります。また、プロのインスペクター(建物状況調査の専門家)に依頼して、インスペクション報告書を作ってもらうのも極めて有効です。
② 自動車の場合
納車時の走行メーター、外装のキズ、内装の状態、エンジンルームの様子を撮影し、可能であれば試乗した際の違和感などをその日のうちにメモやメールで担当者に送っておきます。
もし既製の契約書(ひな形)に満足がいかない場合や、個人間の売買で自分たちで契約書を作る場合は、お互いの合意のもとで、明確な「特約条項」を書き加えましょう。
特約の記載例(買主側を有利にしたい場合)
「売主は、本物件の引渡しの日から○年間、種類・品質・数量に関する契約不適合について、民法第562条に基づく修補等の責任を負うものとする。この期間内に買主が不適合を通知したときは、期間経過後であっても権利を行使できるものとする。」
このように、自分たちの取引の実態に合わせたオーダーメイドの契約書を作成することが、将来の何百万円もの損害賠償請求や裁判費用を抑える、最高の「保険」になります。
万が一、引き渡し後に不適合を見つけたらどうする? 【緊急対処法】
どれだけ気をつけていても、問題が起きてしまうことはあります。もしあなたが、購入したばかりの家や車に「契約書と違う重大な欠陥」を見つけてしまったら、パニックにならずに次のステップを、大急ぎで踏んでください。
見つけたその瞬間の状態を、スマホ等で日付・時間が分かる形で撮影してください。雨漏りであれば水が滴っている様子、機械の不具合であれば変な音がしている様子を動画で音と共に残すのがベストです。勝手に自分で修理しようとしていじり回してはいけません。「あなたが壊したんでしょう」と言われる原因になります。
前述の通り、「知ってから1年以内」に売主に通知する必要がありますが、1年もあるからと後回しにしてはいけません。時間が経てば経つほど、「引渡した後に、あなたの使い方が悪くて壊れたんじゃないですか?」と言い訳をされる隙を与えてしまいます。
通知する方法は、電話ではなく必ず「記録が残る形」にしてください。
・ 電子メール、LINEなどのメッセージ(既読や送信履歴が残るもの)
・ 後々大きなトラブルになりそうな場合は、郵便局から送る「内容証明郵便(配達証明付き)」
通知の内容は、この時点では完璧な損害賠償額の計算などは不要です。 「○月○日に引き渡された○○において、○○という不具合(契約不適合)を発見しました。つきましては、民法に基づく契約不適合責任(修補の請求等)を追及いたしますので、まずは現地の確認と今後の対応についてご回答ください」 という旨をきっちり送ることが、タイムリミット(1年の期間制限)を止めるために最も重要なアクションです。
誠実な売主であれば、通知を受けてすぐに修理の手配をしてくれたり、代金の返金口座を聞いてくれたりします。しかし、「うちには責任がない」「現状渡しと契約書に書いてある(実際には無効な特約なのに)」などと言って逃げようとする売主も少なくありません。
売主が話し合いに応じない場合や、提示してきた妥協案(「数万円で手を打ってくれ」など)に納得がいかない場合は、すぐに弁護士等法的な専門家に相談してください。
札幌での売買契約トラブル・契約書作成は、行政書士にお任せください
大きな買い物をするとき、私たちはどうしても「手に入るものの素晴らしさ」や「これからの楽しい生活・ビジネスの発展」ばかりに目を奪われがちです。しかし、法律のプロとしての私たちの役割は、お客様が最高にハッピーな瞬間を迎えている裏側で、「万が一、最悪の事態が起きたときに、お客様が路頭に迷わないための盾(契約書)を準備すること」にあります。
私たち行政書士は、「街の身近な専門家」として、皆様の売買契約に関して以下のような強力なサポートを行っています。
① 売買契約書の作成・リーガルチェック
個人間での不動産売買、高級車の取引、事業用機械の売買など、お客様の状況に合わせた最適な契約不適合責任の条項や特約を盛り込んだ、トラブルの起きない契約書をオーダーメイドで作成します。また、相手から提示された契約書に危ない落とし穴(不利な免責条項など)がないかをプロの目でチェック(リーガルチェック)します。
