【亡くなった父親の口座が大変な事に!】誰かが勝手に預金を引き出した場合の対応について 札幌の行政書士やっくんが解説

「えー、父親の口座が大変なことになっている。」「こんなに少ないはずがない。」お父様が亡くなられ、深い悲しみの中で葬儀やさまざまな手続きに追われている中、ふとお父様の預金通帳を確認したところ、「亡くなった直後、あるいは亡くなる直前に、誰かが勝手に多額の預金を引き出している」という事実に気づいた場合どう対処したらいいのでしょうか?

「もしかして、他の相続人が勝手に使い込んでいるのではないか?」 「この引き出されたお金は、もう取り戻せないのだろうか?」 「これからどうやって他の家族と話し合えばいいのか……」

このような疑問や不信感が湧き上がるのは、ごく自然なことです。長年ご家族のために働いて築かれた大切な財産ですから、その行方がわからなくなることは、単なるお金の問題にとどまらず、残されたご家族の間の信頼関係を揺るがす大きな問題に発展しかねません。

しかし、どうかまずは深呼吸をして、落ち着いてください。預金が引き出されたからといって、必ずしもそれが「悪意のある使い込み」であるとは限りませんし、法的な対処法や解決に向けた道筋はしっかりと用意されています。

この記事では、亡くなった方の口座から勝手に預金が引き出されてしまった場合の正しい対処法、確認すべきポイント、そして今後の遺産分割に向けた具体的なステップについて、わかりやすく丁寧に解説いたします。お金の正確な流れを把握し、冷静に対処することが、ご家族の絆を守ることにもつながります。

目次

なぜ、亡くなった人の口座からお金が引き出されるのか?

まずは、「誰が、何の目的で引き出したのか」を冷静に考える必要があります。勝手な引き出しが発覚した際、すぐに「横領だ」「使い込みだ」と決めつけてしまうと、後々の遺産分割協議(相続人全員での話し合い)が感情的な対立に発展してしまいます。

実務上、亡くなる直前や直後に預金が引き出されるケースには、主に以下の4つのパターンが存在します。

1.葬儀費用や入院費用の支払いのため

最も多いのがこのケースです。お父様と同居していたご家族や、メインで介護を担っていた方が、差し迫った支払い(病院の清算、お葬式の準備金、お寺へのお布施など)に充てるために、お父様のキャッシュカードを使って現金を引き出している場合があります。 この場合、引き出した本人に悪意はなく、「家族のために必要な出費だから」という正当な理由で行われています。

2.生前の生活費や介護費用のため(生前引き出しの場合)

亡くなる数ヶ月前から定期的に引き出されている場合、お父様ご自身の生活費や、施設への入居費用、介護サービスの支払いなどに充てられていた可能性が高いです。特に、お父様が認知症などでご自身で銀行に行けず、ご家族にキャッシュカードを預けて「自分の代わりに下ろしてきてくれ」と頼んでいたケース(代理での引き出し)も多く見受けられます。

3.相続税の基礎控除対策(生前贈与)のつもりだった

ご家族が「相続税がかからないように、少しずつ現金を下ろして手元に置いておこう(タンス預金)」と考えて引き出しているケースです。あるいは、お父様ご本人の指示で、孫の教育資金などの名目で引き出されていた可能性もあります。

4.特定の相続人による個人的な使い込み(悪意のある引き出し)

残念ながら、他の相続人(あるいは親族)が、お父様の財産を自分の個人的な借金の返済や遊興費、生活費のために、他の家族に内緒で引き出してしまうケースもゼロではありません。これが法的に最も厄介な「不当利得」や「不法行為」に該当するパターンです。

まずは、「どのパターンに当てはまるのか」を客観的な事実(証拠)に基づいて見極めることが、解決への第一歩となります。

発覚した直後に取るべき「3つの初期対応」

勝手な引き出しに気づいたとき、パニックになってすぐに他の相続人を問い詰めるのは得策ではありません。まずは冷静に、以下の3つのステップを順番に進めてください。

STEP
金融機関への連絡と「口座の凍結」

お父様がお亡くなりになったという事実を、預金口座のある銀行や信用金庫などの金融機関に連絡してください。 金融機関は、名義人の死亡の事実を知った時点で、その口座を「凍結」します。口座が凍結されると、その後の入出金(ATMでの引き出し、公共料金の引き落とし、年金の受け取りなど)が一切できなくなります。 これにより、「これ以上、勝手にお金を引き出される」という被害の拡大を物理的に防ぐことができます。

