【札幌発 死後事務委任契約って何だろう?】トラブルや対策・契約での注意点について 札幌の行政書士やっくんが解説

最近、ニュースや雑誌などで「終活」という言葉を目にする機会がすっかり増えました。高齢者の多くの方がお悩みになっていることは、「自分にもしものことがあったら、周りに迷惑をかけたくない」「身寄りがないので、自分が亡くなった後の手続きが不安だ」というような事です。

私たちが亡くなった後、悲しむ間もなく、周囲の人々にはやらなければならない手続きが山のように押し寄せます。お葬式のこと、お墓のこと、病院の未払い費用の清算、そして電気やガス、水道といった生活インフラの解約手続きなど、その数は数十種類にも及ぶと言われています。

とくに札幌をはじめとする北海道では、冬期間に空き家となるご自宅の水道の「水落とし(水抜き)」や、除雪の問題なども絡んでくるため、放置しておくと近隣トラブルや大きな事故に繋がるケースも少なくありません。

そこでおすすめしたいのが、今回テーマとして取り上げる、死後事務委任契約です。

遺言書という言葉はご存知の方も多いと思いますが、死後事務委任契約については「初めて聞いた」「名前は知っているけれど、具体的に何をしてくれるのかわからない」という方が大半ではないでしょうか。

この記事では、札幌で終活をお考えの皆さまへ向けて、死後事務委任契約の基礎知識から、契約の根拠、メリット、絶対に知っておくべきトラブル事例と対策、そして実際の契約の流れまで、行政書士の視点から徹底的に解説いたします。

少し長くなりますが、あなたご自身と、あなたの大切な人を守るための重要な知識です。ぜひ最後までお読みいただき、安心できる未来への第一歩を踏み出してください。

目次

そもそも「死後事務委任契約」って何だろう?

死後事務委任契約とは、一言で表すと「自分が亡くなった後に発生する、さまざまな事務手続き(死後事務)を、生前のうちに信頼できる第三者(受任者)に依頼しておく契約」のことです。

人が亡くなると、預貯金の解約や不動産の名義変更といった「財産(遺産)に関する手続き」のほかに、以下のような事務的な手続きが必ず発生します。

親族や関係者への訃報の連絡

お通夜、お葬式、火葬の手配

お墓への納骨、永代供養の手配

病院や介護施設の未払い費用の清算

入居していた施設や賃貸アパートの退去手続き・遺品整理

電気、ガス、水道、電話、インターネットなどの解約

行政官庁への各種届出(健康保険証の返納、年金の手続きなど)

SNSやパソコン内のデータ(デジタル遺品)の消去・退会手続き

実は、「遺言書」ではこれらの事務手続きを指定することができません。遺言書はあくまで「誰にどの財産を譲るか」という財産の処分や、認知などの身分行為について法的な効力を持たせるためのものだからです。

「お葬式は身内だけでひっそり行ってほしい」「お墓は〇〇霊園に入れてほしい」「スマホの中身は誰にも見られずに処分してほしい」といった希望を遺言書に書くこと(付言事項といいます)は可能ですが、法的な強制力はなく、誰がそれを実行するのかという問題が残ってしまいます。

財産については「遺言書」で、亡くなった後の細々とした手続きについては「死後事務委任契約」でカバーする。この2つをセットで準備することが、完璧な終活の鍵となります。

死後事務委任契約の「法的な根拠」とは?

「自分が死んだ後にも有効な契約なんて、本当に結べるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。少し専門的なお話になりますが、この契約がなぜ有効なのか、その法的な根拠について解説します。

日本の法律(民法第653条)では、原則として「委任契約は、委任者(頼んだ人)または受任者(頼まれた人)の死亡によって終了する」と定められています。つまり、普通に「私の死後の手続きをお願いね」と約束しただけでは、依頼した本人が亡くなった瞬間にその約束(契約)の法的効力は消滅してしまうのです。

しかし、民法の規定は絶対的なものではなく、当事者同士で「別の約束」を交わすことが認められています(契約自由の原則)。

最高裁判所の過去の判例でも、「委任者と受任者との間で、委任者の死亡によっても委任契約を終了させない旨の合意(特約)があった場合は、その契約は死亡後も有効に存続する」と認められています(最高裁平成4年9月22日判決)。

したがって、死後事務委任契約を結ぶ際には、契約書の中に必ず「本契約は委任者の死亡によっても終了しない」という一文(特約)を盛り込みます。これが、死後事務委任契約が法的に有効とされる確固たる根拠です。

生前にしっかりとした形で契約を交わしておくことで、ご自身の死後、受任者が法的根拠をもって堂々と各種の解約手続きや支払い手続きを行うことができるようになります。

どのようなメリットがあるのか?