② 合意書・示談書の作成
万が一、引き渡し後に不具合が見つかってしまい、売主との間で「今回は○○万円を返金してもらう代わりに、今後の責任は問わない」といった話し合いがまとまった場合、その内容を法的に完璧な「合意書」や「示談書」に落とし込み、将来の蒸し返しを防ぎます。
③ 内容証明郵便の作成
売主に対して、契約不適合の事実を公式に通知し、修理や代金減額を求めるための「内容証明郵便」を、行政書士名義で作成・発送します。行政書士の職印が押された正式な書面が届くことで、それまで不誠実だった売主が急に態度を変えて真面目に対応し始めるケースは非常に多いです。
特にここ札幌・北海道における売買契約(不動産や自動車)では、本州の法律実務とは少し異なる「寒冷地特有の品質不適合」への配慮が欠かせません。
① 不動産であれば
「冬期間の無人時の水抜きが不完全で、水道管が破裂した形跡はないか」「屋根の構造(無落雪屋根など)に起因する、すがもれ(凍結による雨漏り)のトラブルが隠れていないか」「断熱材が結露でカビだらけになっていないか」
② 自動車であれば
「下回りが融雪剤(塩化カルシウム)によって深刻にサビて、腐食していないか」「寒冷地仕様としての性能(バッテリーやヒーター等)が契約内容通り備わっているか」
こうした地域密着の視点を持った契約書のチェックや作成ができるのは、札幌の風土をよく知る地元の行政書士ならではの強みです。
まとめ ~ 賢い買主になって、安心な「大きな買い物」を!
今回は「売買契約と契約不適合責任」というテーマについて、大ボリュームで詳しく解説してきました。最後に、今回の大切なポイントをギュッとまとめておさらいしましょう。
- 契約不適合責任とは: 「隠れたキズ」かどうかではなく、「契約書で約束した内容と、実際に届いたものが合致しているか」の責任。
- 買主の4つの権利: 欠陥を見つけたら、「1.修理(追完)」「2.値引き(代金減額)」「3.白紙に戻す(解除)」「4.実害の弁償(損害賠償)」を請求できる。
- 期間の制限: 原則として、不具合を「知ってから1年以内」に売主に通知しなければならない(引渡しから10年で完全時効)。
- 特約の罠と法律のブレーキ: 個人間やBtoBでは「免責特約」が有効になってしまうが、売主が「不動産会社」の場合や「事業者(対消費者)」の場合は、法律(宅建業法や消費者契約法)によって買主に不利な特約は無効になる。
- 最大の予防策: 契約前に契約書を一字一句確認し、引き渡し時の状態を写真や動画で記録し、実態に合った独自の特約を結ぶこと。
人生における大きな買い物は、本来とても素晴らしい、未来への投資です。だからこそ、後から「こんなはずじゃなかった…」と涙を流すことのないよう、契約の段階で法律という最高の防具を身にまとっておくことが大切です。
「今度、個人間で少し大きな金額の売買契約をする予定があるけれど、契約書はどうすればいい?」 「提示された契約書に『現状渡し・一切の責任を免除する』って書いてあるけれど、このままサインして大丈夫?」 「購入した物件にトラブルが見つかったけれど、売主への通知書の書き方が分からない…」
そんなときは、どうぞ一人で悩まずに、お気軽に当事務所までご相談ください。札幌の皆様の安心な暮らしとビジネスを守るため、親身になって全力でサポートさせていただきます。
法律を味方につけて、安心で納得のいく、素晴らしいお買い物を実現させてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
■ 札幌での相続・遺言のご相談なら
札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
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