日頃、遺言書の作成や相続手続き、エンディングノートの書き方といった「終活」のご相談をお受けする中で、非常に多くの方から寄せられるのが「葬儀」に関するお悩みやご不安です。
「親が高齢になり、もしもの時のことを考えると夜も眠れない」
「最近は家族葬が増えていると聞くけれど、具体的にいくらくらいかかるの?」
「いざというとき、どんな順番で何を決めればいいのか全くわからない」
大切な方との突然のお別れは、誰もが深い悲しみと動揺に包まれるものです。しかし現実は、お亡くなりになった直後から、遺体の搬送や安置、葬儀社との打ち合わせ、参列者への連絡など、膨大な数の決定事項を短時間でこなさなければなりません。知識がないまま慌てて決めてしまい、「思い描いていたお見送りと違った」「想定外の追加費用がかかって後悔している」といった話をよく聞きます。
後悔のないお見送りをするために最も大切なのは、「もしも」が訪れる前に、最近の葬儀事情を知り、正しい知識と準備を持っておくことです。
本記事では、近年大きく変化している葬儀のスタイルやリアルな費用データ、万が一の際の流れ、失敗しない葬儀社の選び方、そして終活で取り組むべき準備まで、専門家の視点から分かりやすく丁寧に解説します。ご自身やご家族のこれからの備えとして、ぜひ最後までお役立てください。
葬儀が「簡素化・小規模化」になっている理由とは?
かつて日本の葬儀といえば、親族だけでなく近所の方々、会社の関係者、地域の自治会などが広く参列する「一般葬」が当たり前でした。しかし近年、葬儀のスタイルは「家族葬」「一日葬」「直葬(火葬式)」など、参列者を限定した小規模で簡素な形式へと急速にシフトしています。
なぜ、これほどまでに葬儀の小規模化が進んでいるのでしょうか。その背景には、社会構造や価値観の大きな変化があります。
高齢化が進んだ結果、お亡くなりになる方の年齢も上がっています。80代や90代で亡くなられた場合、すでに現役を退いてから長い年月が経過しているため、仕事上の付き合いや交友関係が少なくなっているケースが少なくありません。また、ご友人やご親族も同年代で高齢化しており、「遠方からの参列が難しい」「身体的に参列が負担になる」という事情もあります。
さらに、都市部を中心に核家族化が進み、地域のコミュニティとの付き合いが薄れ、「ご近所に広く知らせて大規模な葬儀を行う」という文化自体が薄れてきています。
長引く経済的不透明感や「人生100年時代」に向けた老後資金への不安から、「自分亡き後、遺される子供たちに金銭的な負担をかけたくない」「葬儀に多額の費用をかけるよりも、生活資金や相続財産として残したい」と考える方が増えています。従来の一般葬に比べて費用を抑えやすい小規模な葬儀が選ばれる大きな要因となっています。
昔に比べて「先祖代々の菩提寺との付き合い(檀家関係)」が薄れてきていることも影響しています。義理や形式に囚われた盛大な式を行うことよりも、「本当にゆかりのある親しい人たちだけで、故人との最後の時間をゆっくり静かに過ごしたい」という実質的な心のこもったお別れを望む方が増えています。
2020年以降のコロナ禍において、感染拡大防止の観点から「参列者を親族のみに絞る」「通夜を省略して一日葬にする」といった対応が余儀なくされました。この時期に「家族葬でも十分に心のこもった良いお葬式ができる」「参列者への気遣いや接待に追われず、故人とじっくり向き合えた」という実感が広まり、感染症の収束後も小規模化のトレンドが完全に定着したと言えます。
データで読み解く最近の葬儀事情 形式・費用・参列者数
「小規模化していると言っても、実際にはみんなどんな葬儀を選んでいるの?」「費用はどれくらいかかるのが普通なの?」と疑問に思われる方も多いでしょう。ここでは、近年の意識調査や統計データをもとに、現在の葬儀事情を客観的な数値で紐解いていきます。
葬儀形式の割合 ~ すでに「家族葬」が過半数へ
葬儀業界の各種調査によると、現在実施されている葬儀の形式は「家族葬」が圧倒的多数を占めています。
| 葬儀の形式 | 概 要 | 割合の目安 |
| 家族葬 | 家族、親族、ごく親しい知人のみで行う(通夜・告別式を実施) | 約 50% 前後 |
| 一般葬 | 親族に加え、ご近所・仕事関係・友人など広く参列者を受け入れる | 約 25〜30% |
| 直葬・火葬式 | 通夜・告別式を行わず、安置場所から直接火葬場へ移動してお別れする | 約 15〜20% |
