台風、地震、豪雨、雪害など、日本全国で自然災害が毎年のように猛威を振るっています。このたびの災害等により被災された皆さまにおかれましては、心よりお見舞いを申し上げます。
長年暮らし慣れた住まいや大切な家財を失うこと、あるいは避難生活を余儀なくされ、今まで当たり前だった生活基盤が突然奪われてしまうことのショックやご不安は、到底計り知れるものではありません。日々、厳しい状況の中でご苦労されている皆さまが、一日も早く安心できる穏やかな生活を取り戻し、生活の再建を進められますことを切に祈念いたします。
さて、私たちが暮らす北海道・札幌市におきましても、過去には2018年(平成30年)の北海道胆振東部地震や、記録的な大雪・局地的な豪雨など、暮らしを揺るがす自然災害を経験してきました。本年におきましては、現在のところ札幌市内および近郊で甚大な被害をもたらす自然災害の発生は免れているかもしれません。しかし、これをもって「北海道や札幌は絶対に安全だ」と言い切ることはできません。災害は、前触れもなく、ある日突然私たちの暮らしを襲います。決して対岸の火事ではないのです。
大規模な災害が発生した直後、多くの方は「これから何をどう手続すればいいのか分からない」という深い混乱に陥ります。だからこそ、災害が「起きてから調べる」のではなく、平時の今、最低限の知識と制度の流れを知っておくことが非常に大切です。
本記事では、札幌で活動する行政書士の視点から、万が一被災した際にどのような手順で行動し、罹災証明書の申請方法やどのような公的支援制度を活用すべきなのか、生活再建の道筋となるロードマップを詳しく解説いたします。もしもの時の備えとして、またご自身やご家族の万が一の際のお役に立てれば幸いです。
災害に遭ったらまず何をすればいい? 命の安全確保が最優先
災害が発生した直後、誰もがパニックに陥り、「家の片付けをしなければ」「役所に手続に行かなければ」と焦ってしまうことがあります。しかし、被災直後に最も重視すべきなのは行政手続や家の心配ではありません。何よりも「ご自身とご家族の命と身の安全を確保すること」です。
災害直後は身の安全が最優先
大規模な地震や風水害の直後は、建物の倒壊リスク、土砂崩れ、河川の氾濫、家具の転倒など、あらゆる危険が潜んでいます。行政機関への各種申請や手続は、安全がしっかりと確保されてから行うものであり、発生直後に慌てて役所へ向かう必要はありません。
避難が必要な場合は無理に自宅へ戻らない
自宅が危険な状態にある場合や、自治体から避難指示が出されている場合は、指定された避難所や安全な知人宅等へ避難してください。貴重品や書類を取りに戻りたくなるお気持ちは痛いほど分かりますが、余震などの二重被害の恐れがある中で無理に自宅へ戻る行為は大変危険です。安全が確認されるまでは、決して危険な場所に近づかないでください。
電気・ガス・水道など二次災害への注意
避難する際や、揺れ・浸水が収まった後に自宅の状況を確認する際は、二次災害の防止に細心の注意を払う必要があります。
- 電気: 停電後に電気が復旧した際、破損したコードや家電から火災が発生する「通電火災」を防ぐため、避難時にはブレーカーを落としてください。
- ガス: ガスの臭いがする場合は、スイッチ類に触れず(火花が飛ぶのを防ぐため)、窓を開けて換気し、ガス会社へ連絡します。
- 水道: 断水後の濁り水や、排水管の破損による漏水がないかを確認してから使用を開始してください。
高齢者や障害のある家族がいる場合に特に気を付けたいこと
