ご家族がある日突然行方不明になり、警察に捜索願(行方不明者届)を出したものの、何年経っても連絡が取れず消息もつかめない。 そのような状況に置かれたご家族の精神的・経済的なご負担は、推し量るに余りあるものがあります。
「いつか帰ってくるかもしれない」という思いを抱き続けながらも、現実に目を向けると、行方不明になったご家族名義の預貯金や不動産、借金、年金、戸籍や婚姻関係など、放置しておけない法律上の問題が山積みになっていきます。
長期間消息が分からない家族がいる場合に、法律上の関係を整理するための重要な手続きとして失踪宣告(しっそうせんこく)という制度が存在します。
本記事では、札幌で相続のサポートを行っている行政書士が、失踪宣告の基本概念から要件、具体的な手続きの流れ、相続・借金・年金・婚姻への影響、そして万一本人が生きて帰ってきた場合の対応まで、詳しく分かりやすく解説いたします。
家族が行方不明になったら 「失踪宣告」という制度があります
ご家族が行方不明になってから長い年月が経過したとき、残されたご家族はどのような法律上の問題に直面するのでしょうか。
家族が行方不明になると、日常生活のあらゆる場面で手続きの滞り(ストップ)が発生します。 例えば、以下のようなケースで困りごとが生じます。
・ 行方不明者の銀行口座から預貯金を引き出せない・解約できない
・ 行方不明者名義の不動産(自宅や土地)を売却・処分・解約できない
・ 遺産分割協議を行いたいが、相続人の一人と連絡が取れないため協議が進まない
・ 配偶者が行方不明のままでは、再婚や生活環境の刷新が難しい
法律上、本人の同意や署名・押印が必要な手続きは、いくら親族であっても勝手に代理して行うことは原則できません。
よくある誤解として、「警察に届けてから○年経てば自動的に死亡扱いになる」「何年も連絡がないから自然と戸籍から抹消される」と思われている方がいらっしゃいます。
しかし、どれほど長期間行方が分からなくとも、自然に死亡扱いになることはありません。 法律上の「死亡」は、医師による死亡診断書(死体検案書)の発行や、公的な裁判手続きを経て初めて認められるものです。警察への捜索願も「捜索のための届出」に過ぎず、戸籍や法律上の権利関係を変化させる力はありません。
行方不明の状態が放置されると、残されたご家族の経済活動や生活そのものが縛られてしまいます。 とりわけ「他の親族が亡くなり相続が発生した場面」では、行方不明の相続人が一人でもいると、預貯金の解約や名義変更に必要な遺産分割協議書を作成することができなくなります。
このように、行方不明者の財産や身分関係が宙に浮いた状態を解消し、残されたご家族が法律上の手続きを進められるようにするために用意されているのが「失踪宣告」という制度です。
家庭裁判所の手続きを経て失踪宣告が確定すると、行方不明者は法律上「死亡したもの」とみなされ、相続の開始や婚姻関係の終了といった法律効果が生じます。
失踪宣告とは? 「死亡したものとみなす」制度
失踪宣告という言葉を聞いたことがあっても、具体的な仕組みまで知っている方は少ないかもしれません。ここでは制度の基礎知識を整理します。
失踪宣告とは、生死不明の状態が一定期間続いた者に対して、家庭裁判所の審判によって法律上死亡したものとみなす制度です。(民法第30条)
「死亡したとみなす」とは、実際の生死にかかわらず、法律上の関係(相続、婚姻、契約など)においては死亡したものとして取り扱うという強い効力を意味します。
失踪宣告には、失踪の原因や状況に応じて「普通失踪」と「危難失踪」の2種類があります。
① 普通失踪(原則7年間)
一般的になじみがあるのが普通失踪です。家出や蒸発、事故などの特別な理由がはっきりしないまま、生死不明の状態が7年間継続した場合に申し立てることができます。
・ 要件: 7年間生死が明らかでないこと
・ 対象: 家出、蒸発、一般的な行方不明など
② 危難失踪(危難が去った後1年間)
戦地への参加、沈没した船舶に乗っていた場合、震災や津波・火災などの災難(危難)に遭遇し、その危難が去った後1年間生死が明らかでない場合に申し立てることができます。
・ 要件: 震災・水難・火災等の危難が去った後1年間生死が明らかでないこと
・ 対象: 大地震、津波、船の沈没、航空機事故など
ここでもう一度強調しておきたいのは、「普通失踪で7年間生死不明が続いたからといって、自動的に死亡扱いになるわけではない」という点です。
7年という期間は、あくまで家庭裁判所へ申立てを行う資格(要件)が満たされる期間に過ぎません。申立てを行い、裁判所の調査・告示・審判という一連の厳格な手続きを経て、初めて失踪宣告の効果が発生します。ご自身で動かない限り、状態は永久に変わりません。
失踪宣告を申し立てるための要件と手続き
実際に失踪宣告の申立てを行う際、誰が・どこへ・何を準備して手続きを進めるべきなのでしょうか。行政書士目線で具体的に解説します。
誰でも申し立てられるわけではない
失踪宣告は、行方不明者の権利や利益を大きく左右し、身内や関係者の利害にも直結する重大な手続きです。そのため、誰でも自由に申し立てられるわけではありません。 法律上、申立てができるのは「利害関係人」に限られています。
「利害関係人」とは?
