ここ数年、札幌市内でも食料品や電気代、ガソリン代などの値上がりが続いており、「生活費の負担が重くなった」と実感されている方も多いのではないでしょうか。特に、これから結婚や出産、子育て、マイホームの購入といったライフイベントを迎える若い世代(お子様やお孫様)にとって、この物価高は非常に切実な問題です。
そのような姿を見て、「自分たちの資産に余裕があるうちに、子供や孫に資金を援助して生活を助けてあげたい」と考える親御様・祖父母様が増えています。
しかし、ここで注意しなければならないのが贈与税の存在です。良かれと思ってまとまったお金を手渡してしまうと、思わぬ高額な税金が課され、せっかくの応援資金が目減りしてしまうことがあります。
そこで今回は、物価高に負けずに大切な家族へ資産を届けるための「 贈与税回避 」(非課税で贈与する)ための8つの具体的な方法」について、行政書士でありファイナンシャルプランナーでもある私から、わかりやすく、詳細に解説いたします。
それぞれの制度のメリットだけでなく、利用する際の注意点や最新の税制動向(令和8年現在の情報)についても網羅しておりますので、ぜひ最後までご一読いただき、ご家族の明るい未来のためにお役立てください。
なぜ今、生前贈与なのか?物価高時代の家族支援
はじめに、なぜ今「生前贈与」がこれほど注目されているのか、その背景について簡単に触れておきます。
これまでは「資産は自分が亡くなった後に相続させればいい」と考えるのが一般的でした。しかし、現在の記録的な物価高の中では、「今、一番お金が必要な時期にサポートを受けること」が、お子様やお孫様にとって最大の助けになります。
生前贈与を上手に活用することには、以下のような3つの大きなメリットがあります。
・ 子供や孫の経済的・精神的負担を今すぐ軽減できる
・ 将来の相続財産を減らすことで、将来の相続税対策(節税)になる
・ お金の使い道を自分の目で確認でき、感謝の言葉を直接聞くことができる
ただし、日本の贈与税は「1人の人が1年間(1月1日〜12月31日)にもらった財産の合計額」に対して課税される仕組みになっており、その税率は相続税よりも高く設定されています。だからこそ、国が用意している「非課税の特例」や「正しい仕組み」を正しく理解し、賢く活用することが不可欠なのです。
それでは、具体的な8つの方法を順番に見ていきましょう。
贈与税を回避する8つの具体的アプローチ
ここからは、贈与税を課されることなく、まとまった資金を子や孫に渡すための8つの手法を解説します。
最もポピュラーで、誰でも今すぐ始められるのが「暦年贈与」です。
贈与税には、受贈者(お金をもらう人)1人につき、年間110万円の基礎控除が認められています。つまり、1年間に受け取る贈与額が110万円以下であれば、贈与税はかかりませんし、税務署への申告も不要です。
暦年贈与のポイントと活用例
この110万円の枠は、「もらう人」を基準に計算します。
例えば、お父様から子供へ110万円、お母様から同じ子供へ110万円を同じ年に贈与した場合、子供がもらった総額は220万円になってしまうため、110万円を超えた部分(110万円)に対して贈与税がかかります。
逆に、おじい様から「孫Aに110万円」「孫Bに110万円」「孫Cに110万円」というように、あげる相手を分散させれば、年間計330万円を完全に非課税で動かすことが可能です。これを10年間続ければ、総額3,300万円を無税でお孫様たちの世代に移転させることができます。
【重要】定期贈与とみなされないための注意点
税務署から「最初から1,100万円を渡す約束で、毎年110万円ずつ分割払いにしていただけ(定期贈与)」とみなされると、一括で高額な贈与税を課されるリスクがあります。これを防ぐために、以下の対策を徹底してください。
① 贈与契約書を毎年作成する(その都度、お互いの合意があった証明を残す)
② 現金手渡しではなく、銀行振込を利用する(通帳に記録を残す)
③ 毎年、異なる時期・異なる金額(例:ある年は105万円、翌年は110万円など)で実行する
④ 子供や孫自身が管理・使用している口座に振り込む(親が勝手に作った「名義預金」はNG)
また、「相続開始前7年以内の贈与は、将来の相続財産に持ち戻して計算する」という税制改正のルール(段階的に延長中)があります。そのため、暦年贈与を検討されている場合は、できるだけ健康で元気なうちから、早期にスタートすることが最大のポイントとなります。
2つ目の方法は「相続時精算課税制度」です。これは、原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子や孫に対して財産を贈与する際に選択できる制度です。