ご高齢の方、障害をお持ちの方、乳幼児がいるご家庭では、避難行動そのものに時間がかかります。足元が悪くなっている倒壊現場や冠水道路を移動するのは危険が伴いますので、近隣住民の方々と声を掛け合い、早め早めの避難を心がけてください。また、持病の薬や品薄になりがちな福祉用具(おむつ、補聴器、予備のメガネ等)の確保も優先事項となります。
落ち着いたら「生活再建のための手続」が始まる
身の安全が確保され、避難生活や避難指示が一段落して初めて、次のステップである「生活再建のための手続」へと進みます。 被災後の手続は、1回申請して終わりというものではありません。
「被害の記録」→「罹災証明書の申請」→「住宅の被害認定調査」→「各種支援金・給付金の申請」→「税・保険料の減免手続」など、
いくつもの制度を順番に、漏れなく確認・申請していく必要があります。この後で解説するステップを一つひとつ踏んでいくことが、確実な生活再建への第一歩となります。
片付ける前に「被害状況」を写真や動画で記録する
片付けや清掃、破損個所の修理を急ぎたいお気持ちは理解できますが、片付けや修理をしてしまう前に、被害状況を写真や動画でしっかり記録しておくことが極めて重要です。この記録が、後述する「罹災証明書」の発行や、火災保険・地震保険の保険金請求において大きな証拠となります。
屋根、壁、床、窓、外壁などをできるだけ多く撮影する
住まいに被害を受けた場合、壊れた箇所だけでなく建物全体の状況が伝わるように撮影を行います。撮影すべき主要なポイントは以下の通りです。
・ 建物全景(東西南北全て撮影するのが理想です)
・ 基礎部分の亀裂
・ 外壁のひび割れ、剥がれ
・ 屋根のズレや破損
・ 室内の壁、天井の雨漏り跡や亀裂
・ 床の歪み、傾き、破損
・ 窓ガラスやサッシの破損
被害箇所の「全体」と「近くから」の両方を撮る
撮影の基本は「引き(全体)」と「寄りとアップ(詳細)」の組み合わせです。 例えば、壁に亀裂が入っている場合、部屋全体のどこにある亀裂かが分かる「遠目の写真」を1枚撮影し、次にその亀裂に近づいて深さや長さを強調した「アップの写真」を撮影します。アップの写真には、定規やペットボトル、メジャーなどを並べて撮影すると、亀裂の太さや浸水の深さが客観的に伝わりやすくなります。
浸水した場合は浸水した高さが分かる写真も重要
台風や集中豪雨などで床下・床上浸水の被害に遭った場合は、「水がどこまで来たか」を示す跡(浸水深)の撮影が重要になります。 外壁や室内の壁、柱、家具などに残った泥の跡や水の筋に定規やメジャーをあて、床上何センチ、あるいは地面から何センチまで浸水したのかがはっきりと判別できるように撮影します。
家財などについても記録しておく
建物だけでなく、災害によって破損・汚損した家電製品、家具、衣類、車などの家財(動産)も撮影します。これらは保険金の請求や、自治体による不要家財の無償処理・持ち込み手続などの際に必要となる場合があります。
修理・撤去を急ぐ場合でも、可能な範囲で記録を残す
ドアが閉まらない、屋根から雨漏りがひどいなど、安全や防犯の観点から即座に片付けや応急修理を行わなければならないケースもあります。その場合でも、決して諦めず、作業に入る前の状態をスマートフォンやカメラで可能な限り多角的に撮影します。業者に修理を頼む際も、着工前の写真を撮影してもらうよう依頼しておくと安心です。
写真だけでなく動画も活用する
最近のスマートフォンであれば、動画撮影を活用するのも大変効果的です。敷地の外から家全体を映しながら歩き、そのまま玄関から室内に入り、各部屋の被害状況や雨漏りの音、床の傾き具合などを声を出しながら一連の映像として記録しておくと、全体の被害規模が立体的に伝わります。
