【生命保険で相続税を節税できる?】知っておきたい「500万円×法定相続人」の仕組みについて 《札幌の行政書士が解説》

ご自身の万が一の備えや、家族を守るために加入する生命保険。実は、病気や事故への備えだけでなく、「相続税の節税対策」としても一定の役割を果たすことをご存じでしょうか。

「生命保険に入っていると相続税が安くなるらしい」

「現金で置いておくよりも、保険にしたほうが得って本当?」

このようなお話を聞いたことがある方も多いかもしれません。

では、なぜ「1,000万円の現金をそのまま残す」のと「1,000万円の死亡保険金を残す」のとでは、相続税の扱いに違いが生まれるのでしょうか?どちらも「家族に残るお金が1,000万円」であることには変わりないように思えます。

この記事では、生命保険の死亡保険金にかかる非課税枠の仕組みを中心に、現金と生命保険の違い、税金の種類が変わる注意点、遺産分割での扱いまで、札幌の行政書士が分かりやすく徹底解説していきます。

将来の相続に向けて準備を始めたい方、ご家族にスムーズにお金を残したい方は、少し長くなりますが、ぜひ最後までお読みください。

目次

「生命保険に入っていると相続税が安くなる」って本当?

「生命保険に入ると相続税の節税になる」といわれるのは事実です。ただし、どのような場合でも無条件に節税になるというわけではありません。

まずは、なぜ現金と生命保険で相続税の扱いに違いがあるのか、その基本から確認していきましょう。

生命保険金は原則として「みなし相続財産」として扱われる

亡くなった方(被相続人)が所有していた預貯金や不動産、株式などは、本来の「相続財産」として相続税の課税対象になります。

一方、生命保険の死亡保険金は、亡くなったことによって保険会社から「受取人」に対して直接支払われるお金です。民法上の考え方では、死亡保険金は「亡くなった人の財産」ではなく「受取人固有の財産」となります。

しかし、税務上(相続税法上)は「被相続人の死亡をきっかけに発生した財産であり、実質的には相続財産と同じようなもの」として捉えます。これを「みなし相続財産」と呼び、相続税の計算対象に含めるルールになっています。

預貯金と生命保険金では相続税上の扱いに違いがある

「みなし相続財産なら、結局預貯金と同じように税金がかかるのでは?」と思われるかもしれません。

ここが最大のポイントです。国は「一家の大黒柱を失ったご遺族の生活保障」という生命保険の本来の目的を考慮して、生命保険の死亡保険金だけに特別な「税金の割引(非課税枠)」を用意しています。

① 現金・預貯金

残った金額の「全額」が相続税の対象

② 死亡保険金

一定の金額まで「非課税(非課税枠)」となり、超えた分だけが相続税の対象

この非課税枠が存在するため、同じ「1,000万円」を残す場合でも、現金で持っているより生命保険として受け取るほうが、課税対象となる財産を減らすことができるのです。

「生命保険なら無条件に節税」というわけではない

注意しておきたいのは、「保険に入りさえすれば誰でも必ず節税できる」わけではないという点です。

例えば、もともと所有している財産全体の金額が「基礎控除額」を下回っている場合、そもそも相続税は1円もかかりません。その場合は、生命保険を活用したからといって「節税」というメリットが生まれるわけではありません。

また、契約の仕方(誰が保険料を払っていたか)によっては、相続税ではなく「所得税」や「贈与税」がかかってしまうケースもあります。

相続税対策として生命保険が注目される理由

それでも生命保険が相続対策として絶大な人気を誇るのには、主に3つの大きな理由があります。

  • 非課税枠(500万円×法定相続人)を使って課税対象額を直接減らせる
  • 遺産分割協議を行わずに、指定した受取人がすぐに現金を受け取れる
  • 葬儀費用や当面の生活費、あるいは他の相続人への代償金など使い勝手の良い現金を確保できる

    単に「税金を安くする」だけでなく、「残された家族が困らないようにスムーズにお金を渡す」という実務面でのメリットが非常に大きいからこそ、生命保険は相続対策の王道とされているのです。

