人生100年時代といわれる現代において、50代・60代、あるいはそれ以上の年代で新たなパートナーと歩み始める「熟年結婚」を選ぶ方が増えています。子育てや仕事がひと段落し、これからの第二の人生を穏やかに、そして心豊かに過ごすための大きな決断です。
しかし、長年それぞれの人生を歩んできたお二人だからこそ、若い世代の結婚とは異なる特有の課題や配慮すべき点が存在します。お互いへの愛情や「一緒にいたい」というお気持ちはもちろん大切ですが、それだけでは解決できない「親の介護」「前婚の子どもとの関係」「財産と相続」といった現実的な問題と向き合うことが、結果としてお二人の幸せを守ることにつながります。
この記事では、札幌で相続や遺言、遺産整理手続きなどのご相談をお受けしている行政書士の視点から、熟年結婚において考えておくべき重要ポイントを少し長くなりますが、ストーリーに沿って分かりやすく解説します。
熟年結婚が増えている? 「第二の人生」を選ぶ人たち
熟年結婚とは、一般的に50代以降のミドル・シニア世代が行う再婚や初婚のことを指します。かつては「人生の後半は一人で静かに暮らす」という考え方も多く見られましたが、現在では平均寿命の伸長やライフスタイルの多様化に伴い、後半生をともに支え合うパートナーを求める方が増えています。
熟年結婚を選択される背景には、さまざまな事情や背景があります。
① 離別や死別による孤独感の解消
長年連れ添った配偶者との死別や離婚を経験し、1人の生活に寂しさや不安を感じている
ケース。
② 子育ての完了と自分の人生の再出発
子どもが独立・成人し、自分のこれからの人生を見つめ直したときに新たな出会いに恵まれたケース。
③ 健康面や老後生活への不安
将来の病気や万が一の際、お互いに支え合える存在を必要としているケース。
このような事情や背景から、「残りの人生を自分らしく、楽しく温かいものにしたい」と願うポジティブな選択として熟年結婚が選ばれています。
熟年結婚には、心の安定や生活上の助け合いといった数多くのメリットがあります。
① 精神的な安らぎと安心感
日々の会話や食事をともにすることで孤独感が減り、精神的に満たされます。
② 非常時の支え合い
怪我や急病の際、身近に頼れるパートナーがいる安心感は非常に大きなものです。
③ 経済的な協力関係
住居費や光熱費などの生活費を共同で負担することで、老後資金のやりくりにゆとりが生まれる場合もあります。
しかし、素直に祝福されるはずの熟年結婚には、若い世代の結婚とは大きく異なる点があります。それは、「すでに積み重ねてきた人生の歴史(資産、人間関係、家族構造)」を互いに持ち寄るという点です。
20代や30代の結婚であれば、これから二人でゼロから資産を築き、これから子どもを育てていくというプロセスをたどります。しかし熟年結婚の場合は、すでに各自で形成した財産や自宅があり、双方に高齢の親や成人した子どもが存在していることが一般的です。
「お互いを思いやる気持ちがあれば大丈夫」と考えがちですが、現実にはお二人だけの問題にとどまりません。親の介護負担、子どもたちの感情や将来の相続問題、認知症になった際の財産管理など、具体的な課題について事前に目を背けず話し合っておくことが、将来のトラブルを防ぐ鍵となります。
熟年結婚で最初に考えたい「親の介護」問題
熟年結婚をする50代・60代の方々にとって、避けて通れないのが「親の介護」問題です。
法律上、配偶者の直系血族(義理の父母)に対しては直ちに直接的な介護義務が生じるわけではありませんが、同居している場合や人間関係の観点から、自然と介護に関わらざるを得ない状況が生じます。「結婚したのだから、相手の親の面倒も見るのが当たり前」とお互い(あるいは周囲)が期待してしまうと、後々大きな負担感や不満につながる恐れがあります。
熟年結婚では、自分自身の親も80代・90代と高齢であり、配偶者の親も同様に高齢である場合がほとんどです。
いわゆる「W(ダブル)介護」の状況に陥るリスクがあります。自分自身の親の通院付き添いや介護に追われながら、同時に配偶者の親の介護支援や調整も重なると、精神的・体力的に限界を迎えてしまうことがあります。
介護が必要になった場合、その費用を「誰の財産から出すのか」という問題も重要です。
・ 親自身の資産で賄うのか
・ 配偶者や自分が援助するのか
・ 施設に入所させる場合、その決定権や初期費用・月額費用は誰が負担するのか
結婚前から親の資産状況や介護保険の申請状況を把握し、兄弟姉妹がいる場合はどの程度分担するのかを確認しておくことがとても大切になります。
親が認知症になり判断能力が低下すると、親名義の預貯金口座が凍結されたり、実家の不動産売却ができなくなったりします。
介護費用を捻出するために親の実家を売却しようとしても、本人の意思確認が取れなければ売買契約を結ぶことができません。このような事態に備えて、後見制度の活用や家族信託などの生前対策を考えておく必要があります。
新婚の甘い生活を楽しもうと考えていたところに、突然どちらかの親の重大な介護問題が降りかかってくると、新生活のペースが乱され、夫婦間の亀裂に発展することがあります。「聞いていなかった」「自分ばかりが介護負担をさせられている」といった感情的な行き違いを防ぐためにも、親の健康状態や介護に対する考え方は結婚前に共有しておくことが極めて重要です。
「子ども」と「新しい配偶者」の関係はどうなる?