死後事務委任契約を活用することで、ご本人やご親族には数え切れないほどのメリットがあります。大きく分けて以下の4つのポイントが挙げられます。

1.おひとりさま(単身者)の強い味方になる

生涯未婚の方、配偶者に先立たれた方、お子様がいない方など、いわゆる「おひとりさま」にとって、自分が亡くなった後に誰がお葬式や家の片付けをしてくれるのかは最大の不安要素です。死後事務委任契約を結んでおけば、身寄りがなくてもご自身の希望通りに最期を締めくくることができ、老後の不安から解放されて安心して日々を過ごすことができます。

2.家族や親族への負担を大幅に軽減できる

お子様やご親族がいらっしゃる場合でも、メリットは絶大です。身内が亡くなった直後の悲しみの中、限られた時間で膨大な手続きを行うのは精神的にも肉体的にも過酷です。特に、札幌に住む高齢の親に対して、子どもが東京などの遠方に住んでいる場合、手続きのたびに飛行機で何度も行き来するのは現実的に困難です。専門家に事務手続きを任せることで、ご遺族は「故人を悼む時間」をしっかりと持つことができます。

3.自分の希望を確実に叶えることができる

「葬儀は海洋散骨にしてほしい」「ペットの里親を探してほしい」「友人〇〇さんには必ず訃報を伝えてほしい」といった、ご自身の細やかなこだわりや希望を、法的根拠を持って確実に実現することができます。親族関係が複雑な場合でも、受任者が第三者として客観的に手続きを進めるため、親族間の意見の対立を防ぐ効果もあります。

4. 迅速な手続き・支払いが可能になる

人が亡くなると、通常、その人の銀行口座は凍結されてしまい、遺産分割協議が終わるまでお金を引き出すことが難しくなります(一部仮払い制度はあります)。しかし、死後事務にかかる費用(葬儀費用や病院の支払いなど)をあらかじめ受任者に預託(預けておくこと)しておけば、口座凍結の影響を受けず、迅速に滞りなく支払いを行うことができます。

誰に委任するべきか?

死後事務委任契約は、法律上「誰に依頼しなければならない」という決まりはありません。ご友人やご親族に依頼することも可能ですし、私たち行政書士のような国家資格者に依頼することも、NPO法人などの民間事業者に依頼することもできます。

しかし、死後事務という非常に重要かつ責任の重い手続きを誰に託すかは、慎重に選ばなければなりません。それぞれの選択肢の特徴を見てみましょう。

1.友人や親族に依頼する場合

最も身近で気心が知れている点がメリットですが、専門知識がないため手続きにつまずいてしまう可能性があります。また、依頼した友人がご自身より先に亡くなってしまったり、認知症になってしまったりするリスクも考慮しなければなりません。また、ご親族に頼む場合でも、その親族が他の親族から「なぜ勝手にそんな手続きをしたんだ」「預かったお金を使い込んだのではないか」と疑われ、トラブルに巻き込まれるリスクがあります。

2.NPO法人や民間企業に依頼する場合

近年、高齢者サポートを行うNPO法人や民間企業が増えています。パッケージ化されたサービスで利用しやすい反面、担当者の入れ替わりが激しかったり、後述するような法人の倒産リスクや金銭トラブルのリスクが潜んでいたりする点に注意が必要です。

3.専門家に依頼する場合

最も安全かつ確実な方法として推奨されるのが、行政書士などの国家資格者への依頼です。 私たち行政書士は、法律の専門家として、契約書の作成から死後の煩雑な行政手続きまでを正確かつ迅速に行うノウハウを持っています。また、職務上厳しい倫理規定があり、守秘義務も法律で定められています。 個人事務所であっても、複数の専門家とネットワークを結び、万が一受任者(行政書士本人)に不測の事態が起きた場合に備えたバックアップ体制を整えている事務所を選ぶことで、より確実に契約を履行することが可能です。

無資格者・悪徳業者とのトラブル事例と対策

死後事務委任契約は、人生の終い支度を託す大切な契約ですが、残念ながら近年、国家資格を持たない無資格の民間業者や個人との間でトラブルが発生するケースが社会問題化しています。ここでは、実際に起きているトラブル事例と、身を守るための対策を解説します。

トラブル事例1 預託金(よたくきん)の持ち逃げ・使い込み

死後事務を実行するためには、葬儀費用や未払い費用の清算のために、生前にある程度まとまったお金(預託金)を業者に預けておくのが一般的です(数百万円になることもあります)。しかし、一部の悪質な無資格業者や個人の場合、この預託金を自社の運転資金に流用してしまったり、最悪の場合は持ち逃げして音信不通になってしまったりする事件が起きています。