「後で撮ればいい」ではなく、被害直後に記録することの重要性
片付けをしてきれいにしてしまったり、壊れたものを処分してしまったりした後に自治体の調査が入ると、「被害があったこと」を客観的に証明するのが非常に困難になります。認定ランクが下がり、受けられるはずだった支援金が受け取れなくなるという不幸な事態を防ぐためにも、「片付ける前にまず撮影」を徹底してください。
罹災証明書とは? 災害後の生活再建で重要になる証明書
被災後の生活再建において、最も中心的な役割を果たす書類が罹災証明書(りさいしょうめいしょ)です。名前を聞いたことがある方も多いと思いますが、その役割を正しく理解しておくことが重要です。
罹災証明書とは何か
罹災証明書とは、地震や風水害、豪雨などの自然災害によって被災した住家(住宅)の被害程度を、居住する市区町村が現地調査等に基づき公式に証明する公的な文書です。自治体の首長(札幌市であれば札幌市長)の名義で交付されます。
どのような被害を証明するものなのか
罹災証明書は、原則として「人が現に居住している住宅」の被害を対象として証明するものです。なお、店舗、事務所、空き家、カーポート、単体の倉庫や家財などの被害については、別途、被災証明書(ひさいしょうめいしょ)という名称で区別して発行される自治体が多く見られます。
住宅の被害認定調査との関係
罹災証明書を申請すると、自治体の職員(または自治体から委託を受けた建築士等の調査員)が自宅を訪問し、「住家被害認定調査」を実施します。この調査は、内閣府が定める統一的な「住家被害認定基準」に基づいて行われ、建物の構造(木造、鉄骨造、コンクリート造など)ごとに屋根、外壁、柱、基礎、内壁、床などの損傷割合を点数化し、総合的な被害の程度を判定します。
「全壊」「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」などの被害区分
被害認定調査の結果に基づき、住宅の被害は主に以下の区分に判定されます。
① 全 壊
住宅の損壊・流失等の被害割合が50%以上、または補修しても再利用できない状態。
② 大規模半壊
被害割合が40%以上50%未満で、構造耐力上主要な部分の補修に大規模な工事が必要な状態。
③ 中規模半壊
被害割合が30%以上40%未満で、一定の半壊解体や相当規模の補修が必要な状態。
④ 半 壊
被害割合が20%以上30%未満で、一定の補修が必要な状態。
⑤ 準半壊
被害割合が10%以上20%未満の状態。
⑥ 一部損壊
被害割合が10%未満。(屋根瓦の一部破損、外壁の軽微なひび割れなど)
※ 水害の場合は、床上浸水や床下浸水の深さ等によって判定される基準もあります。
罹災証明書が、さまざまな公的支援を受ける際の判断材料になること
罹災証明書は、単に「家が壊れました」と主張するための紙ではありません。交付された罹災証明書に記載された「被害区分(全壊、大規模半壊など)」に応じて、公的な支援金(被災者生活再建支援金)の給付額や、住宅の応急修理制度の対象になるか否か、各種税金・社会保険料の減免措置、災害義援金の配分額などが厳格に決定されます。
単なる「家が壊れたことの証明」ではなく、その後の生活再建につながる重要な書類
罹災証明書は、言わば「すべての災害支援制度を受けるためのパスポート」です。この証明書が手元にあることで、行政や各機関に対してご自身の被害状況を客観的に示すことができ、スムーズに支援の手続きを進めることが可能になります。
罹災証明書はどこに、どうやって申請する?