熟年結婚をされる方の多くには、前の結婚で生まれたお子様がいらっしゃいます。子どもがすでに独立して社会人や既婚者になっているケースも多いですが、成長していても子どもにとって「親の再婚」は非常に大きな出来事です。
親の立場からすると「もう子どもも大人だし、自分の人生を楽しんでも理解してくれるだろう」と考えがちです。しかし子ども側から見ると、亡くなった実の親への思いや、これまで長年育んできた家族の記憶があります。
突然「新しく結婚する人がいる」と紹介されても、すぐに心から歓迎できるとは限りません。困惑や寂しさ、不信感を抱くことも珍しくありません。
親としては「老後の孤独を解消したい」「幸せになりたい」という切実な願いがありますが、子どもからは「なぜ今更結婚するのか」「周囲にどう説明すればいいのか」といった困惑の声が上がることがあります。
この気持ちの温度差を無視して強行してしまうと、親子の関係が疎遠になってしまったり、将来的に配偶者と子どもとの間で感情的な対立が深まったりする原因になります。
子どもたちが最も懸念や不安を抱きやすいのが、実は「財産と相続」に関する問題です。
「親が一生懸命築いてきた資産や先祖代々の土地・実家が、見知らぬ新しい配偶者やその連れ子に渡ってしまうのではないか」という不信感を子どもが抱くのは、ある意味で自然な感情ともいえます。そのため、単に「結婚する」という報告だけでなく、将来の財産管理や相続について親がどのように考えているかを丁寧に伝える姿勢が求められます。
二人だけで結婚を決めてしまうのではなく、事前にお互いの子どもとじっくり話し合う機会を設けることが大切です。
・ 子どもをないがしろにしていないこと
・ お互いの老後を支え合うための前向きな結婚であること
・ 財産の取扱いについてもきちんと考えを整理していること
以上3点を伝えることで、子ども側の不安や抵抗感を大幅に和らげることができます。
「連れ子」は相続人になる? 熟年結婚で知っておきたい相続の基本
この章は、熟年結婚をされる方が最も誤解しやすく、後から「そんなはずではなかった」と後悔しやすい非常に重要なポイントです。
まずは具体的な例をあげて考えてみたいと思います。
【具体例】
・ 夫(60歳): 前妻との間に子どもが2人(長男・長女)
・ 妻(58歳): 前夫との間に子どもが1人(次女)
お二人が法律上の入籍をし、新しく夫婦としての生活をスタートさせました。妻の連れ子である次女も、新しいお父さん(夫)とな仲良く暮らしています。
ここで多くの方が勘違いされるのが、「結婚して夫婦になれば、相手の連れ子も自分の法律上の子ども(相続人)になるのではないか」という点です。
結論から申し上げますと、入籍(婚姻届の提出)をしただけでは、配偶者の連れ子とあなたとの間に法律上の親子関係は一切発生しません。
どれほど一緒に長く暮らし、実の親子のように仲良く過ごしていたとしても、法律上は「配偶者の子」という親族関係にとどまり、実子と同等の権利・義務は生じません。
上記の具体例において、仮に夫が亡くなった場合の法定相続人が誰になるかを整理してみましょう。
◉ 夫の法定相続人
① 妻(配偶者相続人)
② 夫の実子2人(長男・長女)
妻の連れ子は、夫の法定相続人には含まれません。
法定相続分は以下のようになります。
・ 妻: 2分の1
・ 長男: 4分の1(2分の1 × 2分の1)
・ 長女: 4分の1(2分の1 × 2分の1)
・ 妻の連れ子: なし
つまり、夫の遺産は「妻」と「夫の実子2人」
で分けることになり、妻の連れ子には1円も相続権がありません。
夫が亡くなった場合、遺産分割協議を行う相手は「妻」と「夫の前婚の子ども2人」になります。
妻と夫の前婚の子どもたちが日頃から良好な関係を築いていれば話し合いもスムーズですが、あまり交流がない場合や感情的なへだたりがある場合、協議が難航するケースが多発します。妻にとっては「夫の連れ子たちと遺産を分け合わなければならない」、子どもたちにとっては「会ったこともほとんどない継母と話し合わなければならない」というストレスが生じます。