トラブル事例2 業者の倒産による契約不履行

依頼した民間企業やNPO法人が、ご本人が亡くなる前に経営破綻(倒産)してしまうケースです。法人が消滅すれば当然死後事務は実行されませんし、預けていた預託金が全額戻ってくる保証もありません。長期間にわたる契約であるからこそ、組織の継続性が問われます。

トラブル事例3 不透明な追加料金の請求

契約時の説明が不十分であったために、いざ死後事務が開始された段階で、遺族に対して「この手続きはオプションです」「想定より手間がかかったので追加費用を払ってください」と、法外な追加請求をしてくる業者とのトラブルです。

<トラブルを防ぐための対策・注意点>

① 国家資格者(行政書士・司法書士・弁護士)に依頼する

資格者は、法律に基づく懲戒処分等の対象となるため、預り金の管理に対して非常に厳格です。不正を働けば資格を失うため、民間業者に比べて圧倒的に高い信用性があります。

② 預託金の管理方法を明確にする

預かったお金をどのように保管するのか(専用の信託口座等で分別管理しているかなど)を明確に説明できる相手と契約してください。

③ 必ず「公正証書」で契約を結ぶ

当事者間だけの私製契約書ではなく、公証役場で「公正証書」として契約書を作成してください。公証人という公務員が関与することで、契約内容の適法性が担保され、金融機関や役所での手続きも非常にスムーズになります。

④ 死後事務の「内容」と「報酬」を明確にリスト化する

何をいくらでやってくれるのか、見積書や明細書をしっかり提示してくれる専門家を選びましょう。

    死後事務委任契約で「できること」と「できないこと」

    死後事務委任契約は何でもできる魔法の契約ではありません。法律上、あるいは実務上、「委任できる事務」と「委任できない事務」が明確に分かれています。ここを勘違いしていると、後々トラブルになるため注意が必要です。

    1.委任できる事務(死後事務委任契約でできること)

    主に「事実行為」「身の回りの手続き」が該当します。

    ご遺体の引き取り、関係者への連絡

    葬儀、火葬、納骨、埋葬に関する手配と費用の支払い

    病院、介護施設などの未払い費用の清算と退院・退所手続き

    家財道具、遺品の整理と処分(札幌特有の雪かき業者の手配なども含む)

    賃貸借契約の解除、住居の明け渡し

    水道、電気、ガスなどのライフラインの解約・支払い

    クレジットカードや携帯電話の解約手続き

    住民税や固定資産税などの各種税金の納税(生前に発生していたもの)

    行政機関への各種届出(死亡届の提出代行など)

    ペットの引き渡し手配

    2. 委任できない事務(死後事務委任契約ではできないこと)

    主に「財産の処分(相続)」や「生前の身上監護」に関わることはできません。

    ・ 遺産の分配(相続手続き)

    「この預金は〇〇さんに渡して」といった遺産分割は、死後事務委任ではできません。必ず「遺言書」を作成する必要があります。

    ・ 相続税の申告

    税金の申告は税理士の独占業務であり、かつ相続人自身が行うべきものです。

    ・ 生前の医療同意や身元保証

    死後事務委任契約はあくまで「死後」に効力を発揮するものです。生前の入院時の連帯保証人になったり、手術の同意をしたりすることはできません。これらをカバーするには、「任意後見契約」や「身元保証契約」、「見守り契約」などを別途結ぶ必要があります。

    ・ 法律に違反する行為

    当然ですが、違法な依頼(例:指定した人物に復讐してほしい、違法にゴミを投棄してほしい等)は無効です。

    契約締結までの流れ

    では、実際に死後事務委任契約を結ぶ場合、どのようなステップを踏むのでしょうか。一般的な流れをご説明します。

    STEP
    ご相談・ヒアリング

    まずは、ご自宅・施設への出張訪問にて面談を行います。現在の家族構成、財産の状況、そして「ご自身が亡くなった後に、誰に何をしてもらいたいか」という希望を丁寧にお伺いします。

    STEP
    委任内容と費用の確定

    ヒアリング内容をもとに、どのような事務手続きが必要かをリストアップします。葬儀の規模、遺品整理の範囲などを決定し、必要な預託金(葬儀代などの実費)と、専門家への報酬額のお見積もりを提示いたします。

    STEP
    公正証書による契約書の作成

    内容にご納得いただけましたら、契約書の原案を行政書士が作成します。その後、公証役場へ赴き(または公証人に来てもらい)、公証人の面前で「死後事務委任契約を締結する」旨の公正証書を作成します。ここで必ず、前述した「死亡によっても契約を終了させない」という特約を明記します。