実際に災害に遭った場合、罹災証明書はどこへどのように申請すればよいのでしょうか。具体的な手続きの流れを説明します。
原則として被災した市区町村へ申請
罹災証明書の申請窓口は、被災時にその住宅が存在する市区町村の役所(役場)です。広域災害の場合は、特別に特設窓口や地域ケアセンターなどが設置されることもあります。
札幌市の場合はどのような窓口・手続になるのか
札幌市において自然災害(地震・風水害など)による罹災証明書を申請する場合、居住している区の区役所(総務企画課または市民生活課など)」が基本的な申請受付窓口となります。
※ なお、火災による罹災証明書については、自治体の一般行政窓口ではなく、管轄の「消防署」が発行窓口となりますので注意してください。
大きな災害が発生した際、札幌市では区役所の窓口持参だけでなく、郵送での受付や、マイナポータル(ぴったりサービス)等を活用したオンライン申請の体制が整えられています。最新の受付窓口や申請方法は、災害発生後に札幌市公式ホームページや区の広報誌、避難所等で案内されます。
申請時に必要となる可能性のあるもの
一般的な申請に必要な書類等は以下の通りです。
① 罹災証明書交付申請書
② 申請者の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
③ 被害状況が確認できる写真・動画
④ 印鑑
⑤ 返信用封筒・切手(郵送交付を希望する場合)
※ 建物が浸水のみで全壊が明らかな場合など、写真のみで調査を簡略化・高速化する「自己判定方式(写真による判定)」が導入される場合もあります。
本人確認書類について
災害時は身の回りのものを紛失してしまうことも珍しくありません。運転免許証やマイナンバーカードを消失してしまった場合でも、避難所での本人確認や各種データベースの照合により柔軟に対応してもらえるケースが多いので、書類が足りないからといって申請を諦めず、まずは窓口に相談することが大切です。
自治体によって申請方法や必要書類が異なる場合があること
基本的な枠組みは全国統一されていますが、災害の規模や自治体の運用方針によって、申請様式や添え付け書類、申請受付期限などが若干異なる場合があります。必ず被災地の自治体が発信する最新情報を確認してください。
被災者本人だけでなく、状況によって代理人による手続が問題になる場合
高齢者施設に入所中である、病気や怪我で入院している、あるいは遠方に住んでいるなどの理由で、被災者本人が自ら申請を行えない場合があります。 この場合、同居の親族であれば代理申請が可能なケースが多いですが、別居の親族や第三者が代理で申請・受領を行う際には「委任状」や親族関係を証明する書類が必要となります。ご高齢の親御様が一人暮らしで被災されたようなケースでは、離れて暮らすご家族が手続をサポートする視点が不可欠です。
「罹災証明書を申請する」という行為そのものが、生活再建の第一歩になる
被災後はやることが山積みで心が折れそうになりますが、まずは「罹災証明書の発行申請を出す」という一つの具体的なアクションを起こすことが、停滞していた生活再建を前に進める大きなきっかけとなります。
思っていたより被害が軽いと判定されたら? 被害認定に納得できない場合
罹災証明書が交付された後、記載された判定結果(被害区分)を見て、「実際は住める状態ではないのに、半壊ではなく一部損壊と判定されてしまった」「思っていたより被害が軽くて納得がいかない」というトラブルが発生することがあります。
被害認定調査はどのように行われるのか
調査員は内閣府の基準に従い、短時間で効率的に多数の家屋を調査しなければなりません。そのため、主に外観や主要な構造の目視チェックを中心に行うケースがあります。
外見だけでは分からない住宅内部の被害
しかし、住宅のダメージは外見だけでは分かりません。例えば、外壁には目立ったひび割れがなくても、
・ 基礎が沈下して床が大きく傾いている
・ 柱や梁が歪んで引き戸や窓が全く開かない
・ 屋根裏や壁内部の柱が破断している
・ 床下深くまで泥水が入ってカビや悪臭が蔓延している
といった内部・隠れた部分の重大な被害を見落とされてしまう可能性があります。
写真や資料を残しておくことがなぜ重要なのか
ここで力を発揮するのが、「被災直後に撮影した写真や動画」、そして「施工業者や専門家(建築士)に見てもらった見積書や診断書」です。一次調査の段階で調査員に見せきれなかった写真や、目に見えない箇所の損傷記録があれば、認定を覆すための強力な根拠となります。