もし夫が「妻の連れ子(次女)にも自分の財産を残したい」「法律上も実の親子のようになりたい」と希望する場合、手続きとして「普通養子縁組」を行う必要があります。
養子縁組を届出することで、夫と妻の連れ子との間に法律上の親子関係が成立します。
養子縁組をした場合、夫が亡くなった際の法定相続人は以下のようになります。
◉ 夫の法定相続人
① 妻(配偶者)
② 夫の実子2人 + 妻の連れ子(養子)の合計3人
法定相続分は以下のようになります。
・ 妻: 2分の1
・ 長男: 6分の1(2分の1✕3分の1)
・ 長女: 6分の1(2分の1✕3分の1 )
・ 妻の連れ子(養子): 6分の1( 2分の1✕3分の1)
このように、養子にすることで妻の連れ子にも実子と同等の相続権が発生します。ただし、実子から見れば「もらえる取り分が減る」ことになるため、事前に実子へ説明をして理解を得ておかなければ、感情的なもつれを引き起こす原因ともなります。
どれほど家族として温かい信頼関係を築いていたとしても、民法は「血縁関係」または「養子縁組の有無」を厳格に基準とします。
「いつも世話をしてくれたから」「一緒に住んでいたから」という気持ちだけでは、法律上の相続権は発生しません。気持ちと法律のギャップを正しく理解しておくことが、熟年結婚の大きなポイントです。
自宅は今の配偶者に残したい 不動産がある人は要注意
熟年結婚において、最もトラブルに発展しやすい資産が「不動産(持ち家・土地)」です。
預貯金や株式であれば数字で細かく割って分け合うことができますが、不動産は「物理的に切り分けて分ける」ことが困難だからです。
例えば、夫名義の持ち家に夫婦で暮らしているケースを考えてみましょう。
夫が突然亡くなった場合、法定相続人は「妻」と「夫の前婚の子どもたち」です。 夫の遺産の大部分が「自宅不動産(評価額3,000万円)」と「わずかな預貯金(300万円)」であった場合、どのような問題が発生するでしょうか。
夫としては「自分が死んだ後も、妻にはこの家で安心して暮らしてほしい」と願っているのが普通です。妻自身も「住み慣れた自宅にそのまま住み続けたい」と考えます。
しかし、前婚の子どもたちからすれば、「父親の遺産のうち、自分の法定相続分(権利)をきちんとお金で支払ってほしい」と主張する権利があります。
妻が自宅を単独で相続して住み続けるためには、子どもたちに対して各自の取り分に相当する現金(代償金)を支払わなければならない場合があります。手持ちの現金が足りなければ、最悪の場合、「自宅を売却して現金化し、みんなで分け合う」という選択を迫られ、妻は住む家を失ってしまうリスクすらあります。
※ なお、「配偶者居住権」という制度があり、一定の要件のもとで住み続ける権利を確保できますが、手続きが複雑であり、万全の事前対策なしでは安泰とはいえません。
不動産以外にも預貯金、株式、投資信託などの金融資産がある場合、それらを組み合わせることで「妻には自宅と一部の預貯金」「子どもたちには株式や残りの預貯金」といった柔軟な配分案を設計することが可能になります。
しかし、それも「事前に誰に何を渡すかを遺言等で計画していた場合」に限られます。何の対策もないまま相続が発生すると、すべての遺産をテーブルに乗せて協議しなければならなくなります。
協議がまとまらないからといって、「とりあえず自宅を妻と子どもたちの共有名義にしておこう」という解決策をとることは絶対に避けるべきです。
不動産を共有名義にすると、将来的にその家を売却・解体したり、大規模修繕を行ったりする際に共有者全員の同意が必要となります。将来、妻が老人ホームに入所するために家を売りたいと思っても、前婚の子どもが反対すれば売却できません。さらに世代交代が進むと、子どもたちの相続人にまで権利が枝分かれし、権利関係が泥沼化してしまいます。
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【重要ポイント】
熟年結婚では、不動産の有無によって相続問題の深刻さが劇的に変わります。 持ち家をお持ちの方は、「自分が亡くなった後の配偶者の居住権と所有権をどう保全するか」を最優先で考える必要があります。
「自分が死んだ後」のことを、夫婦で話し合っていますか?