利害関係人とは、失踪宣告が行われることによって法律上の利害関係(直接的な権利・義務の影響)を有する人のことです。
・ 配偶者 婚姻関係の解消、相続権に関わるため
・ 法定相続人 子、親、兄弟姉妹など。失踪宣告により相続権を得る・変わる立場の人
・ 受遺者 遺言によって財産を譲り受ける予定の人
・ 保険金の受取人 生命保険金等の受け取りに関わる人
・ 連帯保証人・債権者 求償権や債権の行使に関わる場合など
単なる友人や、利害関係の生じない遠い親戚などは「利害関係人」に含まれません。
どこの家庭裁判所に申し立てるのか
申立てを行う裁判所は、「行方不明者の最後の住所地(または居所地)」を管轄する家庭裁判所です。 例えば、行方不明になる前に札幌市に住んでいたのであれば、札幌家庭裁判所が管轄となります。申立人の居住地の裁判所ではない点に注意が必要です。
必要となる主な書類は
申立てにあたっては、様々な証明書類を収集して裁判所に提出する必要があります。
① 失踪宣告申立書
② 行方不明者の戸籍謄本(全部事項証明書)
③ 行方不明者の戸籍の付票(または住民票除票など)
④ 申立人の戸籍謄本(利害関係を証明するため)
⑤ 失踪の事実を証する資料
・ 警察へ提出した「行方不明者届受理証明書」
・ 興信所・探偵等の調査報告書
・ 郵送物の返送記録、手紙、メールの履歴など
⑥ 利害関係を証する資料(不動産登記事項証明書、契約書、遺言書の写しなど)
※ 添付書類は個別の事案によって異なる場合があります。
家庭裁判所での調査・公告など
申立書が受理されると、家庭裁判所による慎重な審理が始まります。
① 家事事件官(裁判官)や家事調査官による調査・聞き取り
・ 申立人や親族への事情聴取、警察への照会などが行われます。
② 公示催告(こうじさいこく)
- 裁判所が官報や掲示板などで「〇〇さんについて失踪宣告の申立てがありました。本人は〇月〇日までに届出をしてください。また、生きていること・亡くなっていることを知っている人は届出をしてください」という公告を出します。
- 公告期間は、普通失踪で3ヶ月以上、危難失踪で1ヶ月以上と定められています。
審判が確定するまでの大まかな流れ
① 申立て (書類作成・提出)
② 裁判所での調査・審問
③ 公示催告の決定・掲載 (3ヶ月〜)
④ 審判の言い渡し (申立てを認める決定)
⑤ 審判の確定 (即時抗告期間の経過)
⑥ 役場への届出 (確定後10日以内に市区町村役場へ失踪の届出)
申立てから審判が確定するまでには、スムーズに進んだ場合でも半年から1年程度の期間がかかるのが一般的です。
失踪宣告が確定すると何が変わる? 戸籍は「死亡」になるのか
審判が確定した後、行方不明者の戸籍や法律上の扱いはどのようになるのでしょうか。読者の方が特に気になるポイントを解説します。
失踪宣告が確定すると戸籍上はどう記載される?