最大の特徴は、通算2,500万円までの贈与がその場では非課税(無税)になるという点です。さらに、2024年(令和6年)の法改正により、この制度を選んだ後も「年間110万円の基礎控除」が別途受けられるようになり、使い勝手が飛躍的に向上しました。
制度の仕組みとメリット
2,500万円までの大型贈与については、贈与時点では税金がかかりません。その代わり、贈与者が亡くなった時(将来の相続時)に、過去にこの制度で贈与した財産の価額を相続財産に「足し戻して」相続税を計算し、精算します。
「結局、将来税金がかかるなら意味がないのでは?」と思われるかもしれませんが、以下のような大きなメリットがあります。
① 物価高で今すぐまとまった資金(数千万円規模)が必要な子供を、タイムリーに助けられる
② 将来値上がりが確実な資産(成長株や開発地域の土地など)を今のうちに贈与しておけば、将来の相続税を大幅に抑えられる(相続時の計算は「贈与時の価値」で行うため)
③ 毎年110万円以下の贈与であれば、将来の持ち戻しの対象にもならず、完全に非課税となる(暦年贈与の7年持ち戻しのようなペナルティがない)
注意点 一度選ぶと「暦年贈与」に戻れない
この制度を適用するためには、贈与を受けた翌年の確定申告時期に、税務署へ「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
最大の注意点は、同じ親子(または祖父母・孫)間において、一度この制度を選択すると、二度と「暦年贈与(従来の年間110万円基礎控除)」へ戻すことができないという点です。将来の相続税の試算を行わずに安易に選択すると、かえってトータルの税負担が増えるケースもあるため、実行前に専門家へ相談することを強くおすすめします。
「子供の毎月の生活費が足りないみたいだから、数万円援助してあげたい」「孫の今学期の授業料を代わりに支払ってあげたい」といった日常的な援助であれば、わざわざ難しい特例を使わなくても、元々贈与税はかかりません。
民法上、扶養義務者(親や祖父母など)の間では、お互いに扶養する義務があります。そのため、「通常必要と認められる生活費や教育費」を、必要な都度直接支払う場合、贈与税の課税対象から除外されると国税庁の規定で定められています。
非課税となる具体的な範囲
・ 生活費: 日常の食費、光熱費、家賃の援助、医療費、出産費用など
・ 教育費: 学校の入学金、授業料、学用品代、修学旅行費、塾の費用や予備校代など
やってしまいがちなNG例と対策
ここで最も重要なキーワードは「必要な都度」という点です。
「これから大学4年間でかかるであろう費用」として、事前に500万円を子供の口座に一括で振り込んでしまうと、それは「都度贈与」とは認められず、全額に贈与税が課されてしまいます。
生活費や教育費を援助する際は、以下の点に気をつけてください。
① お金が必要になったタイミングで、その都度、必要な金額だけを渡す
② 可能であれば、学校や塾、医療機関の口座へ、親や祖父母の名義から直接振り込む
③ 振込明細書や領収書、学校からの請求書などをしっかりと保管しておく
「手渡しで生活費を補填している」という場合でも、お孫様の通帳におじい様名義から毎月定額が振り込まれていると、税務署から使途を疑われることがあります。「今月の生活費の足しに」という名目であっても、それが貯金に回ってしまえば課税対象になりますので、あくまで「実費の支払い」に充てることが原則です。
札幌市内でも新築マンションや一戸建ての価格が高騰しており、若い世代が自力だけでマイホームを購入することが難しくなっています。そこで非常に効果的なのが、「住宅取得等資金の贈与税の非課税特例」です。
この制度は、父母や祖父母から、自分が住むための住宅の新築・購入・リフォーム資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば最大1,000万円まで贈与税が非課税になるというものです。現行の税制において、令和8年(2026年)12月31日までの贈与が対象となる時限措置です。
非課税限度額の基準
建物の性能によって、非課税となる上限枠が異なります。
| 住宅の種類 | 非課税限度額 | 主な要件(省エネ性能など) |
| 省エネ等住宅 | 1,000万円 | 断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上など、 一定の基準を満たす証明がある住宅 |
| 一般住宅 | 500万円 | 上記の省エネ基準に満たない、または証明書がない通常の住宅 |
※ この特例は、前述した「暦年贈与の110万円」や「相続時精算課税制度の2,500万円」と併用が可能です。つまり、省エネ住宅であれば、最大1,110万円(または3,500万円)まで一気に無税で援助することができます。
主な適用要件と失敗しないための注意点