熟年結婚をされたお二人は、お互いに「先立つリスク」をリアルに感じる年代です。
自分が亡くなった後、残されたパートナーが金銭的に困らないか、住む場所に困らないか、身の回りの世話や介護を誰がしてくれるのか。そうした「自分が去った後の配偶者の生活設計」について、元気なうちに夫婦でしっかりと語り合うことが終活の第一歩です。
同時に、自分を育ててくれた親への思いや、自分が生んできた子どもに対する親としての責任や愛情も大切にしなければなりません。
「配偶者の今後の生活のために財産を充てたい」という思いと、「これまで苦労をかけた自分の実子にも、きちんとした形で財産を分け与えたい」という思いの双方が存在するはずです。
相続の話し合いにおいて、「配偶者を取るか、子どもを取るか」という二者択一の対立構造にしてしまうのは非常に危険です。
大切なのは、両者の立場や今後の生活に必要な資金を見極め、バランスの取れた合理的な着地点を見つけることです。
・ 配偶者の老後資金(生活費・医療費・介護費)として必要な額
・ 子どもたちに渡すべき納得感のある財産の割合
これらを冷静に分析し、文章として残す準備を進める必要があります。
終活や相続対策の真の本質は、財産の取り分を奪い合わせることではなく、「自分が逝った後、残された大切な人たちが揉めたり途方に暮れたりしないようにすること」にあります。
何の準備も残さずに亡くなってしまうと、残された配偶者と子どもたちが、直接顔を合わせて交渉を行わなければならず、精神的に多大な負担をかけることになります。
お金や不動産の話だけでなく、以下のような身の回りの生前整理・逝去後の希望についても話し合っておくことが重要です。
・ 葬儀の規模や形式: 家族葬にするか、宗教宗派はどうするか
・ お墓や供養の方法: 先祖代々の墓に入るのか、新しく納骨堂などを手配するのか、樹木葬か
・ 家財道具や遺品の整理方針
熟年結婚の場合、お互いの実家や先祖代々の墓との兼ね合いもあるため、これらの希望を擦り合わせておくことが不可欠です。
熟年結婚だからこそ考えたい「遺言書」
これまでの問題を根本的に解決し、自分の意志を確実に実現するための最大の手段が「遺言書」の作成です。
「遺言書がなくても、法律で決められた割合(法定相続分)で分ければいいのではないか」と考えている方は少なくありません。
しかし、前述の通り法定相続分で分けるということは、不動産の共有化や代償金の発生など、現実の生活にそぐわない無理を生じさせます。法律の規定はあくまで「目安・基準」に過ぎず、それぞれの家庭の事情にピッタリ合った分け方を示してくれるわけではありません。
遺言書を作成すれば、民法の原則に縛られることなく、「どの財産を、誰に、どれだけ渡すか」を遺言者が自由(一定の制限あり)に指定することができます。
・ 「自宅の土地建物と預貯金の○%は妻に相続させる」
・ 「こちらの口座の預貯金と有価証券は長男と長女に半分ずつ分け与える」
このように具体的に指定することで、遺産分割協議を行う必要自体がなくなり、残された家族の手続き負担を大幅に軽減できます。
「残される妻(夫)が最後まで住み慣れた自宅で安心して暮らせるようにしたい」という場合は、遺言書の中で明確に不動産の帰属を指定しておくことが決定的に重要です。
公証人が関与する「公正証書遺言」を作成しておけば、万が一の際にも名義変更手続き(相続登記)をスムーズに進めることができ、他の相続人の捺印や協力を要さずに配偶者の住まいを守ることができます。
配偶者を守ると同時に、自分の実子たちに対しても不満が残らないよう配慮した遺言内容にすることがポイントです。
遺言書の中に付言事項という文章を添えることができます。付言事項とは、法的効力とは別に、なぜこのような財産配分にしたのかという理由や、配偶者と子どもたちへの感謝のメッセージを残せる仕組みです。
【付言事項の例】
妻の今後の老後生活と住まいを確保するため、自宅不動産は妻に相続させることにしました。その分、長男と長女には金融資産を配分しています。どうか二人ともお母さんと仲良く、お互いを助け合って仲良く生きていってください。
このようにメッセージを残すことで、子どもたちも親の真意を理解し、納得しやすくなります。
