今回はお一人様には極めて重要な死後事務委任契約についてお話させていただきます。
掲げたタイトルを見て、「おっ?」と思われた方も多いのではないでしょうか。
「死んだ後のことなんて、今から考えたくもない!」
まさにその通りだと思います。人間、誰しも自分がこの世からいなくなる瞬間のことや、その後に残された冷たい現実について、進んで考えたいわけがありません。今が元気であればあるほど、そんな後ろ向きな話には蓋をして、美味しいものを食べたり、趣味を楽しんだりして生きていたいのが本音ですよね。
しかし、あえて私は行政書士の立場として、そして同じ札幌に生きる一人の人間として、声を大にしてお伝えしたいのです。
考えたくないからこそ、元気なうちに仕組みだけ作って、あとは忘れてしまいましょう!
特に、結婚をせず、あるいはパートナーや頼れるご家族が近くにいない「お一人様」にとって、あなたが亡くなった「直後」に押し寄せる膨大な事務手続きは、誰も自動的には処理してくれません。それを解決する決定打となるのが、今回ご紹介する「死後事務委任契約」です。
この記事では、日本の、そしてこの札幌が直面している最新のリアルな統計データを交えながら、「なぜ今、お一人様にとってこの契約が絶対に必要なのか」を、よりも分かりやすく丁寧に解説します。
最後までお読みいただければ、モヤモヤしていた将来の不安がすっきりと解消し、「よし、これで安心して今を楽しめるぞ!」と思えるはずです。どうぞリラックスして読み進めてください。
【公式データが語る現実】 お一人様の急増と超高齢化のリアル
「お一人様で生きる」ということは、現代の日本、そして札幌において、決して珍しいことでも特別なことでもありません。まずは、私たちが生きる社会の現実を、客観的な公式データから見つめてみましょう。
国立社会保障・人口問題研究所などの最新データ(2026年時点の推計含む)によると、日本の生涯未婚率(50歳時未婚率)は驚くべきスピードで上昇しています。
1980年時点では、男性が2.6%、女性が4.5%と、「一生結婚しない人生」は極めて稀なケースでした。しかし、直近の国勢調査および最新の将来推計によると、男性の約28%、女性の約18%が50歳時点で未婚となっています。
さらに、2050年に向けてこの数字は上昇を続けると予測されており、「結婚をして、子どもを育て、老後は子どもや孫に看取られる」という、かつての「標準的な人生のモデル」は、すでに過去のものになりつつあります。
国立社会保障・人口問題研究所 性別50歳時の未婚割合,有配偶割合
内閣府の高齢社会白書や厚生労働省の将来推計によると、すべての世帯に占める「一人暮らし(単独世帯)」の割合は、2040〜2050年にかけて全国的に約40%に達すると見込まれています。
特に深刻なのが、65歳以上の「単身高齢者」の激増です。国立社会保障・人口問題研究所が発表した地域別推計によると、2050年には実に32の道府県で、「高齢者全体の5人に1人以上(20%超)が一人暮らし」という状態になります。 さらに、これらの一人暮らし高齢者に占める「未婚者」の割合が急上昇しています。2020年時点では単身高齢男性の未婚率は約34%でしたが、2050年には60%に達すると予測されています。女性も同様に、12%から30%へと急増します。
【ここがポイント】
「配偶者がいない」だけでなく、「子どももいない」お一人様高齢者が、これからの社会の圧倒的な多数派になっていくのです。
ここ札幌は、全国の政令指定都市の中でも高齢化のスピードが速く、単身世帯の割合が非常に高い街です。若い頃に就職や進学で札幌に集まり、そのまま定年を迎えてお一人様になった方や、配偶者と死別・離別された方が数多く暮らしています。
さらに北海道特有の事情として、「厳しい冬の生活環境」があります。大雪に見舞われる冬場、体調を崩しても周囲が気づきにくい、いわゆる「社会的孤立」のリスクは首都圏以上に高いと言わざるを得ません。
こうしたデータが示しているのは、「国や自治体の福祉だけでは、あなたが亡くなった後の細かい手続きまでカバーすることは絶対にできない」という、冷徹な事実なのです。
なぜ「死んだ後のこと」が問題になるのか?