審判が確定したら、申立人は確定証明書等を添えて、10日以内に市区町村役場へ「失踪の届出」を行います。 この届出により、行方不明者の戸籍には「令和〇年〇月〇日失踪宣告確定」「令和年〇月〇日死亡とみなされる」といった事項が記載され、戸籍から除籍されます。
つまり、実質的に戸籍上も死亡した旨が記載されることになります。
「死亡届」と失踪宣告の関係
通常の死亡であれば医師の死亡診断書とともに「死亡届」を提出しますが、失踪宣告の場合は確定審判に基づき「失踪の届出」を行います。 手続きの種類は異なりますが、戸籍上の効力としては死亡と同等の扱いになります。
いつ死亡したものとして扱われるのか
非常に重要なのが、「法律上、いつ死亡したことになるのか」という時期です。
・ 普通失踪: 7年の期間が満了した時
・ 危難失踪: その危難が去った時
申立てを行った日でも、審判が確定した日でもありません。「7年の失踪期間が経過した時点」で死亡したものとみなされます。
普通失踪と危難失踪で死亡とみなされる時期が違う
◉ 普通失踪 例えば、2015年4月1日に行方不明になった場合
7年満了日=2022年4月1日 実際に審判が確定したのが2024年であったとしても、法律上は「2022年4月1日に死亡した」として取り扱われます。
◉ 危難失踪 例えば、2020年3月1日の船舶沈没の場合
2020年3月1日(危難が去った時)に死亡したとみなされます。
その後、相続手続きが始まることになる
死亡とみなされる時期が決定すると、その日を起算点として相続が開始します。 法務省の資料等でも説明されている通り、失踪宣告の確定により法律上死亡とみなされ、被相続人(失踪者)の資産や負債をめぐる相続手続きへと進むことになります。
失踪宣告後に遺族年金は受け取れる? 年金について知っておきたいこと
ご家族が死亡とみなされた場合、「遺族年金」は受給できるのでしょうか。ここは非常に誤解が多く、注意が必要なテーマです。
「死亡したものとみなされる」なら遺族年金はどうなる?
結論から言うと、失踪宣告によって死亡とみなされた場合、公的年金制度においても原則として死亡したものとして扱われ、遺族年金の対象となり得ます。
ただし、「失踪宣告を受けさえすれば、必ず遺族年金が支給される」というわけではありません。
遺族基礎年金・遺族厚生年金の基本的な考え方
遺族年金(遺族基礎年金や遺族厚生年金)を受け取るためには、通常の死亡時と同様に、年金法上の各種要件を満たしている必要があります。
- 生計維持関係: 失踪者が死亡とみなされた当時、残された家族(配偶者や子など)が生計を維持されていたこと
- 保険料納付要件: 失踪者が行方不明になる前までに、一定の年金保険料を納めていたこと
- 対象者の範囲: 18歳到達年度末までの子がいる配偶者、または配偶者本人など(制度ごとに受給権者要件が異なります)
受給できるかどうかは年金制度上の要件を満たす必要がある
行方不明になる前の時点で保険料の未納期間が長かった場合や、死亡とみなされた時点で生計維持関係が認められない場合などは、失踪宣告が認められても遺族年金が支給されないケースがあります。
日本年金機構や年金事務所への事前確認・相談が不可欠です。
請求には期限・時効にも注意
年金給付を受ける権利には5年の消滅時効が存在します。 失踪宣告の場合、「いつ死亡とみなされるか」によって時効の計算が複雑になります。
普通失踪では「7年経過時」に遡って死亡とみなされるため、審判確定までに長い年月を要した場合、請求できる年金の一部が時効によって受け取れなくなるリスクも生じます。審判確定後は速やかに年金事務所で相談・手続きを行うことが大切です。
未支給年金など、遺族年金とは別の制度にも触れる
失踪者が受給中だった老齢年金などがある場合、死亡とみなされた月までの「未支給年金」の請求問題が発生することもあります。ご自身の状況に合わせて年金の専門家(社会保険労務士や年金事務所)へ確認することをおすすめします。
失踪者に多額の借金がある! 家族が代わりに払っていたらどうする?
行方不明になったご家族に借金(ローン、消費者金融、クレジットの未払いなど)があった場合、残されたご家族はどう対応すべきでしょうか。極めてお悩みの方が多い項目です。
失踪者本人の借金を家族が返済する義務はあるのか
まず大原則として、「親や配偶者であっても、他人の借金を支払う法律上の義務はない」という点を知っておきましょう。
家族が行方不明になったからといって、債務が自動的に親族へ移転することはありません。貸金業者やカード会社から請求が来ても、ご自身が契約者でない限り支払う必要はありません。
連帯保証人になっている場合はどうなる?