遺言書を作るプロセス自体が、実は大きな意味を持ちます。自分ひとりで抱え込まず、作成の過程で配偶者や子どもたちと「これからのこと」を話し合う機会が生まれるからです。オープンに会話を重ねることで、家族全体の安心感につながります。
遺言を書く際には、法律上の留意点もあります。それが「遺留分」です。
遺留分とは、一定の法定相続人(配偶者や子どもなど)に最低限保障されている遺産の取り分のことです。
たとえば、「すべての財産を妻だけに譲り、実子には一切残さない」という極端な遺言を書いた場合、亡くなった後に子どもたちから妻に対して「遺留分侵害額請求(最低限の取り分をお金で支払えという請求)」がなされるリスクが生じます。無用な争いを避けるためには、遺留分に配慮したバランスの良い遺言設計を行うことが大切です。
ここで行政書士として、大切な注意点をお伝えしておかなければなりません。
「遺言書さえ書けば、すべての問題が100%解決する」というわけではありません。
遺言書はあくまで「死亡した時点」で効力を発揮する書類です。亡くなる前の「認知症による判断能力低下」や「要介護状態になった際の財産管理・介護手続き」には、遺言書だけでは対応できません。
認知症対策としての「任意後見制度」や「家族信託」、急病時の身の回り支援のための「見守り契約・生前事務委任契約」など、生前の対策とセットで総合的に設計しておくことが、本当の意味での「安心」をもたらします。
「財産はあるけれど、誰に何を残す?」 財産目録を作りましょう
遺言書や相続対策を考えようとしても、「そもそも自分にどれだけの財産があるのか」を正確に把握していなければ、適切な配分を計画することはできません。まずは「財産目録」の整理から始めてみましょう。
一度ご自身の資産や負債をリストアップしてみることをおすすめします。
① 預貯金
銀行名、支店名、口座種別(普通・定期)、口座番号
② 不動産
自宅土地・建物、借地権、賃貸物件、山林や農地などの所在地・評価額
③ 株式・投資信託・有価証券
証券会社名、銘柄、数量
④ 生命保険・個人年金
保険会社名、受取人、保険金額、解約返戻金の有無
⑤ 動産(貴重品・車など)
自動車、貴金属、骨とう品、絵画、高級カメラなど
⑥ 負債(借入金・ローン)
住宅ローン、自動車ローン、クレジットカードの未払金、連帯保証債務
⑦ デジタル資産
ネット銀行、暗号資産、有料サブスクリプション契約、ネット証券口座情報
頭の中だけで「大体これくらいあるだろう」と考えていると、思わぬ漏れが生じます。
特に現代では、紙の通帳を発行しない「ネット銀行」や「ネット証券」を利用されている方が増えており、ご本人が亡くなった後にご家族が口座の存在すら知らず、資産が放置されてしまうケースが増えています。
リストとして明確に可視化することで、初めて「誰に何をどれだけ残せるか」の具体的なシミュレーションが可能になります。
熟年結婚において特に重要なのが、「特有財産」と「共有財産」の区別です。
・ 特有財産
結婚前から各自が所有していた財産、または結婚後であっても各自の親から相続・贈与された財産。
・ 共有財産
結婚後に夫婦が協力して築き上げた財産。
離婚時の財産分与や、相続時の子どもたちへの説明において、「この財産は昔から自分が持っていたもの」「これは二人で暮らしてから貯めたもの」という区別が明確になっていると、余計な誤解やトラブルを防ぐことができます。
熟年結婚をする前に「夫婦で決めておきたいこと」チェックリスト
熟年結婚を控えている方、あるいは結婚して間もないお二人のために、事前にお互いで話し合っておきたい項目をチェックリストにまとめました。
すべての項目について完璧な答えを最初から出す必要はありません。一度二人でテーブルを挟んで話し合ってみること自体に大きな価値があります。
【熟年結婚の話し合いチェックリスト】
- お互いの子どもに結婚をどう伝えるか タイミング、伝える内容、事前の顔合わせの有無など
- 親の介護をどうするか お互いの親の健康状態、将来の介護方針、関わり方の度合い
- 介護費用や医療費をどう負担するか 親自身の資産を使うのか、自分たちの口座から援助するのか
- 住む場所をどうするか どちらかの持ち家に同居するのか、賃貸や新しい住居を購入するのか
- 現在の財産をどう管理・開示するか 生活費の口座は分けるかまとめるか、お互いの資産状況をどの程度共有するか