判定結果に疑問がある場合に確認・相談する方法
交付された罹災証明書の判定区分に不服・疑問がある場合は、諦めて受け入れる必要はありません。自治体の担当窓口(資産税課や防災課など)に行き、どのような理由・配点計算でその判定になったのか、調査結果の説明を求めることができます。
再調査などの制度が設けられている場合があること
多くの自治体では、判定結果に納得がいかない被災者のために「二次調査(再調査)」の申請を受け付けています。二次調査を申請すると、より専門的な調査員が派遣され、時間をかけて住宅の内部、床下、屋根裏、傾斜測定などを行う詳細な調査が実施されます。その結果、判定が「一部損壊」から「半壊」へ、「半壊」から「大規模半壊」へと変更され、支給される支援金が大幅に増額された事例も少なくありません。
自分の被害を正確に伝えるために、記録を整理しておくことの重要性
二次調査を依頼する際は、単に「不満だ」と主張するのではなく、「どの部屋のどの部分にどのような被害があるか」をメモにまとめ、写真を添付して具体的に提示することが成功の鍵となります。
「罹災証明書を取ったら終わり」ではなく、その内容を確認することも大切
罹災証明書は「手元に届いたら終わり」ではありません。そこに記載された被害区分がご自身の被害実態と照らし合わせて適正なものになっているかをしっかり確認・精査することが、正当な支援を受けるために非常に重要な作業となります。
罹災証明書を取得したら何が変わる? 知っておきたい生活再建の支援
罹災証明書を取得することで、具体的にどのような公的支援を受けることができるのでしょうか。代表的な制度とその仕組みについて解説します。
被災者生活再建支援制度とは
自然災害により住宅が全壊するなど、生活基盤に著しい被害を受けた世帯に対し、国および都道府県が資金を支給して生活の再建を支援する制度が「被災者生活再建支援制度」です。
支援金にはどのような仕組みがあるのか
被災者生活再建支援金は、大きく分けて以下の2つの支給額の合計(複数世帯の場合、最
大300万円)で構成されています。
① 基礎支援金: 住宅の被害程度に応じて支給されるお金
・ 全壊等:100万円
・ 大規模半壊: 50万円
・ 中規模半壊: なし(自治体独自の制度でカバーされる場合あり)
② 加算支援金: 住宅の再建方法に応じて後から支給されるお金
・ 建設・購入: 200万円
・ 補修: 100万円
・ 賃借(公営住宅を除く民間賃貸など): 50万円
※ 単身世帯の場合は、支給額が上記(複数世帯)の「4分の3」の金額となります。
住宅の被害程度や再建方法によって支援内容が変わる
このように、罹災証明書の被害判定が「全壊」なのか「大規模半壊」「中規模半壊」「半壊」なのかによって、支給される金額が何十万円、何百万円単位で変わってきます。また、壊れた家を「建て直す」のか、「リフォーム(補修)する」のか、「アパートを借りる」のかという今後の生活設計によっても加算額が変化します。
支援金以外にも、自治体による支援制度が存在する場合
国の被災者生活再建支援法が適用されない規模の災害であっても、北海道や札幌市などの各自治体が独自に要綱を定め、見舞金の支給や独自の生活再建支援制度を設けている場合があります。
住宅の応急修理、住居の提供、融資など制度が複数にまたがることに注意
支援制度は現金がもらえる給付金だけではありません。
① 住宅の応急修理制度(災害救助法)
屋根やドア、水回りなど日常生活に欠かせない最小限度の部分を、自治体が業者に委託して一定額まで直接修理してくれる制度。(中規模半壊・半壊・準半壊などが対象)
② 公営住宅等の無償提供
自宅に住めなくなった世帯に対し、市営住宅や道営住宅などを一時的な避難先として無償(または格安)で開放する制度。
③ 災害復興住宅融資
住宅金融支援機構などによる低利または無利子の復興融資制度。
罹災証明書を取得しただけで自動的にすべての支援が受けられるわけではない
ここで最も注意しなければならないのは、罹災証明書を取ったからといって、銀行口座にお金が自動的に振り込まれるわけではないという点です。 支援金、住宅の応急修理など様々な支援は、それぞれ個別の申請手続が必要です。どの制度にいつまでに申請しなければならないのかを自分自身で把握し、アクションを起こさなければ制度を利用できないのが日本の行政手続きの現実です。
災害後は「支援金」だけではない! 税金・保険・住宅・生活費も確認しよう