ただし例外があります。ご家族がその借金の「連帯保証人」や「保証人」になっている場合です。 この場合は、主債務者(行方不明者)が返済できなくなった以上、保証人としての固有の義務に基づき、返済を行わなければなりません。
失踪宣告によって借金そのものが消えるわけではない
「失踪宣告をすれば、本人の借金は帳消しになるのか?」という質問もよく受けます。 答えは「消えません」。
失踪宣告によって死亡とみなされた場合、その借金(負債)は「被相続人のマイナスの財産」として、相続人に引き継がれる(相続される)ことになります。
相続が発生すると、借金などのマイナス財産も問題になる
失踪宣告が確定すると相続が始まります。 相続とは、預貯金や不動産といった「プラスの財産」だけでなく、借金や買掛金といった「マイナスの財産」もすべて引き継ぐ手続きです。 何もしなければ、失踪宣告確定後に相続人がその借金を全額背負うことになってしまいます。
「今まで家族が払ってきたから、そのまま払い続ける」ことの注意点
行方不明者の借金を、ご家族が世間体があるからと、行方不明者の代わりに返済し続けているケースが見受けられます。
しかし、失踪宣告後も安易に返済を継続したり、本人の財産を勝手に処分したりすると、法律上「相続を承認した(単純承認)」とみなされ、後から相続放棄をすることができなくなるリスクがあります。
相続放棄を検討する場合には、返済や財産処分をする前に専門家へ相談
失踪者に多額の負債があることが判明している場合、最も有効な選択肢は「相続放棄」です。 本人の借金を代わりに払ってしまう前に、必ず専門家に今後の対応を相談してください。
【重要】 住宅ローンは事情が違う! 知っておくべき2つの重要ポイント
ここまで「無用な代位弁済は避けるべき」「相続放棄を検討すべき」とお話ししましたが、行方不明者名義の「住宅ローン」だけは全く別の配慮が必要になります。
これには大きく2つの理由があります。
① 家族が払い続けないと自宅に住み続けることができなくなる
消費者金融などの無担保ローンと異なり、住宅ローンには通常、自宅(土地・建物)に金融機関の「抵当権」が設定されています。 もし「本人の借金だから」とご家族が住宅ローンの返済を止めてしまうと、ローンが滞納状態となり、金融機関によって自宅が競売(けいばい)に出されて競売処分されてしまいます。
残されたご家族がその家に住み続けたいと望む場合は、失踪宣告が確定するまでの間、やむを得ず配偶者や家族が代わりに住宅ローンの返済を維持せざるを得ないという現実的な問題が生じます。
② 7年後に失踪宣告された後、住宅ローンと「団信」はどうなる?
住宅ローンを組む際、多くのケースで「団体信用生命保険(団信)」に加入しています。団信とは、ローン契約者が死亡した際に保険金でローン残高が相殺され、支払いが不要になる仕組みです。
行方不明者の場合、7年間の生死不明期間を経て失踪宣告が確定して初めて「法律上の死亡」と認められます。 審判確定後、確定証明書などを金融機関や保険会社へ提出して団信の保険金請求手続きを行うことで、残りの住宅ローンが免除(完済扱い)となります。
ただし、ここでも注意が必要です。
- 7年間の返済期間中: 団信は「死亡」が確認・決定されるまで適用されないため、その間は返済を継続する必要があります。
- 今まで払った分の返還: 失踪宣告は「7年間満了時」に遡って死亡とみなされますが、宣告確定前に支払った過去7年分のローン返済金が保険会社や銀行から返還されるかどうかは、加入している団信の約款や金融機関の取り扱いによって対応が分かれます(遡って返還されるケースと、支払済みの内訳までは返還されないケースがあります)。
住宅ローンが絡む場合は、「今の家に住み続けたいか」「団信の適用時期」「失踪宣告後の相続放棄との兼ね合い」など考慮すべき要素が複雑に絡み合います。返済を止める・続けるの判断を下す前に、必ず専門家や金融機関へ相談することをおすすめします。
相続放棄をしたら、親族に借金の請求がいく? その後どう対応する?