- 自宅を将来誰に残したいか どちらかが先立たれた後の住まいと名義をどうするか
- お互いの子どもに何を残したいか 金融資産や不動産の配分についての基本的な考え方
- 遺言書を作成するか 公正証書遺言などの作成時期や内容についての合意
- 認知症などで判断能力が低下した場合にどうするか 任意後見人や財産管理の委任についてどう考えているか
- 万が一の際の葬儀・お墓・供養の希望 どちらのお墓に入るか、どのような供養を望むか
【アドバイス】
このチェックリストは、「結婚するならすべてを完璧に決めておかなければならない」という厳しい条件ではありません。 お互いの価値観や不安に思っていることを共有し、「これからの人生を誠実に二人で考えていこう」という姿勢を確かめ合うためのコミュニケーションツールとしてご活用ください。
熟年結婚だからこそ、早めに行政書士へ相談してほしいこと
ここまでお読みいただき、「考えるべきことがたくさんあって、どこから手をつければいいのか分からない」「家族間の感情もあって、当事者だけでは上手く話し合えない」と感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そのようなときこそ、身近な街の法律家である「行政書士」をご活用ください。
行政書士に相談・依頼できること
行政書士は、契約書や遺言書などの権利義務に関する書類作成のプロフェッショナルであり、予防法務(トラブルを未然に防ぐための手続き)の専門家です。
① 遺言書作成のサポート(文案作成・公正証書手続きの同行)
ご希望をしっかりとヒアリングし、法的効力があり、かつ家族の心情にも配慮した遺言書文案を作成します。
② 財産目録の作成・整理
複雑な不動産登記情報や金融資産の調査を行い、分かりやすい目録としてまとめます。
③ 相続人の調査・推定相続人の確定
戸籍謄本等を収集し、前婚の子どもや親族関係を正確に把握・整理します。
④ 家族関係を踏まえた総合的な相続・生前対策の提案
連れ子や配偶者、実子のバランスを考慮した最適な財産承継プランをご提案します。
⑤ 任意後見契約・生前事務委任契約・尊厳死宣言などの書類作成
将来の認知症や病気に備え、生前から没後までの安心をトータルで設計します。
⑥ 夫婦間の合意書・婚前契約書等の作成
結婚生活のルールや財産の扱いについて、夫婦間で交わす誓約書・契約書を形にします。
⑦ 相続発生後の遺産分割協議書作成・各種手続きサポート
万が一の際にも、遺言書に基づいたスムーズな手続きを支援します。
第三者である専門家が入るメリット
当事者やご家族だけでお金や相続の話をしようとすると、どうしても感情的になってしまったり、遠慮が生じて本音が言えなかったりします。
中立・公平な立場である行政書士が間に入ることで、客観的な法律の知識に基づいたアドバイスを提供でき、冷静で建設的な話し合いを進めることが可能になります。
まとめ ~ 人生の新しいスタートを、確かな安心とともに
熟年結婚は、これまでの人生を歩んできたお二人が出会い、ともに踏み出す素晴らしい「人生の新しいスタート」です。
だからこそ、「結婚できてよかった」「一緒に暮らせて幸せ」という瞬間的な喜びだけで終わらせるのではなく、その先に続く10年、20年の歳月を、お二人で、そして周囲のご家族とともに安心して笑顔で過ごせる環境を整えておくことが何より大切です。
「親の介護」「子どもとの関係」「財産の分け方」について考えることは、相手や家族を疑うことでも冷たいことでもありません。むしろ、大切なパートナーや我が子を将来の混乱やトラブルから守るための、最大のアブラ(優しさ)と責任の表れなのです。
・ 何から考え始めればいいのか分からない
・ まずは自分たちの状況を聞いてほしい
そのような段階であっても、まったく問題ありません。
お二人にとって、そしてご家族にとって最適な未来の形を一緒に考えていきましょう。熟年結婚をご検討中の方、あるいは今後の生活に不安をお持ちの方は、お気軽にご相談ください。
■ 札幌での相続・遺言のご相談なら
札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
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