    生命保険の死亡保険金には「500万円×法定相続人」の非課税枠がある

    それでは、この記事の最も中心となる「非課税枠(非課税限度額)」の計算ルールについて詳しく解説します。

    相続人が受け取る死亡保険金には非課税限度額がある

    亡くなった方の死亡によって受け取る死亡保険金には、一定の金額まで相続税をかけないという「非課税限度額」が定められています。

    計算式は非常にシンプルです。

    生命保険金の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数

    この計算式で算出された金額までは、どれだけ保険金を受け取っても相続税の計算上「ゼロ」として扱われます。

    具体的な計算方法

    例を挙げて計算してみます。

    ① 配偶者と子ども2人の合計3人が相続人の場合

    ・ 計算式: 500万円 × 3人 = 1,500万円

    ※ この場合、受け取った死亡保険金のうち1,500万円までが非課税となります。

    ② 配偶者のみ(相続人が1人)の場合

    ・ 計算式:500万円 × 1人 = 500万円

    ③ 子ども4人(相続人が4人)の場合

    ・ 計算式:500万円 × 4人 = 2,000万円

    このように、「法定相続人が何人いるか」によって、非課税で受け取れる上限額が決まります。

    非課税になるのは「死亡保険金全額」ではなく、限度額まで

    間違えやすいポイントですが、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があるからといって、受け取った保険金がいくらであっても全額非課税になるわけではありません。

    あくまで「限度額までが非課税」です。

    たとえば、法定相続人が3人(非課税枠1,500万円)の家庭で、死亡保険金を「2,000万円」受け取ったとします。

    ・ 受け取った保険金: 2,000万円

    ・ 非課税限度額: 1,500万円(500万円×3人)

    ・ 課税対象となる金額: 2,000万円 - 1,500万円 = 500万円

    この場合、非課税枠を超えた「500万円」の部分だけが、他の預貯金や不動産などの財産と合算されて相続税の計算対象となります。全額に税金がかかるわけではないため、非常に大きな優遇措置であることがお分かりいただけると思います。

    具体例でわかる! 現金1,500万円と生命保険1,500万円では何が違う?

    「非課税枠の計算方法は分かったけれど、実際の相続税の計算でどれくらい差が出るの?」という疑問をお持ちの方のために、具体例と比較を使って見ていきましょう。

    被相続人が1,500万円の財産を持っていたケース

    ここでは、次のようなご家庭を例に考えてみます。

    ・ 家族構成: 夫(被相続人)、妻、子ども2人(法定相続人は計3人)

    ・ 残す財産: 土地・家屋 4,800万円 その他1,500万円

    ※ 土地・家屋は相続税の非課税枠(3,000万円+600万円✕法定相続人の数)により非課税となります。

    その他1,500万円を「現金・預金」で残した場合と、「生命保険金」で残した場合の違いを比べます。

    【パターンA】 現金・預金として1,500万円を残した場合

    ・ 相続財産として評価される金額: 1,500万円

    ・ 評価額の控除: なし(0円)

    ・ 課税対象となる金額: 1,500万円

    現金や銀行預金は、その額面通りの金額がそのまま「相続財産」としてカウントされます。1,500万円は全て、相続税の課税対象になります。

    【パターンB】死亡保険金として1,500万円を残した場合

    ・ 受け取った死亡保険金: 1,500万円

    ・ 非課税限度額: 500万円 × 3人 = 1,500万円

    ・ 課税対象となる金額: 1,500万円 - 1,500万円 = 0円

    生命保険金として残した場合、非課税枠1,500万円をそのまま差し引くことができるため、課税対象額を「0円」にすることができます。

    「どちらが必ず得」とは限らないこともあります

    ここまでの説明を聞くと「じゃあ手持ちの現金を全部保険に変えればいいんだ!」と思われるかもしれませんが、少し立ち止まる必要があります。

    • 全財産集めても非課税枠(3,000万円+600万円✕法定相続人の数)に収まってしまう場合
    • 生命保険は途中で解約すると元本割れするリスクがある
    • 生命保険は高齢で加入すると払い込む保険料のほうが高くなる場合がある
    • 相続発生時にすぐ使える手元現金(葬儀費用など)が減ってしまう

    といった注意点が存在します。「何でも保険にすれば必ず得をする」というわけではないため、ご自身の年齢や資産のバランスを総合的に見極めることが大切です。

    そもそも「法定相続人の数」はどうやって決まる?