| 一日葬 | 通夜を行わず、告別式から火葬までを1日のみで行う | 約 10〜15% |
※ 調査地域や対象によって数値は多少前後しますが、従来の「一般葬」を選択する方は全体の3割を切っており、家族葬をはじめとする小規模な葬儀が全体の7割以上を占めています。
葬儀費用の平均相場
葬儀にかかる費用は、形式によって大きく異なります。全国的な調査データを参照すると、各形式の総額相場(中央値・平均値)は以下のようになっています。
・ 一般葬: 約 120万〜180万円
・ 家族葬: 約 90万〜110万円
・ 一日葬: 約 70万〜80万円
・ 直葬(火葬式): 約 30万〜50万円
【注意】葬儀費用の「3つの内訳」を知っておこう
ニュースや広告などで「家族葬 30万円〜」といった格安プランを見かけることがありますが、ここに表示されている金額はあくまで「葬儀社に支払う基本プラン料金」のみであるケースがほとんどです。実際の葬儀費用は、以下の3つの合計で成り立っています。
【葬儀費用の総額】= ① 葬儀本体費用 + ② 飲食・返礼品費用 + ③ 宗教者へのお布施
① 葬儀本体費: 祭壇、棺、骨壺、搬送車両費、人件費、斎場利用料など(葬儀社へ支払う)
② 飲食・返礼品費用: 通夜振る舞いや精進落としの料理代、会葬御礼品など(人数に応じて変動)
③ 宗教者費用(お布施): 読経料、戒名料など(お寺や神社、教会へ直接手渡しする)
「プラン料金だけで済むと思っていたら、料理代やお布施が含まれておらず、最終的に倍以上の金額になった」というトラブルは多いため、見積もりを見る際は「何が含まれていて、何が含まれていないのか」を必ず確認する必要があります。
参列者数の減少傾向
かつては100名を超える参列者が集まることも珍しくありませんでしたが、最近の調査では「参列者数50人未満」の葬儀が全体の8割以上を占めており、平均参列者数も30〜40人程度まで減少しています。
特に札幌市などの都市部においては、親族のみ10人〜20人程度で行うアットホームな家族葬がすっかり定着しています。
葬儀の基本的流れ(ご臨終・安置からお別れまで)
万が一の際、どのような手順で事が進んでいくのかをあらかじめ把握しておくと、気持ちに大きな余裕が生まれます。一般的な「通夜・告別式を行う葬儀(家族葬・一般葬)」の基本の流れを確認しておきましょう。
[1日目] ご臨終 ──> 遺体搬送 ──> 安置 ──> 葬儀社と詳細打合せ
[2日目] 納棺 ───> 通夜・通夜振る舞い
[3日目] 告別式 ──> 出棺 ──> 火葬 ──> 繰り上げ初七日・精進落とし
病院や介護施設でお亡くなりになった場合、医師から「死亡診断書」が交付されます(自宅で急死された場合は警察や監察医による検視となり「死体検案書」が交付されます)。この書類は役所への死亡届提出や火葬許可証の発行に必須となる重要書類です。
現在の法律(墓地、埋葬等に関する法律)では、「死後24時間以内は火葬してはならない」と定められています。そのため、まずご遺体を然るべき場所へ搬送し、安置する必要があります。
病院の霊安室には長時間の安置ができないため、数時間以内に葬儀社(または搬送専門業者)へ連絡し、自宅や葬儀社の専用安置室へ搬送します。
安置が完了したら、葬儀担当者と詳細な打ち合わせを行います。
・ 葬儀の形式(家族葬、一般葬など)や規模
・ 日時(僧侶のご都合、火葬場の空き状況、親族の移動時間を考慮して調整)
・ 祭壇のデザイン、棺、遺影写真の選定
・ 費用見積もりの確認と契約
ご遺体をお清め(ラストメイクや湯灌)し、棺にお納めします(納棺の儀)。
夕方(18時頃)から「通夜」が執り行われます。僧侶による読経、焼香を行い、式終了後は参列者に料理やお酒をふるまう「通夜振る舞い」を行い、故人を偲びます。
通夜の翌日(午前10時〜11時頃から)、お別れの式である「告別式」を行います。
読経や焼香のあと、棺の中に生前好きだった花や思い出の品をお入れする「最後のお別れ(生花孔)」を行い、出棺します。
火葬場へ移動し、火葬を行います(火葬には約1時間半〜2時間程度かかります)。火葬後、ご遺族・ご親族の手で収骨(お骨上げ)を行います。
火葬場から斎場(または自宅)へ戻り、本来は初七日(命日含め7日目)に行う法要を繰り上げて行う「繰り上げ初七日法要」を執り行うのが現在の主流です。その後、僧侶や親族に感謝を込めて食事をふるまう「精進落とし」を行い、一連の式程が終了となります。