【注意点】 口座が凍結されると、葬儀費用などの正当な支払いのためであっても、引き出すことができなくなります。もし、当面の支払いに不安がある場合は、事前にご自身の資金で立て替える準備をしておくか、後述する「預貯金の仮払い制度」の利用を検討する必要があります。

STEP
手元にある資料(通帳・キャッシュカードなど)の確保

お父様の遺品の中から、以下のものをできる限り探し出し、安全な場所に保管してください。

① すべての預金通帳(古いものも含めて)

② キャッシュカード

③ 銀行からの郵送物(残高のお知らせなど)

④ 病院の領収書、葬儀社の請求書、介護施設の支払い明細など(後で「何にお金が使われたか」を証明する重要な証拠になります)

STEP
金融機関から「取引推移表(取引履歴)」を取り寄せる

通帳が手元にない場合や、長期間記帳されておらず「合算」されてしまっている場合は、金融機関の窓口で「取引推移表(または取引履歴明細書)」の発行を請求します。 これには、いつ、いくら、どこで(窓口かATMか)、どのような名目で引き出されたかが克明に記録されています。お金の流れを1円単位で正確に把握することは、事実関係を整理する上で極めて重要です。 なお、口座凍結後であっても、法定相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)を持参すれば、相続人の一人から単独でこの履歴を請求することが可能です。

引き出された「時期」による法的な違い

お金の流れを把握できたら、次はそのお金が「いつ」引き出されたのかを確認します。実は、お父様が「亡くなる前」か「亡くなった後」かによって、法律上の扱いが大きく変わってきます。

1.亡くなる「前」に引き出されていた場合

生前の預金は、当然ながらお父様ご自身の財産です。したがって、他の家族が引き出していたとしても、それが「お父様からの頼まれごと(委任)」であったり、「お父様のための支払い」に使われていたりした場合は、法的に何ら問題はありません。

【争点となるポイント】 「本当に親のために使ったのか、それとも自分のために使い込んだのか」が問題となります。 引き出した人が「親の介護費用に使った」と主張する場合、その証拠となる領収書やレシートを提出してもらう必要があります。もし、証拠がなく、明らかに不自然な高額の引き出し(例:介護施設に入っているのに、毎月50万円の現金が引き出されている等)がある場合は、「不当利得」として、引き出した本人に対して返還を求める余地が出てきます。

2.亡くなった「後」に引き出されていた場合

人が亡くなった瞬間に、その人が持っていた財産(預貯金を含む)は、相続人全員の「共有財産」となります。つまり、お父様の口座のお金は、亡くなった時点で、お母様やご兄弟など、相続人全員の共有物になるのです。 したがって、たとえ同居していた長男であっても、他の相続人の同意を得ずに勝手にATMで現金を引き出す行為は、原則として他の相続人の権利を侵害する行為となります。

【争点となるポイント】 亡くなった後の引き出しは、履歴を見れば一目瞭然です。引き出した人が特定できた場合、そのお金は「すでに分割済みの遺産」として扱うか、あるいは「不当利得として相続財産に持ち戻す(返還させる)」かを、遺産分割協議の中で話し合うことになります。

使途不明金への具体的な対処法・話し合いの進め方

事実関係(いつ、いくら引き出されたか)が明らかになったら、いよいよ他の相続人との話し合い(遺産分割協議)に入ります。ここでの対応を間違えると、修復不可能な親族トラブルになりかねません。

STEP
引き出した本人に「使途」を確認する

まずは、引き出したと思われる親族に対して、冷静に事実を確認します。 「通帳の履歴を見たら、〇月〇日に〇〇万円が引き出されているんだけれど、これは何かの支払いに使ってくれたのかな? もし領収書があれば、精算の手続きをしたいから見せてもらえる?」 このように、相手を泥棒扱いするのではなく、「お金の流れを整理するため」というスタンスで尋ねることが大切です。

STEP
正当な理由と領収書がある場合(納得できる場合)