失踪宣告に伴い相続が発生し、負債を引き継がないために相続放棄を行う場合、次にどのような問題が生じるのでしょうか。
失踪宣告の審判が確定すると、死亡とみなされた日を基準に相続が開始されます。
相続人が相続放棄をする場合
相続人は、自分が相続人になったこと(および失踪宣告の確定等)を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ「相続放棄の申述」を行うことで、最初から相続人ではなかったこと(負債を引き継がない)にできます。
相続放棄をすると次順位の相続人が問題になるケース
ここで注意しなければならないのが、民法が定める「相続人の順位」です。
第1順位: 子(または孫などの代襲相続人)
第2順位: 直系尊属(親、祖父母など)
第3順位: 兄弟姉妹(または甥・姪)
※ 配偶者は常に同順位で相続人となります。
配偶者や第1順位の子全員が相続放棄をすると、相続権は第2順位の親や、第3順位の兄弟姉妹へと自動的に移転します。
「自分が放棄したから全部終わり」ではない場合がある
ご自身(例えば配偶者や子ども)が相続放棄をして「これで安心」と思っていても、何も知らされていない失踪者の兄弟姉妹や両親のもとへ、ある日突然債権者から督促状が届くというトラブルが発生しています。
親・兄弟姉妹など、次の相続人への連絡をどうするか
トラブルを防ぐためには、ご自身が相続放棄の手続きを終えた段階で、次順位となる親族(兄弟姉妹など)へ「失踪宣告により相続が始まり、自分たちは相続放棄をしたので、次はそちらに相続権がいきます」と事実を丁寧に連絡・共有しておくことが非常に重要です。
債権者から連絡が来た場合の対応
次順位の親族の方も、事情を知り届出を行えば同様に相続放棄が可能です。債権者から連絡が来た場合でも慌てず、「失踪宣告があり相続放棄手続きを進めている」旨を伝え、家庭裁判所で放棄の手続きをとる必要があります。
相続放棄には期間があること
前述の通り、相続放棄は原則として「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行わなければなりません。失踪宣告の場合は手続きが複雑になりがちですので、早めの対応が肝心です。
家族間で早めに情報共有する重要性
親族間で日頃から連絡を取り合い、失踪宣告を申立てる段階から今後の相続放棄の方針について共有しておくことで、親族間の無用な摩擦やトラブルを回避できます。
失踪宣告をすると離婚できる? 残された配偶者はどうなる?
行方不明者の配偶者(夫・妻)にとって、身分関係がどうなるのかは切実な問題です。「失踪宣告をすれば離婚したことになるのか?」という質問について解説します。
失踪宣告によって婚姻関係はどうなる?
失踪宣告が確定し、配偶者が「死亡したもの」とみなされると、婚姻関係は死亡によって終了(解消)します。
配偶者は再婚できるのか
死亡によって婚姻関係が終了するため、残された配偶者は法的に再婚することが可能になります。
「離婚」と「失踪宣告」は同じではない
ここで混同してはならないのが、「失踪宣告による婚姻終了」と「裁判離婚」は全く別物であるという点です。
- 失踪宣告: 配偶者が「死亡」した扱いになり、婚姻関係が終了する。配偶者は「遺族(未亡人・寡夫)」となる。
- 離婚: 生きている配偶者と法律上の夫婦関係を解消する。配偶者は「離婚経験者」となる。
行方不明の配偶者と関係を絶ちたい場合、失踪宣告を受ける以外にも、「悪意の遺棄」や「3年以上の生死不明」を理由として裁判による離婚(離婚訴訟)を選択する方法もあります。
失踪宣告後に婚姻関係をどう整理するのか
失踪宣告を選ぶのか、それとも裁判離婚を選ぶのかは、以下のような点で判断が分かれます。
- 義理の親族(義父母等)との関係を切りたい場合: 離婚の手続き、または死亡後の「姻族関係終了届」の提出
- 失踪者の財産を相続したい場合: 失踪宣告(離婚してしまうと相続権が失われます)
- 年金等の受給権を得たい場合: 失踪宣告
本人が後から現れた場合には何が問題になるのか
仮に失踪宣告が確定し、残された配偶者が再婚した後に、行方不明だった本人がひょっこり生きて戻ってきた場合、再婚の効力はどうなるのでしょうか。
判例・通説上、後婚(再婚)を行った当事者双方が「本人が死亡した」と善意(知らなかった)で信じて再婚した場合、前婚は復活せず、再婚の効力が維持されるとされています。
もし失踪した本人が生きていたことが分かったら?
記事の後半として、失踪宣告後に「生きていることが判明した場合」の法律上の取扱いについて解説します。
失踪宣告後に本人が帰ってきたら?
失踪宣告はあくまで「生死不明の状態が続いているため、法律上死亡したとみなす」制度です。 そのため、本人が生存していることが確認された場合、当然ながら生存という事実が最優先されます。
失踪宣告はどうなる?