    非課税枠の計算式「500万円×法定相続人の数」に出てくる「法定相続人」ですが、実は読者の方が一番間違えやすいポイントでもあります。

    誰が法定相続人になるのか、どのようなルールで人数をカウントするのかを正確に把握しておきましょう。

    基本的な法定相続人の範囲

    民法で定められている法定相続人の優先順位は以下の通りです。

    • 配偶者: 常に必ず法定相続人になります(内縁関係は含まれません)。
    • 第1順位(子ども): 子どもがいる場合、配偶者とともに相続人になります。
    • 第2順位(直系尊属): 子どもがいない場合、亡くなった方の父母や祖父母が相続人になります。
    • 第3順位(兄弟姉妹): 子どもも父母等もいない場合、亡くなった方の兄弟姉妹(おい・めい)が相続人になります。

    子が先に亡くなっている場合の「代襲相続」

    もし、被相続人が亡くなる前に子どもが既に亡くなっていた場合、その子ども(被相続人から見た孫)が代わりに相続人となります。これを「代襲相続」と呼びます。

    この場合、代わりに相続人となった孫の人数も「法定相続人の数」にカウントされます。

    相続放棄をした人がいる場合はどうなる?

    家族の中に相続放棄をした人がいる場合、法定相続人の数から外れて非課税枠が減ってしまうのか?

    答えは、「相続放棄があっても、法定相続人の数(人数)は減らない」です。

    相続税法上のルールでは、民法上の相続放棄があったとしても、「相続放棄がなかったものとした場合の法定相続人の数」で非課税枠を計算します。

    妻と子ども2人(計3人)で、長男が相続放棄をした場合

    ・ 民法上の相続人:妻、次男の2人

    ・ 非課税枠の計算に使う人数:3人のまま(500万円×3人=1,500万円)

    ただし、相続放棄をした人が保険金を受け取った場合は、非課税枠を適用することはできません(放棄をした人は「相続人」ではなくなるため)。非課税枠を使えるのは、実際に相続人となった人に限られる点に注意が必要です。

    養子がいる場合の注意点(人数の制限)

    実子だけでなく「養子」がいる場合も法定相続人の数に含めることができますが、節税目的で無限に養子を増やすのを防ぐため、カウントできる人数に上限が設けられています。

    ・ 実子(実の子ども)がいる場合: 養子は「1人まで」カウント可能

    ・ 実子(実の子ども)がいない場合: 養子は「2人まで」カウント可能

    ※ 連れ子を養子にした場合や、特別養子縁組などの場合は例外的に制限なく実子扱いとなるケースもあります。

    このように、「実際に誰がどれだけ相続するか」と「税金の計算上で法定相続人の数を何人とするか」はルールが異なりますので、注意が必要です。

    誰が保険料を払い、誰が保険金を受け取るかで税金が変わる!

    生命保険の活用において、絶対に知っておかなければならない重要なポイントがあります。

    それが、「契約者(支払人)」「被保険者(対象者)」「受取人」の組み合わせによって、課税される税金の種類が変わるというルールです。

    生命保険に入っていれば、どんな形でも全部「相続税」の対象になって非課税枠が使えると誤解されている方が多いのですが、間違った契約形態にしていると、非課税枠が使えないばかりか贈与税などがかかってしまうおそれがあります。

    契約形態と税金の種類(一覧)

    主要な3つのパターンを整理します。

    パターン契約者
    (保険料負担者)
    被保険者
    (亡くなった人)
    保険金受取人課税される
    税金
    500万円×人数
    の非課税枠
    相続税夫(父)夫(父)妻 または 子相続税利用できる(〇)
    所得税妻 または 子夫(父)妻 または 子所得税・住民税利用できない(×)
    贈与税夫(父)妻(母)子贈与税利用できない(×)

    【相続税がかかるケース】(今回のメイン)

    • 契約者: 夫 / 被保険者:夫 / 受取人:妻や子
    • 解説: 自分で自分に保険をかけ、亡くなった時に家族にお金が入る仕組みです。「被相続人の財産によって形成されたお金」とみなされるため、相続税の対象となり、「500万円×法定相続人」の非課税枠が使えます。

    【所得税・住民税がかかるケース】

    • 契約者: 妻 / 被保険者:夫 / 受取人:妻
    • 解説: 妻が自分で保険料を払い、夫の万が一の際に自分自身で保険金を受け取る形です。自分でお金を払って自分でお金を受け取っているため「一時所得」扱いとなり、所得税・住民税の対象となります。この場合、相続税の非課税枠は使えません。

    【贈与税がかかるケース】(注意が必要!)