引き出したお金が、お父様の入院費、葬儀費用、未払いの税金などに使われており、その領収書がしっかりと残っている場合は、その金額は「お父様の債務(借金)を立て替え払いしてくれたもの」または「葬儀費用として正当に使われたもの」として扱います。 残った預金などの遺産全体からその金額を差し引き、残りを相続人で公平に分けるという計算(精算)を行えば問題は解決します。簿記や会計の考え方と同じで、収支を正しく合算して整理すれば良いのです。

STEP
使途不明、または個人的な使い込みが発覚した場合

領収書がなく「何に使ったか覚えていない」と言われたり、明らかに自分の住宅ローン返済や車の購入などに使い込んでいたりした場合は、厳しい対応が必要になります。 使い込まれたお金は、法律上「本来存在すべき遺産」として扱います。これを「特別受益の持ち戻し」または「不当利得返還請求」の概念を使って清算します。

※  知っておきたい「預貯金の仮払い制度」

2019年(令和元年)の民法改正により、遺産分割協議が終わる前であっても、各相続人が単独で一定額の預金を引き出せる「仮払い制度」が創設されました。 口座が凍結されて葬儀費用などに困った場合、一つの金融機関につき「死亡時の残高 × 1/3× その相続人の法定相続分(上限150万円)」までは、他の相続人の同意がなくても銀行窓口で引き出すことができます。もし、他の相続人がこの正当な制度を利用して引き出していたのであれば、それは法的に認められた行為ですので、使い込みとは異なります。

当事者同士での解決が難しい場合の対応

お金の記録は残っていても、人間の感情は数字のようには簡単に割り切れません。 「親の面倒をずっと見てきたのだから、これくらいもらって当然だ!」 「いや、勝手に引き出したのだから全額返せ!」 このように話し合いが平行線をたどり、遺産分割協議が一向に進まない場合もあります。

当事者同士の話し合い(協議)で解決できない場合は、家庭裁判所での「遺産分割調停」を利用することになります。調停では、裁判所の調停委員が間に入り、双方の言い分を聞きながら合意点を探っていきます。 それでもまとまらない場合は、最終的に裁判官が決定を下す「審判」や、場合によっては「不当利得返還請求訴訟」といった民事裁判に発展することになります。

しかし、裁判所の手続きに進むということは、時間も費用もかかり、何より「家族としての縁が完全に切れてしまう」という深い傷を残すことになります。可能な限り、裁判に発展する前の段階で、正確な証拠をもとに冷静に話し合い、お互いが少しずつ譲歩して合意(遺産分割協議書の作成)に至ることが、最も望ましい解決策です。

よくあるご質問(Q&A)

亡くなった方の口座からの引き出しに関して、よく寄せられる疑問にお答えします。

葬儀費用の名目ならいくらでも引き出せますか?

いいえ、いくらでも引き出してよいわけではありません。

葬儀費用として遺産から支出することが認められるのは、社会通念上「相当と認められる範囲」に限られます。例えば、一般的な規模を大きく超える過度な葬儀を行ったり、本来喪主が負担すべき費用(初七日以降の法要費や香典返しなど)にまでお父様の預金を勝手に充てたりすると、他の相続人から「不当な使い込み」とみなされ、後日返還を求められる可能性があります。正当な支出であることを証明できるよう、必ず葬儀社などの見積書や領収書をすべて保管しておいてください。

親の死亡後に口座から勝手に引き出すのは違法ですか?

はい、原則として違法(他の相続人の権利侵害)となります。

人が亡くなった瞬間から、その方の預貯金は「相続人全員の共有財産」に変わります。そのため、たとえ同居していたご家族であっても、他の相続人全員の同意を得ずにキャッシュカードなどで勝手に現金を引き出すことは許されません。「家族の金だから」と軽い気持ちで引き出してしまうと、後々「不当利得」として返還請求を受けるなど、深刻な親族トラブルに発展するリスクが非常に高いためご注意ください。

仮払い制度ではいくらまで引き出せますか?