「自分が死んだ後のことなんて、自分には分からないし、どうせ意識もないんだから関係ないじゃないか」
そう思われる気持ちは、実によく分かります。確かに、あなた自身はその苦労を味わいません。しかし、現実問題として、人間一人がこの世から旅立つと、そこには「膨大な物質と契約の残骸」が遺されます。
もし、頼れる親族が誰もいない状態であなたが亡くなった場合、一体どのような事態が起きるでしょうか。いくつかの具体的な場面を想像してみましょう。
場面1 病院や施設での遺体の引き取り
あなたが病院や介護施設で亡くなった場合、医師による死亡診断が行われます。その後、病院や施設は速やかに「遺体を引き取ってくれる人」を探します。
しかし、身寄りのないお一人様の場合、引き取り手が誰もいません。法律上、数日間は保管されますが、最終的には自治体(札幌市など)が引き取ることになります。この場合、いわゆる「無縁仏」として、最低限の火葬のみが行われ、合葬墓(共同の墓)に納骨されることになります。
「それで構わない」という方もいるかもしれませんが、お骨の扱いを指定したり、自分の希望する形で葬儀を上げたりすることは一切できなくなります。
場面2 賃貸マンション・アパートの残置物処理
お一人様の比較的多くの方は、札幌市内の賃貸マンションやアパート、あるいは高齢者向け住宅(サ高住)などで暮らしています。(もちろん、一戸建てや分譲マンションというケースもあります。)
あなたが亡くなった後、その部屋に残されたテレビ、冷蔵庫、ベッド、衣類、思い出の品々はどうなるでしょうか。これらは「残置物」と呼ばれます。
大家さんや管理会社は、部屋を次の人に貸したいのですが、店借人が亡くなったからといって、勝手に荷物を処分することは法律(民法)上、厳しく制限されています。親族を探し出し、相続人全員の同意を得るか、法的な手続きを踏まなければ部屋を片付けられません。この間、大家さんは家賃収入が得られず、多大な迷惑を被ることになります。最悪の場合、保証人や遺留品を巡って法的なトラブルに発展します。
場面3 電気・ガス・水道やスマホの解約
私たちが日常的に使っているライフラインやスマートフォン、インターネット回線。これらはすべて「あなたと企業との間の契約」です。
契約者が死亡したからといって、自動的に解約されるわけではありません。死亡届が出されても、民間企業は遺族や関係者からの連絡がなければ契約を維持し続け、口座凍結によって引き落としができなくなるまで料金が発生し続けます。
また、近年特に問題になっているのが「デジタル遺品」です。パソコンやスマホのパスロックが解除できず、サブスクリプション(月額課金サービス)の契約が解約されないまま放置されるケースが多発しています。
場面4 ペットの行く末
もし、あなたが生涯のパートナーとして犬や猫などのペットを飼っていたら、あなたが突然倒れて亡くなった後、その子たちはどうなるでしょうか。
気づかれるのが遅れればペットの命に関わりますし、保護されたとしても、引き取り手がいなければ保健所に持ち込まれるリスクがあります。自分が可愛がっていた家族同然のペットが、自分の死によって不幸になることだけは、絶対に避けたいはずです。
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「遺言書」では解決できない? 死後事務委任契約との決定的な違い
終活といえば遺言書でしょう? 遺言書を書いておけば、死んだ後のことは全部解決するんじゃないの?