    • 契約者: 夫 / 被保険者:妻 / 受取人:子
    • 解説: 夫が保険料を払い、妻が亡くなった時に、子どもが保険金を受け取る形です。「夫のお金で掛けた保険の成果を、子どもがもらった」とみなされるため、税金の中で最も税率が高い贈与税が課されてしまいます。

    生命保険契約では「誰が誰に掛けているのか」が重要

    相続税対策として生命保険を活用する場合は、原則として「契約者 = 被保険者(=亡くなる予定の人)」になっていることを必ず保険証券で確認してください。

    昔加入した保険や、名義変更を行った保険などで契約形態がずれていると、思わぬ税金トラブルに発展することがあります。

    要注意!生命保険金を「相続人以外」が受け取った場合はどうなる?

    次に考えたいのが、「誰を保険金の受取人にするか」という実務上の問題です。

    結論からお伝えすると、「500万円×法定相続人の数」という非課税枠を使えるのは、保険金を受け取った「相続人」だけです。

    非課税枠が使えないケース(相続人以外が受け取る場合)

    たとえば、以下のような方が死亡保険金を受け取った場合、非課税枠を適用することはできません。

    ① 孫 (※ 代襲相続人になっている場合は除く)

    ② 内縁の配偶者(事実婚のパートナー)

    ③ 長男の嫁(息子の配偶者)

    ④ 相続放棄をした人

    ⑤ 遺言によって財産を譲り受ける第三者

    これらの人は「民法上の法定相続人」ではないため、たとえ死亡保険金を受け取ったとしても、受け取った保険金の「全額」がそのまま相続税の課税対象になってしまいます。

    「相続税の2割加算」という罠にも注意

      さらに注意が必要なのが、相続税の「2割加算」という制度です。

      配偶者や一親との血族(子ども・父母)以外の第三者が相続や遺贈、死亡保険金によって財産を取得した場合、計算された相続税額が「1.2倍(2割増し)」になるというルールがあります。

      孫を保険金受取人に指定していた場合

      ・ 非課税枠が一切使えない(全額課税対象)

      ・ さらに算出された相続税が2割増しになる

      「孫が可愛いから孫に直接保険金を残してあげたい」というお気持ちから受取人を孫に設定されるケースがありますが、税金面だけを考えると非常に不利になることがあります。

      孫にお金を残したい場合は、受取人を一度「子ども(孫の親)」にした上で受け取らせるか、生前贈与を活用するなど、別の方法を検討するほうが税務上有利になることが多いです。

      生命保険金は「遺産分割」の対象になるの?

      ここからは、税金のお話から少し離れて、法的な手続きや親族間の話し合い(遺産分割協議)の観点から生命保険を見てみます。

      ここを理解しておくと、単なる節税にとどまらない、真に役立つ相続対策が実行できます。

      死亡保険金は原則として受取人固有の財産

      冒頭でも少し触れましたが、死亡保険金は「遺産分割協議の対象となる財産(遺産)」には含まれません。

      • 預貯金や不動産: 相続人全員で「誰がどれだけ分けるか」を協議(遺産分割協議)して決めなければ、引き出したり名義変更したりできない。
      • 死亡保険金: 保険契約によって指定された受取人が、単独で保険会社に請求して自分の口座に直接受け取ることができる。

      つまり、他の相続人の同意や印鑑証明書がなくても、指定された受取人が即座に自分の権利としてお金を受け取れます。

      特定の相続人だけが多額の保険金を受け取る場合(特別受益の問題)

      ここでよく問題になるのが、「兄弟のうち、長男だけが2,000万円の死亡保険金を受け取っていて、他の遺産がほとんどない」というようなケースです。

      「長男だけズルい!保険金も遺産に含めて分け直すべきだ!」と他の兄弟が主張した場合、どうなるでしょうか。

      判例では、原則として「死亡保険金は特別受益(生前に贈与された特別の利益)には該当せず、遺産分割の対象にならない」とされています。

      ただし、例外があります。

      受け取った保険金の額が、残された遺産の総額に対して「あまりにも過大で、他の相続人との間に到底見過ごせない著しい不公平が生じる場合」には、例外的に保険金の一部または全部を「特別受益に準じて持ち戻し計算(遺産の分け直しに考慮)する」と判断されることがあります。