    STEP
    預託金のお預かり

    契約締結後、死後事務の実行に必要な実費(預託金)を指定の口座等にお預けいただきます。このお金はご本人の財産と専門家の財産を厳格に分けて(分別管理)保管いたします。

    STEP
    見守り・定期連絡(生前)

    契約後すぐに手続きが始まるわけではありません。ご本人がお元気なうちは、定期的に(月に1回など)お電話や訪問で安否確認を行う「見守り契約」を併用することが一般的です。これにより、万が一の事態を専門家がいち早く察知できる体制を整えます。

    STEP
    ご逝去・死後事務の実行

    ご逝去の連絡を受けた後、行政書士が速やかに死後事務を開始します。契約書に沿って、お葬式の手配から各種解約手続きまでを責任を持って遂行します。

    STEP
    完了報告と精算

    すべての死後事務が完了した後、行政書士がご遺族や遺言執行者(または相続人)に対して、手続きの完了報告書を作成します。また、預託金からかかった実費を差し引き、1円単位で明細を出して精算します。もし預託金に余りが出た場合は、相続人や遺言で指定された方に返還して、すべて完了となります。

    よくあるご質問(Q&A)

    ここでは、よくある質問にお答えします。

    まだ60代で健康ですが、死後事務委任契約を結ぶのは早すぎますか?

    決して早すぎることはありません。 健康で判断能力がしっかりしている「今」だからこそ、ご自身の希望を明確に整理し、適切な契約を結ぶことができます。認知症などで判断能力が低下してしまうと、契約自体が結べなくなる恐れがあります。実際に60代・70代から準備を始める方は非常に多いです。

    死後事務委任契約だけで安心ですか?遺言書も書いた方がいいですか?

    ぜひ「遺言書」とセットで作成してください。 先ほども触れましたが、死後事務委任契約はあくまで「事務手続き」を行うためのものです。「残った預貯金を誰に譲るか(あるいは寄付するか)」「不動産をどうするか」といった財産の行方を決めるには、遺言書(できれば公正証書遺言)が必須です。この両輪が揃って初めて、完全な安心が得られます。

    預託金(事前にお預けするお金)が足りなくなったらどうなりますか?

    事前に十分な余裕を持った金額を試算します。 不足が生じないよう、物価の上昇なども加味して少し多めに見積もって預託していただくのが一般的です。万が一不足した場合は、相続人の方に請求させていただくこともありますが、そのような事態を避けるため、契約前にしっかりと綿密な資金計画を立てます。余った分は適切に返還・清算されますのでご安心ください。

    親族が遠方(本州)にいるのですが、札幌で亡くなったあとのアパートの片付けなどもお願いできますか?

    はい、可能です。 実はこうしたご相談が非常に増えています。札幌の冬場に空き家となるリスクは大きく、迅速な退去や遺品整理が求められます。地元の遺品整理業者や清掃業者、不動産会社と連携し、遠方のご親族に代わって行政書士が現場に立ち会い、責任を持って明け渡しまで完了させることが可能です。

    おわりに ~ 札幌での安心な終活・死後事務委任契約はお任せください

    いかがでしたでしょうか。死後事務委任契約は、ご自身が最期を迎えた後、周囲に負担をかけず、かつ自分の希望通りに「人生の幕引き」を行うための非常に強力で有効な手段です。

    「まだ先のことだから」「縁起でもないから」と後回しにしてしまうお気持ちもわかります。しかし、少しだけ勇気を出して準備をしておくことで、「これでもう、いつ何があっても大丈夫」という、何にも代えがたい安心感を得ることができます。残りの人生を、不安なく、より明るく楽しむための一歩が「終活」なのです。

    インターネット上には様々な情報が溢れており、「誰に相談すればいいのかわからない」と迷われる方も多いと思います。とくに資格を持たない業者とのトラブルに関するニュースを見ると、不安になるのも無理はありません。

    私たち行政書士は、国家資格者としての誇りと責任を持って、皆様の大切な想いと手続きをサポートいたします。法律の専門家であると同時に、一番身近な「街の法律家」として、おひとりおひとりのお話をじっくりと伺い、最適なプランをご提案させていただきます。

    札幌市内で「死後事務委任契約」や「遺言書作成」「終活全般」についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度、当事務所までお気軽にご相談ください。

    皆さまの不安を安心に変えるお手伝いができる日を、心よりお待ち申し上げております。

    ■ 札幌での相続・遺言のご相談なら

    札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。

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