生活再建に必要なのは、国の「支援金」をもらうことだけではありません。支出を抑え、資産を守り、生活全体を立て直すという総合的な視点が不可欠です。ここでは、特に知っておきたい各種制度と対応策についてまとめます。
所得税・住民税などの税の減免や猶予
災害によって住宅や家財に損失を受けた場合、税制上の優遇措置を受けることができます。
① 雑損控除(所得税・住民税)
震災、風水害などの災害によって家財や住宅に損害を受けた場合、一定の金額を所得から控除し、納める税金を安くする(または還付を受ける)ことができます。
② 災害減免法による税金の軽減・免除
所得金額が一定以下で、住宅や家財の被害が価格の2分の1以上ある場合、所得税の軽減・免除が受けられます。(雑損控除との選択になります)
③ 固定資産税・都市計画税の減免
被災した土地や建物に対する固定資産税について、被害の程度に応じて減免措置が講じられます。
④ 申告・納付の期限延長・猶予
被災直後、税金を期限までに納められない場合、申請により納付期限を延長・猶予してもらうことが可能です。
国民健康保険料などの減免・猶予
減免されるのは税金だけではありません。
① 国民健康保険料・介護保険料・後期高齢者医療保険料
主たる生計維持者の収入が大幅に減少した場合や住宅に大きな被害を受けた場合、申請により保険料の減免や徴収猶予を受けられます。
② 医療機関での窓口負担の減免
災害救助法が適用された地域などでは、医療機関の窓口で支払う一部負担金(医療費)が免除・猶予される特例措置がとられることがあります。
住宅ローンや借入金についての相談
「家が壊れてしまったのに、住宅ローンだけが何千万円も残っている」という状態は、被災者にとって絶望的な負担となります。これに対し、金融機関への相談や以下のようなガイドラインの活用が可能です。
① 自然災害による被災を受けた債務者の整理に関するガイドライン
一定の要件を満たす場合、破産手続等によらずに、住宅ローンなどの債務の免除・減額を金融機関と申し出・協議できる仕組みです。信用情報機関にブラックリストとして登録されないなどのメリットがあります。
② 返済期間の延長や猶予の交渉
各金融機関(銀行、住宅金融支援機構など)の窓口で、元金返済の据え置きや返済期間の延長について相談に応じてもらえます。
火災保険・地震保険の確認
公的支援と並んで再建資金の大きな柱となるのが、民間の損害保険(火災保険・地震保険)です。
① 地震保険
地震、噴火、これらによる津波を原因とする火災・全壊・埋没・流失等の損害を補償します。罹災証明書とは別に、保険会社独自の鑑定(全相殺、大半相殺、小半相殺、一部損)が行われます。
② 火災保険(風水害補償)
台風による屋根の破損や、豪雨による床上浸水などは火災保険の「風災・水災補償」の対象となります。
③ 申請期限に注意
保険金の請求には期限(原則として損害発生から3年以内)がありますが、記憶が薄れないうちに、早めに加入している保険会社や代理店へ連絡することが大切です。
住宅の修理・建て替え
住まいを直す際は、自治体の「応急修理制度」を優先的に使うのか、保険金を充当して本格的にリフォームするのか、解体して新築するのかなど、手順を誤ると「受けられるはずだった補助金が対象外になってしまった」というトラブルが発生します。契約を結ぶ前に、必ず制度の条件を確認する必要があります。
一時的な住居の確保
自宅での生活が困難な場合、避難所から「仮設住宅」や「みなし仮設住宅(自治体が借り上げた民間アパート)」への移行を検討します。入居要件や受付期間は被災直後に順次発表されるため、役所の広報や避難所での掲示を毎日チェックしなくてはなりません。
災害ごみや家財の処分
被災によって発生した壊れた家具、家電、解体クズなどの「災害ごみ」は、自治体が指定する仮置き場へ持ち込むことで、通常は有料となる処理手数料が「無料(免除)」となる措置が講じられます。処分する前に写真を撮影しておくことが重要です。
支援金をもらえるかだけではなく、生活全体を立て直す視点が必要
このように、被災後の手続は支援金をもらって終わりではなく、税金、社会保障、住宅ローン、民間保険、処分費用など多岐にわたります。「入ってくるお金(給付金・保険金)」を最大化しつつ、「出ていくお金(税金・ローン・免除制度)」を最小限に抑えるという、生活全体を見渡した総合的なアプローチが生活再建には求められます。
被災したとき、行政書士に相談できることとは?