      特定の家族だけに極端に偏った額の保険金を遺すと、残された家族の間で深刻な感情的対立(争族)を引き起こす原因になります。節税のことばかりでなく、「残された家族間のバランス」にも気を配ることが大切です。

      生命保険を使った相続税対策にも「落とし穴」がある

      生命保険は非常に強力なツールですが、万能ではありません。ここからは、契約する前に必ず知っておくべき「生命保険対策の落とし穴」について解説します。

      高齢・持病があってからの加入はコスト(保険料)が高くなる

      「相続対策のために保険に入ろう」と思い立つのは、70代・80代になってからというケースが少なくありません。

      しかし、高齢になってから加入できる保険(一時払終身保険など)は、「払い込む保険料の総額」と「受け取る死亡保険金」の差(増え幅)がほとんどないか、時期によっては解約返戻金が元本を下回るリスクがあります。

      例えば、1,000万円の保険金を受け取るために、生前に980万円の保険料を一括払いするような商品もあります。「非課税枠を使うため」と割り切るなら意味はありますが、「お金を増やす」という目的には向きません。

      そもそも相続税がかからない家庭では「節税効果」ゼロ

      相続税には、大きな「基礎控除額」があります。

      相続税の基礎控除額 = 3,000万円 +( 600万円 × 法定相続人の数 )

      例えば、法定相続人が3人(妻・子2人)の場合、相続税の基礎控除額は

      3,000万円 +(600万円 × 3人)= 4,800万円 となります。

      ご自身の所有するすべての財産(自宅不動産、預貯金、株式など)の合計額が4,800万円以下であれば、もともと相続税は1円もかかりません。

      相続税がかからないご家庭で「節税になるから」と勧められて生命保険に入っても、税金面でのメリットは全くありませんのでご注意ください。

      ※ ただし、後述する「資金確保」としてのメリットはあります。

      手元の流動性(現金)が失われる

      現金を保険料として一括で払い込んでしまうと、当然ながら手元の現金が減ります。

      将来、ご自身が病気になって長期の入院費が必要になったり、老人ホームの入居一時金が必要になったりした時に、お金が自由に使えなくなってしまうというリスクがあります。途中で解約すると元本割れしてしまう保険も多いため、「自分自身の老後資金」まで無理に保険に変えてしまわないことが重要です。

      生命保険は「相続税対策」だけでなく「相続人にお金を渡す準備」にもなる

      ここまで節税の話を中心にしてきましたが、実務の現場で私たちが一番感じている生命保険の素晴らしい価値は、実は相続発生直後の家族を救うスピード感にあります。

      相続発生直後は、まとまった現金が今すぐ必要になる

      ご家族が亡くなると、悲しむ暇もなく様々な支払いが発生します。

      ① 葬儀費用や法要の費用(数十万〜数百万円)

      ② 医療費や介護施設の精算金

      ③ 当面の生活費

      ④ 未払いの税金や公共料金の支払い

      預貯金口座は凍結され、手続きに時間がかかる

      銀行は口座名義人が亡くなったことを知ると、口座を「凍結」します。

      凍結された預貯金を解約して引き出すためには、戸籍謄本を生まれてから亡くなるまで全て集め、相続人全員の印鑑証明書を用意し、遺産分割協議書を作成しなければなりません。これには早くても数週間、揉めたり準備が遅れると数ヶ月以上の時間がかかります。

      ※ 仮払い制度もありますが、上限金額があるなどの制約があります。

      一方、生命保険金は必要書類(死亡診断書や受取人の書類)を揃えて不備なく提出すれば、数日〜2週間程度で受取人の口座に現金が振り込まれます。

      この「すぐに使える現金が手に入る」というスピード感は、残されたご家族にとって何よりの安心感となります。

      不動産が多くて現金が少ない家庭の「代償金」として使う

      例えば、相続財産のほとんどが自宅の土地・建物(3,000万円相当)で、預貯金がほとんどない場合を考えてみましょう。

      相続人が長男・次男の2人だとすると、長男が自宅を継ぐ場合、次男に渡す現金がなくて揉めてしまいます。

      こんな時に、父親が長男を受取人とする1,500万円の生命保険に加入しておけば、長男は受け取った保険金の中から次男へ「代償金(自分の財産から渡すお金)」として1,500万円を支払うことができます。