これも非常に多い誤解です。実は、遺言書だけでは、先ほど挙げたような「死んだ直後のバタバタ」を解決することはできません。
法律上、遺言書と死後事務委任契約は、まったく役割が異なる「別物」なのです。その違いを表にまとめましたので、まずは視覚的に確認してみましょう。
| 項 目 | 遺 言 書 | 死後事務委任契約 |
| 主な目的 | 「財産」の分け方を決める(誰に何をあげ るか) | 「行為(事務)」を代行してもらう (手続きの処理) |
| 効力の発生 | 死亡した瞬間 | 死亡した瞬間(生前から準備可能) |
| 法的な性質 | 単独行為(本人の意思表示のみで成立) | 契約(本人と引き受け手の合意で成立) |
| 主な内容 | ・不動産や預貯金の相続、遺贈 ・認知、遺言執行者の指定 など | ・遺体の引き取り、火葬、葬儀、納骨 ・賃貸契約の解除、荷物の片付け ・ライフライン、スマホの解約手続き など |
| できないこと | 「葬儀をこうして欲しい」「部屋を片付けて 欲しい」という法的な強制力は持たせられ ない。 | 財産の処分方法を法的に指定すること はできない。 |
遺言書に「私の葬儀はこぢんまりと執り行い、札幌の〇〇霊園に納骨してほしい」と書くことは可能です。これを「付言事項」といいます。
しかし、付言事項には法的な強制力がありません。また、一般的な手続きの流れとして、遺言書が発見され、家庭裁判所で検認を受けたり、内容が確認されたりするのは、葬儀や火葬がすべて終わった後になることがほとんどです。
つまり、あなたが亡くなったその日、その週に動かなければならない「遺体の引き取り」や「葬儀の手配」において、遺言書は何の役にも立たないのです。
そこで登場するのが「死後事務委任契約」です。
この契約は、あなたが元気なうちに、「私が死んだら、この人にこれらすべての事務手続きを委任します。実費と報酬は、私の遺産から支払ってください」という約束を、第三者(行政書士などの専門家)と結んでおくものです。
これによって、あなたが亡くなったという連絡が入った瞬間から、受任者(契約を引き受けた専門家)が「あなたの代理人」として、合法的にすべての手続きをハイスピードで進めることが可能になります。
死後事務委任契約で委任できる 「具体的な6つの業務」
では、具体的に死後事務委任契約を結ぶと、専門家はどのようなことを代行してくれるのでしょうか。主な業務は以下の6つに分類されます。
あなたが最期を迎えた病院や介護施設に対して、未払いの入院費や月額利用料を精算します。また、部屋に残された私物(衣類やテレビなど)を片付け、施設の退去手続きを完了させます。
死亡届の提出などの行政手続きを代行し、火葬許可証を取得します。事前に契約で決めておいた通りの規模・内容(直葬、家族葬、一日葬など)で葬儀社を手配し、火葬を執り行います。札幌市内の火葬場(里塚斎場や山口斎場など)への手配もスムーズに行われます。
「先祖代々のお墓に入りたい」「札幌の合同供養塔に納骨してほしい」「海に散骨してほしい」など、あなたの希望に沿った形で納骨手続きを行います。身寄りがない場合でも、お骨が迷子になることはありません。
アパートやマンションの大家さん・管理会社に対して賃貸借契約の解除通知を送り、専門の遺品整理業者を手配して部屋の中を完全に空にします(原状回復)。最後に敷金の精算等を行います。
電気、ガス、水道、固定電話などの解約手続きを速やかに行います。また、スマートフォンやインターネットプロバイダの解約、クレジットカードの解約・未決済金の精算、不要になった会員登録やサブスクリプションの解約・退会手続きも一括して引き受けます。
年金事務所への死亡届および年金受給権者死亡届の提出、健康保険証や介護保険証の返納など、期限のある役所関係の手続きを漏れなく執行します。
このように、一人の人間が亡くなった後に発生する「生活の店じまい」を、あなたの代わりにすべてパーフェクトに行うのが、死後事務委任契約の全貌です。
行政書士が教える、手続きの具体的な流れと安心の仕組み
「よし、死後事務委任契約の重要性は分かった。でも、実際にどうやって進めるの? 預けたお金が騙し取られたりしない?」
そんな不安を解消するために、私がお勧めしている標準的な手続きの流れと、安全性を担保するための法的仕組みをステップを追って解説します。
現在の健康状態、親族関係(疎遠な親戚の有無など)、将来どのような最期を望まれるか(葬儀の規模、お墓の希望など)をヒアリングします。札幌市内であれば、ご自宅やご指定のカフェ、当事務所へのご来所など、柔軟に対応いたします。