被災後、膨大な手続と不安の中で「どこから手をつければいいのか分からない」と途方に暮れてしまう方は少なくありません。そうした際、行政手続のプロ「行政書士」がどのようなサポートを行えるのかについて解説いたします。
罹災証明書など行政手続についての相談
行政書士は、官公署(役所や都道府県)に提出する書類の作成や申請手続の代理を行う国家資格者です。罹災証明書の申請書の書き方が分からない、どのような添付書類が必要なのか分からないといった基本的な疑問に対し、わかりやすくアドバイス・サポートを行います。
必要な書類の整理
被災後は、身分証明書、権利証、契約書などが紛失したり雑然としたりしがちです。また、行政機関へ提出する申請書や添付書類は多岐にわたり、高齢者の方や被災で心身ともに疲弊している方にとって、これらを一人で整えるのは非常に大きな負担となります。行政書士は必要書類の洗い出しと整理をサポートします。
被災状況や申請内容の整理
二次調査(再調査)を希望する場合や、複雑な被災状況を行政側に正確に伝えたい場合、被災写真の整理や状況説明書の作成、提出用資料の取りまとめなどを手伝うことができます。
各種支援制度について「どこに相談すればよいのか」を一緒に確認する
「税金のことは税務署や市役所の税務課」「住宅ローンは銀行」「保険は保険会社」「健康保険は区役所保険年金課」「生活費の相談は社会福祉協議会」など、災害後の相談先はバラバラに分散しています。行政書士はご相談者様の現在の被害状況とご希望をお聞きし、「まずどの窓口へ行き、どの制度を申請すべきか」という整理と優先順位付けを行います。
高齢者の場合、本人だけでは複数の手続を進めることが難しいケース
特にご高齢の方やお一人暮らしの方、認知症等で判断能力に不安があるご家族がいるご家庭では、複雑化するデジタル申請や窓口での何時間もの順番待ち、複数の書類記入に対応しきれないケースが非常に多く見られます。行政書士は親族の方とも連携しながら、親身に手続の伴走支援を行います。
行政書士ができること・できないことを明確に説明
法律上、行政書士が対応できる業務には範囲があります。ご相談者様に誠実であるためにも、「できること・できないこと」を明確にお伝えしています。
◉ できること
行政機関への申請書類の作成・提出代行、事実証明書類の作成、各種支援制度情報の整理・相談対応、遺言や成年後見に関する相談など。
◉ できないこと
相手方と交渉・紛争(裁判)を行うこと(弁護士の業務領域)、税務申告の代理(税理士の業務領域)、不動産登記の代理(司法書士の業務領域)
必要に応じて自治体、社会福祉協議会、弁護士、保険会社などにつなぐ
行政書士の手に負えない専門的な法律問題(借地借家トラブルやローン免除の交渉、相続登記など)や税務問題が発生した場合は、他士業(弁護士など)や自治体の相談窓口、社会福祉協議会、日本行政書士会連合会が設置する災害復興支援の専門枠組みへと迅速かつ適切にバトンをお渡し(ハブ役としてご紹介)いたします。
行政書士は、行政手続を中心に生活再建を支える専門家
行政書士は、決して魔法のようにすべての問題を一瞬で消し去る存在ではありません。しかし、複雑で分かりにくい「行政手続の壁」に突き当たった際、ご相談者様の隣に寄り添い、手続の道筋を照らし、生活再建という長い道のりを共に歩む「街の頼れる相談相手」です。
まとめ ~ 災害対策は「起きてから考える」のではなく、今から知っておく
今回のブログでは、災害が発生した際の初動から、罹災証明書の発行、支援金の仕組み、そして多角的な生活再建の手続まで解説してまいりました。