一つの金融機関につき、上限は「150万円」です。

遺産分割協議が完了する前でも、一定額の預金を引き出せる「預貯金の仮払い制度」(民法909条の2)で定められています。

引き出せる金額は以下の計算式で決まります。

引き出し上限額 = 死亡時の預金残高 × 3分の1 × 引き出しを希望する人

の法定相続分

ただし、この計算式で算出された金額がどれだけ高額であっても、一つの金融機関(銀行や信用金庫ごと)から引き出せる上限額は「150万円まで」と規定されています。葬儀費用の支払いや、当面の生活費がどうしても必要な場合に活用できる正当な手続きです。

相続を放棄する予定ですが、引き出せますか?

いいえ、絶対に引き出したり、使ったりしてはいけません。

もし、お父様に多額の借金などがあり家庭裁判所で「相続放棄」の手続きを検討している場合、預金を引き出して自分の生活費などに使ってしまうと、法律上「単純承認(プラスの財産もマイナスの借金もすべて受け入れること)」をしたとみなされてしまいます。一度単純承認とみなされると、後から相続放棄をすることが一切できなくなり、お父様の借金をすべて背負うことになってしまいます。相続放棄を少しでもお考えの場合は、口座には一切手を触れないのが鉄則です。

専門家(行政書士)がサポートできること

亡くなった方の口座トラブルは、悲しみと混乱の中で、複雑な金融手続きや法的な知識を要求されるため、ご遺族の方々にとって精神的にも肉体的にも大きな負担となります。特に近年は、銀行の手続きもデジタル化が進み、窓口の予約を取るだけでも一苦労という「デジタルの壁」に阻まれて疲弊してしまう方も少なくありません。

そのような時、身近な街の法律家である「行政書士」がお力になることができます。

① 煩雑な事実調査と「財産目録」の作成

行政書士は、相続人の方からのご依頼に基づき、戸籍の収集から金融機関への残高証明書や取引履歴の取得手続きをサポート(または代行)いたします。 取り寄せた膨大な取引履歴を丁寧に読み解き、「何が遺産で、何が使途不明金なのか」というお金の動きを正確に把握し、客観的でわかりやすい「財産目録」を作成します。数字の根拠を明確にすることは、感情的な対立を防ぐ最大の防御策になります。

② 遺産分割協議書の作成

ご家族同士での話し合いが無事にまとまりましたら、その合意内容を法的に有効な「遺産分割協議書」として書面にまとめます。誰が、どの財産を、どれだけ受け取るのか(使い込んだ分の精算をどうするのかを含め)、後々のトラブルを完全に防ぐための精緻な書類を作成いたします。

③ 各種名義変更の手続き

協議書が完成した後の、銀行口座の解約・払戻し手続きや、自動車の名義変更など、面倒な事務手続きも包括的にサポートいたします。

【行政書士としてお約束すること】 行政書士は法律により、すでに発生している「紛争(トラブル)」において、一方の代理人となって相手方と交渉したり、裁判を行ったりすることはできません(これは弁護士の専権業務となります)。 しかし、だからこそ行政書士は、特定の誰かの味方をして相手を攻撃するのではなく、「中立的な立場で客観的な事実(お金の流れや法律のルール)を整理し、家族が争族(あらそうぞく)になるのを未然に防ぐためのサポート」に特化しています。

長年、企業で組織内の調整や実務に携わってきた経験、そしてお金の流れを正確に捉える知識をフルに活用し、残されたご家族が再び前を向いて歩めるよう、誠心誠意お手伝いをさせていただきます。

おわりに ~ 一人で抱え込まず、まずはご相談を

亡くなったお父様の口座から預金が引き出されているのを発見した時の動揺は、計り知れないものがあると思います。しかし、焦って行動を起こす前に、まずは「事実関係(履歴)を正確に確認すること」と、「法律のルールを知ること」が何より大切です。

お金の問題は、放置すればするほど事実関係が曖昧になり、解決が困難になっていきます。 「通帳の履歴を見てもよくわからない」 「銀行の手続きが複雑で前に進まない」 「他の家族にどう切り出せばいいか迷っている」

そのようなお悩みがありましたら、どうかお一人で抱え込まず、専門家にご相談ください。複雑な手続きやデジタルの壁を乗り越え、ご家族の大切な財産と絆を守るための第一歩を、一緒に踏み出しましょう。

■ 札幌での相続に関するご相談なら

札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。

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