生存が確認されただけでは、自動的に裁判所の審判が消えるわけではありません。 手続きとして「失踪宣告の取消し」を行う必要があります。
家庭裁判所に失踪宣告の取消しを申し立てる
民法第32条に基づき、本人または利害関係人は、家庭裁判所に対して「失踪宣告取消しの審判」を申し立てます。 生存の事実が証明されれば、裁判所は失踪宣告を取り消さなければなりません。これにより、失踪宣告は遡ってその効力を失います。
既に相続した財産はどうなる?
ここで大きな問題となるのが、「失踪宣告によって既に親族が相続し、消費したり売却したりした財産はどうなるのか」という点です。
民法第32条第2項では、以下のように定められています。
「失踪宣告によって権利を得た者は、その消滅によって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、これを返還する義務を負う。」
すでに売却した不動産などはどうなる?
相続人が失踪者の財産(現金や預貯金)を受け取っていた場合、現存利益(いま残っている範囲)だけを本人に返せばよいとされています。生活費や医療費などで使ってしまった分まで、自腹で穴埋めして返す必要はありません。(善意の場合)
善意で行われた行為についての特則
また、失踪宣告が確定してから取消されるまでの間に、両当事者が「本人が生きていることを知らずに(善意で)」行なった行為(不動産の売買契約や賃貸借契約など)は、取消しによって影響を受けず、有効なまま維持されます。 これにより、取引を行った第三者の安全が守られています。
「本人が生きていたのですべて元通り」ではない
このように、本人が生きて戻ってきたからといって、過去数年〜数十年分の法律関係が完全に白紙に戻るわけではありません。社会の混乱を防ぐための細かな法律上の特則が用意されています。
失踪宣告を検討するときに知っておきたいこと&行政書士に相談できること
最後に、長年ご家族の失踪に悩まれている皆様へ、今後の進め方と専門家の活用方法をご案内いたします。
失踪宣告は家族にとって大きな決断
家族の失踪宣告を申し立てることは、感情的にも「家族の死を受け入れる」ような辛い決断を伴います。 しかし、残されたご家族が今後の人生を歩み、遺された財産や生活を健全に守っていくためには、避けて通れない手続きでもあります。
戸籍・相続・財産関係を事前に整理する
申立てを検討する際には、いきなり裁判所に駆け込むのではなく、まずは以下の整理から始めましょう。
・ 行方不明になった時期・経緯の整理
・ 警察への届出状況の確認
・ 行方不明者名義の資産(不動産、預貯金、株式等)の洗い出し
・ 行方不明者名義の負債(借金、ローン等)の有無の確認
・ 推定相続人となる親族の把握
失踪者の財産や借金を把握する
特に借金があるかどうかの調査や、不動産の権利関係の確認は、後の相続放棄や遺産分割に直結するため非常に重要です。
相続放棄をする可能性があるなら早めに専門家へ
負債が多い可能性がある場合や、他の親族との調整が必要な場合は、自己判断で動く前に必ず専門家へご相談ください。
各専門家の役割と使い分け
手続きを進めるにあたっては、相談内容に応じて適切な専門家(連携ネットワーク)を活用することがスムーズな解決への近道です。
- 行政書士: 事前の戸籍・住民票の収集・調査、相続人関係図の作成、財産目録の作成、失踪宣告申立前の状況整理・相談窓口
- 司法書士・弁護士: 家庭裁判所への「失踪宣告申立書」や「相続放棄申述書」の作成・代理提出、裁判所とのやり取り
- 社会保険労務士・年金事務所: 遺族年金や未支給年金の給付要件の確認および受給請求手続き
行政書士ができる「書類収集・戸籍調査・相続関係の整理」
行政書士は「街の専門家」として、複雑な戸籍謄本の収集(生まれた年から現在までのすべての戸籍の追跡)や、失踪者をめぐる相続関係図の作成、財産の調査・整理を得意としています。
「何から手を付ければいいのか分からない」 「自分が利害関係人に該当するのか確認したい」 「戸籍を集めるだけで途方に暮れている」
そのような段階で、まずはお気軽にご相談いただけます。当事務所では、ご相談者様の状況を丁寧にお伺いし、最適な解決への道筋をご提案するとともに、必要に応じて提携する司法書士や弁護士、税理士等の専門家とも連携してサポートいたします。
ご家族の行方不明でお悩みの方は、一人で抱え込まず、ぜひ一度ご相談ください。
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札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成、その他公正証書等に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
※ なお、紛争の解決についてはうけたまわれません。
【お問い合わせ先】 つしま行政書士事務所
- 所在地:札幌市東区
- 対応エリア:札幌市内および近郊エリア(出張相談も承ります)
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初回60分相談料無料

☎ 011-788-3883
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