最後に、本記事の要点を振り返り、私からのメッセージをお伝えいたします。
「北海道や札幌は比較的安全だから」「今まで大きな被害に遭ったことがないから」という油断は、災害時には大きなリスクとなります。自然災害は私たちの予想を超えた規模とタイミングでやってきます。
平時の落ち着いている時間だからこそ、冷静に制度や手順を理解することができます。パニックになってから調べるのではなく、「もし被災したらどういう順番で動くのか」という大まかな流れを頭に入れておくこと自体が、非常に強力な防災・減災対策になります。
万が一被災してしまったら、以下の4ステップを思い出してください。
① 第一に「命と身の安全確保」(避難・二次災害防止)
② 第二に「被害状況の記録」(片付ける前に写真や動画を多角的に撮る)
③ 第三に「罹災証明書の申請」(札幌市なら区役所等の窓口・オンラインで手続)
④ 第四に「利用できる支援制度の確認と個別申請」(支援金、税・保険料の減免、住宅修理など)
本記事でご紹介した制度は一般的な法律や標準的な自治体の運用に基づくものです。実際の災害規模や発生時期、自治体(札幌市や北海道内の各市町村)によって、制度の細かな要件や上限額、申請期限などは変化します。必ずその時々の公的な発表を確認してください。
被災後の生活は、精神的にも肉体的にも想像を絶する負担がかかります。書類が書けない、制度の意味が分からない、どこに相談していいか分からないときは、決して一人で抱え込まず、自治体の相談窓口や専門家に声をかけてください。
離れて暮らす両親や祖父母が被災された場合、ご本人だけでは罹災証明書の申請や支援金の受給手続を完了させることが難しい場合が多々あります。ぜひ、子世代・家族が積極的に関わり、写真撮影の補助や代理・伴走申請を行いましょう。
防災といえば「非常食の準備」や「家具の転倒防止」が思い浮かびますが、「万が一被災したときに、どの公的制度を使い、どの専門家に相談すればよいのかをあらかじめ知っておくこと」も、立派な防災です。
当行政書士事務所では、普段の遺言・相続・成年後見・各種許認可のご相談はもちろんのこと、地域密着の行政書士として、皆さまの日常の不安や万が一の際の手続をサポートしております。
「もしもの時、うちの親の家はどうなるんだろう?」「罹災証明書や支援金手続について、もっと詳しく知っておきたい」など、気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。
本記事に記載されている制度や手続に関する情報は、執筆時点の一般的な法令・基準に基づいています。大規模災害の発生時には、特別措置法の適用や自治体独自の特例等により、手続窓口や給付要件、金額等が変更となる場合があります。実際に被災された場合は、必ず被災地の市区町村や関係機関が発表する最新の情報をご確認ください。
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【お問い合わせ先】 つしま行政書士事務所
- 所在地:札幌市東区
- 対応エリア:札幌市内および近郊エリア(出張相談も承ります)
- 営業時間:平日 9:00〜18:00(※事前の予約で土日祝や夜間も対応可能です)
初回60分相談料無料

☎ 011-788-3883
※ お電話でのお問い合わせにつきましては、当方留守の場合は必ず、留守電にお名前・ご用件(例 相続について相談したい)をお知らせください。