ご希望の葬儀内容、部屋の広さ(遺品整理の規模)、解約すべき契約の数などを元に、将来必要となる「実費(葬儀代、火葬代、遺品整理代など)」と、行政書士への「執行報酬」の概算見積もりを作成します。
死後事務委任契約は、口約束や普通の紙に書いた書面ではなく、「公正証書」として作成することを強くお勧めします。公証役場にて公証人が作成するため、将来「本人の意思ではなかったのではないか」といった身内からのクレームや、法的な効力の疑いを完全に排除できます。
契約を結んで終わりではありません。半年に1回、あるいは数ヶ月に1回、定期的にお電話や面談で「お変わりありませんか?」と連絡を取り合います。これにより、体調の変化や急な入院の際にも迅速に対応できる体制を整えます。
病院や施設から当事務所に連絡が入った瞬間から、契約の効力がフル稼働します。ご遺体の引き取りから葬儀、火葬、部屋の片付け、各種解約まで、公正証書に記された通りの事務を私たちがあなたの「手足」となって速やかに執行します。
すべての事務が完了した後、かかった費用の領収書一式をまとめ、相続人がいる場合は相続人へ、いない場合はあらかじめ指定された寄付先(自治体や各種団体など)へ、残った財産の引き渡しを行い、すべての業務が完了します。
死後事務委任契約の際、将来の葬儀代や遺品整理代、専門家への報酬に充てるためのお金をどう確保するかが課題となります。これを「予納金」といいます。
「まとまったお金を専門家に生前から預けるのは、持ち逃げされたり倒産したりしたら怖くて眠れない…」
当然の懸念です。そのため、以下のような安全な資金管理の手法があります。
① 信託(しんたく)口座の利用
銀行の「遺言代用信託」などを利用し、お金を銀行に信託しておきます。あなたが亡くなった時に、行政書士が「死亡診断書」と「死後事務委任契約書」を銀行に提示することで、葬儀費用等として直接引き出せる仕組みです。これなら、生前に私たちが直接大金を預かるわけではないため、非常に安全です。
② 遺言書による遺言執行費用の指定
死後事務委任契約と同時に「遺言書」を作成し、「私の遺産の中から、死後事務に必要な費用〇〇万円を遺言執行者(行政書士)に支払う」と明確に規定しておきます。預貯金口座は死亡時に一時凍結されますが、遺言執行者としての権限を使うことで、凍結された口座から法的に正当な費用を払い戻すことが可能です。
このように、法律と金融の仕組みを組み合わせることで、あなたの大切な財産は100%安全に守られますので、どうぞご安心ください。
死後事務委任契約に関するよくあるQ&A
お一人様が疑問に思われるポイントをQ&A形式でまとめました。
まとめ ~ 「死んだ後のことなんて考えたくない!」だからこその終活
冒頭の言葉に戻りましょう。
死んだ後のことなんて、考えたくない!
それでいいのです。その感情は、あなたが「今を一生懸命に生きている証拠」です。
ただ、私たちが生きるこの現代日本、そしてここ札幌は、公式データが冷酷に示している通り、「誰かが勝手にあなたの後始末をしてくれる時代」ではもうありません。何も準備をせずにその時を迎えてしまうと、あなたの愛した部屋や、大切にしていた品々が「ゴミ」として機械的に処分され、大家さんや地域の役所に多大な負担をかけ、最悪の場合は望まない形で無縁仏になってしまうリスクがあります。
終活とは、決して「死に支度」ではありません。
「死後事務委任契約」という名の最強の保険を1本、元気なうちにカチッと契約しておく。
そうすることで、あなたの後ろ髪を引く将来の不安はすべて消滅します。
「自分の最期は、あの行政書士が完璧にプロとして片付けてくれる。お金の手配も済んだ。大家さんにも、親戚にも、誰にも迷惑はかからない。お墓の場所もバッチリ決まっている!」
この圧倒的な安心感を手に入れて初めて、人間は「今、この瞬間」を100%の笑顔で、全力で楽しめるようになります。美味しいスープカレーを食べに行ったり、大通公園を散歩したり、趣味に没頭したりする時間を、不安のノイズなしに満喫できるのです。
「考えたくないな」と思っている今こそが、実は最高のタイミングです。
判断能力がしっかりしている今、重い腰を少しだけ上げて、仕組み作りをはじめませんか?
まずは「ちょっと話を聞いてみたいんだけど」という軽い気持ちで、お気軽にお問い合わせください。あなたのこれからの人生が、より一層輝かしいものになるよう、私たちが全力でサポートいたします。
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札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
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