参列者・周囲への正しい案内とマナー
家族葬をはじめとする小規模な葬儀が増えたことで、近年特に増えているのが「参列者や周囲への連絡・案内のトラブル」です。どこまで連絡すべきか、どのように伝えるべきかのルールを押さえておきましょう。
・ 参列をお願いする方 日時・場所を明記して「葬儀前」に連絡
・ 参列辞退をお願いする方 「事後報告」または「参列辞退の旨を明記して連絡」
家族葬を行う場合、最も重要なのは「参列をお願いする人」と「そうでない人」を明確に分けることです。
- 参列を依頼する方へ: 訃報とともに、日時・場所を速やかに伝えます。
- 参列を遠慮していただく方へ: 生前お世話になった方へ訃報を伝える際、「故人および遺族の意向により、葬儀は近親者のみの家族葬にて執り行います。誠に勝手ながら、ご香典・ご供花・ご弔電の儀は辞退申し上げます」と明確に書き添えます。
曖昧な連絡をしてしまうと、連絡を受けた方が「参列していいのだろうか?」と困惑したり、当日に突然大勢の方が来場して対応に追われたりすることになります。
ごく身内だけで葬儀を無事に終えた場合、葬儀終了後(初七日から四十九日頃まで)に、親族や故人の知人・友人へ「死亡通知状(お礼状)」をハガキ等で送付します。
【事後通知状の文面例】
謹啓
去る〇月〇日 父 〇〇 儀(享年〇歳)が永眠いたしました
尚 葬儀におかれましては 故人の遺志により 近親者のみにて滞りなく執り行いました
ここに生前のご厚情を深謝いたしますとともに ご通知が遅くなりましたことを何卒ご容赦くださいますようお願い申し上げます
略儀ながら書中をもちましてご報告申し上げます
敬具
令和〇年〇月
差出人住所・氏名
家族葬の後に起こりやすいトラブルとして、「葬儀が終わったことを後から知った友人や近所の方が、ひっきりなしに自宅へお悔やみに訪れ、遺族が休む暇がない」というケースがあります。
これを防ぐためには、事後通知のハガキに「なお、ご香典やご供花、ご弔問につきましては、故人の遺志により謹んで辞退申し上げます」と一言添えておくことが非常に効果的です。
いざという時に慌てない 葬儀社の選び方
葬儀のトラブルで最も多いのが、ご臨終直後のパニック状態で「病院に紹介された業者に言われるがまま契約してしまった」「見積もりと実際の請求額が大幅に違った」という失敗です。
冷静な判断力がない状態で高額な契約を結んで後悔しないために、良い葬儀社を見極めるポイントを知っておきましょう。
親切な葬儀社は、プランに含まれる内容だけでなく、「後から追加で発生する可能性のある費用」について必ず事前説明を行います。
・ ドライアイスの追加費用(安置期間が延びた場合)
・ 搬送距離による追加料金
・ 火葬場使用料(自治体によって異なる)
・ 式場使用料や通夜振る舞い・返礼品の変動費
※ すべてセット料金に含まれていますから安心してください」と大雑把な説明しかしない業者は注意が必要です。
ご遺族の希望や予算を無視して、高額な祭壇やランクの高いプランを強引に勧めてくる業者は避けるべきです。
よくあるパターンは、「最低これくらいのプランにしないと故人が浮かばれません」「多くの方がこちらのプランをお選び頂いています」などという勧誘です。
本当に良心的な葬儀社は、「〇〇円の予算内で、どのように心のこもったお見送りができるか」を一緒になって考えてくれます。
病院でお亡くなりになった際、病院と提携している葬儀業者が遺体の搬送を行ってくれることがあります。しかし、「搬送を頼んだ業者に、そのまま葬儀まで依頼しなければならない」というルールは一切ありません。
搬送(自宅や安置室まで)だけを依頼し、その費用を精算した上で、実際の葬儀はご自身が事前に選んでおいた葬儀社に依頼して全く問題ありません。この知識を知っているだけでも、慌てて不本意な契約をするリスクを大幅に減らせます。
終活でぜひ実施! エンディングノートに葬儀の希望を残そう
「家族に迷惑をかけたくない」「自分らしい最後を迎えたい」とお考えであれば、終活の一環として「エンディングノート」を活用し、ご自身の葬儀に関する希望を文字に残しておくことを強くお勧めします。
残されたご家族が葬儀の打ち合わせをする際、最も頭を悩ませるのは「本人はどんな葬儀を望んでいたのだろう?」という点です。本人の意向が分かっていれば、ご家族は迷うことなく自信を持って決断することができます。