      遺言書と生命保険を組み合わせる考え方

      行政書士としてよくご提案するのが、「遺言書」と「生命保険」の組み合わせです。

      • 遺言書: 不動産や預貯金を「誰にどう分けるか」という意思表示をする
      • 生命保険: 相続税の納税資金や、特定の相続人への代償金、葬儀費用としての「現金」を確実に届ける

      この2つを正しくセットで設計しておくことで、ご自身の思い通りの相続を実現し、残されたご家族の手続き負担やトラブルを劇的に減らすことが可能になります。

      生命保険だけに頼らない!元気なうちに「相続全体」を考えておこう

      ここまで、生命保険の非課税枠の仕組みから、実務での注意点まで解説してきました。

      最後に一番お伝えしたいのは、生命保険は相続対策の中の一つの選択肢(手段)であって、相続対策そのものではないということです。

      「保険に入ったからこれで相続対策は完璧!」と安心してしまい、全体の準備を怠ってしまうのが一番危険です。

      本当に大切なのは、元気なうちに「我が家全体の相続の形」を整理しておくことです。ぜひ以下のステップで、できることから始めてみてください。

      今すぐできる相続準備の3ステップ

      STEP
      財産目録を作る(現状の把握)

      まずは、ご自身がどんな財産をどれくらい持っているかを書き出してみましょう。

      • 不動産: 自宅土地・建物、山林、借地など(固定資産税の納税通知書で確認)
      • 金融資産: 銀行口座(複数ある場合はすべて)、有価証券(株式・投資信託)
      • 生命保険: 保険会社名、契約者、被保険者、受取人、保障内容
      • その他: 貴金属、自動車、負債(ローンの残り)など

      一覧表(財産目録)を作るだけで、「うちは相続税がかかりそうか?」「現金が足りなくなりそうか?」という全体像が見えてきます。

      関連記事

      STEP
      誰に何を残したいのか整理する

      財産が把握できたら、ご自身の希望を整理します。

      • 自宅は同居している長男に継がせたい
      • 老後の面倒を見てくれた長女に多めにお金を残したい
      • 家族が揉めないように平等に分ける仕組みを作りたい

      こうしたご自身の「思い」を明確にすることが、対策の第一となります。

      STEP
      遺言書・生命保険・専門相談を組み合わせる

      全体のビジョンが見えたら、具体的なツールを組み合わせていきます。

      • 分け方を指定するために「遺言書」を作成する
      • 納税資金や即座に必要な現金を確保するために「生命保険」を活用する
      • 相続税の緻密な試算や税務申告については「税理士」などの専門家に相談する
      • 遺言書の作成や戸籍の収集、財産目録の作成支援については「行政書士」に相談する

      まとめ

      生命保険の「500万円×法定相続人の数」という非課税枠は、正しく使えば大きな節税効果と、家族を守る強い味方になります。

      しかし、

      ・ 誰が保険料を払っているか(契約形態)

      ・ 誰が保険金を受け取るか(受取人の設定)

      ・ ご家庭全体で見た時の財産バランス

      これらを間違えてしまうと、せっかくの対策が裏目に出てしまうこともあります。

      「うちの場合は生命保険を使うべきなのかな?」

      「遺言書とセットで準備したいけれど、どこから手を付ければいいかわからない」

      札幌市近郊で相続や遺言、将来の備えについてお悩みや不安をお持ちの方は、ぜひ一度「つしま行政書士事務所」までお気軽にご相談ください。ご家族の状況に合わせた最適な相続のカタチを、丁寧にご提案させていただきます。

      ※ 相続税の具体的な税額計算や申告手続きにつきましては、税理士の業務となります。

      ■ 札幌での相続・遺言その他終活のご相談なら

      札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成及び終活に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。

      ※ なお、紛争の解決についてはうけたまわれません。

      【お問い合わせ先】 つしま行政書士事務所

      • 所在地:札幌市東区
      • 対応エリア:札幌市内および近郊エリア(出張相談も承ります)
      • 営業時間:平日 9:00〜18:00(※事前の予約で土日祝や夜間も対応可能です)

      ※ お電話でのお問い合わせにつきましては、当方留守の場合は必ず、留守電にお名前・ご用件(例 相続について相談したい)をお知らせください。

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