1. 希望する葬儀の形式(家族葬・一般葬・一日葬・直葬など)
2. 予算の目安と資金の準備場所(どの口座から出すか)
3. 呼びたい人のリスト(連絡先一覧)
4. 宗教・宗派の確認(菩提寺の有無・名称・連絡先)
5. 遺影に使ってほしい写真の指定(データの保管場所)
6. 遺品として棺に入れてほしいもの / 音楽などの希望
書き方のコツと注意点
① 遺影写真の選定は超重要!:ご遺族が一番苦労するのが「遺影写真選び」です。画質が良く、自分らしい笑顔の写真(スマホの画像データでもOK)をノートに挟むか、保存場所を明記しておくと非常に感謝されます。
② 法的効力はない点に注意:エンディングノートは遺言書と異なり法的効力はありません。そのため、「絶対にこうしなさい」と強制するのではなく、「私の希望としてはこうですが、最後は残された家族の判断に任せます」という柔軟なスタンスで書き残しておくと、ご家族も実行しやすくなります。
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元気なうちに葬儀社へ相談し、これからの備えを始めよう
ここまで最近の葬儀事情や選び方について解説してきましたが、万全の備えをするための最高のステップは「元気なうちに葬儀社の事前相談を利用すること」です。
かつては「生前に葬儀の相談をするなんて不吉だ」と忌避される風潮もありましたが、現在では「家族の負担を減らすための前向きな終活」として、多くの方が事前相談を活用しています。
1.複数の葬儀社を冷静に「比較検討」できる
2.具体的な見積もりが手に入り、費用の目途が立つ
3.前会員登録などで割引や特典が受けられるケースが多い
事前相談で確認しておくべきこと
実際に葬儀社のホールや相談窓口に足を運び、以下の点を確認してみましょう。
- 実際に使用する斎場(ホール)の雰囲気や清潔感、控室の設備(宿泊できるか、バリアフリーか等)
- 担当者の接客態度や親しみやすさ
- 実際の希望条件に基づいた「詳細な見積書」の発行
元気なうちだからこそ、何社か比較して納得のいく葬儀社を見つけることができます。
まとめ ~ 行政書士からのおすすめアドバイス
葬儀は、人生の最後を締めくくる大切な儀式であり、残されたご家族が悲しみを乗り越えて前を向くための重要なプロセスです。
しかし、葬儀だけを単体で考えていては思わぬ落とし穴に直面することがあります。実際の現場では、「葬儀の後に続く、膨大な相続手続きや名義変更、遺品整理」こそが、ご遺族にとって大きな負担となるからです。
[生前整理・準備] エンディングノートの作成 / 遺言書の作成 / 葬儀の事前相談
↓
[ご臨終・葬儀] 葬儀の執り行い / 火葬・納骨
↓
[死後の手続き] 死亡届・年金停止 / 口座凍結・相続財産調査 / 遺産分割協議 / 名義変更
行政書士は、遺言書の作成サポートや尊厳死宣言書、死後事務委任契約、そしてお亡くなりになった後の相続手続き(戸籍収集・財産目録作成・遺産分割協議書の作成など)を専門としています。
「葬儀の希望を家族に残したいけれど、遺言書はどう書けばいい?」
「身寄りが少ないので、自分が亡くなった後の葬儀や手続きを第三者に頼みたい(死後事務委任契約)」
「相続で家族が揉めないように、今から準備をしておきたい」
このようなお悩みをお持ちの方は、葬儀の準備とあわせて、ぜひ一度行政書士などの専門家へご相談ください。
「いざというときの備え」を整えることは、決して終わりに向かう作業ではありません。不安を解消し、これからの人生をより安心して自分らしく楽しむための前向きな活動です。
まずはエンディングノートを一ページ開いてみること、あるいは気になる葬儀社の資料を請求してみることから、これからの安心した備えを始めてみませんか?
■ 札幌での相続・遺言のご相談なら
札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
※ なお、紛争の解決についてはうけたまわれません。
【お問い合わせ先】 つしま行政書士事務所
- 所在地:札幌市東区
- 対応エリア:札幌市内および近郊エリア(出張相談も承ります)
- 営業時間:平日 9:00〜18:00(※事前の予約で土日祝や夜間も対応可能です)
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