非常に強力な特例ですが、要件が細かく設定されているため、1つでもミスをすると特例が受けられなくなります。
① 受贈者(子・孫)の要件
贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であり、その年の合計所得金額が2,000万円以下であること(床面積40㎡〜50㎡未満の場合は1,000万円以下)。
② タイミングの厳守
必ず「家を契約して代金を支払う前(引き渡し前)」に贈与を実行しなければなりません。先に住宅ローンを組んで購入し、後からその返済資金としてお金を渡した場合は、特例の対象外(単なる現金贈与)になります。
③ 入居期限
贈与を受けた年の「翌年3月15日」までに、その住宅に実際に居住すること(または確実に居住する見込みであること)。
④ 確定申告が必須
税金が0円になる場合であっても、必ず贈与の翌年2月1日〜3月15日の間に税務署へ確定申告を行う必要があります。申告を忘れると、後から通常通りの高額な贈与税の請求書が届くことになります。
お孫様の将来のために、まとまった教育資金を一度にプレゼントしたい場合に非常に効果的なのが「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」です。
この制度は長年、最大1,500万円の枠で運用されてきましたが、税制改正にともない、本年4月1日からは「非課税の上限枠が最大1,000万円」となる新しい制度に移行しました。
新制度でも、30歳未満の子や孫に対して、父母や祖父母が教育資金を信託銀行などの金融機関の専用口座に一括で預けることで、贈与税が完全に非課税となります(学校以外の塾や習い事などの上限は、これまで通り一定の制限が設けられます)。
新制度のメリットと活用法
物価高の影響は、大学の授業料や仕送り、教材費といった教育の現場にも重くのしかかっています。この特例を使えば、まとまったお金(最大1,000万円)を今のうちに一括で子や孫の口座に移せるため、将来の相続財産を大きく減らす(=相続税対策になる)という大きなメリットがあります。
また、口座からお金を引き出す際には「学校の領収書」などを銀行に提出する必要があるため、あげる側(親や祖父母)としても「確実に子供の学びのために使ってもらえる」という安心感が得られるのが特徴です。
新制度で特に注意すべき「30歳での使い切りルール」
枠が1,000万円に縮小された新制度だからこそ、これまで以上に気をつけたいのが「使い切り」のタイミングです。
この制度で贈与された資金は、原則としてお孫様が30歳に達した時点で口座が終了します。もしその時点で、使い切れずに口座に残ってしまった残高(使い残し)がある場合、その残高に対してその年の贈与税が課税されてしまうというペナルティがあります。
① まだお孫様が小さく、これから高校・大学と大きな進学費用が控えている場合は、1,000万円の枠をフルに活用しても使い切れる可能性が高いでしょう。
② しかし、すでにお孫様が20代半ばなど、30歳までの期間が短い場合には、あえてこの一括特例を使わずに、前述した「生活費・教育費の都度贈与」を選び、入学金や授業料の振込用紙が届くたびにその都度必要額を支払ってあげるほうが、残高を気にするリスクがなく、確実で安全なアプローチとなります。
教育資金の特例と並んで、若い世代の大きなライフイベントを国が後押しする仕組みが「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」です。
一時は「制度廃止か」と囁かれていたこの特例ですが、政府の少子化対策・子育て支援の強化(こども未来戦略)の流れを受け、2027年(令和9年)3月31日まで、適用期限が2年間延長されることになりました。
18歳以上50歳未満の子や孫に対し、結婚や出産、子育ての資金として一括贈与を行う場合、信託銀行などの専用口座を通じて受贈者(もらう人)1人につき最大1,000万円(うち結婚資金は300万円が上限)まで贈与税が非課税になります。
どのような費用が非課税になる?
この制度で認められる費用は、結婚から「小学校に入学する前まで」の育児に関する費用が中心となります。
・ 結婚資金(上限300万円)
挙式費用や披露宴の代金、衣装代、新居に引っ越すための費用や賃貸の敷金・礼金など
・ 子育て資金
不妊治療費、妊婦健診費、分娩費(出産費用)、子供の医療費や予防接種代、保育園や幼稚園の保育料、ベビーシッター代など
※ 結婚祝いの家具・家電や、結婚指輪の購入費などは「継続的に発生する費用ではない」という理由から対象外となります。
専門家が明かす、利用実績が少ない「隠れた注意点」
2年延長された心強い味方ではありますが、実は実務においてこの特例の利用件数はそれほど多くありません。その理由は、以下の2つのルールがあるためです。
① 使い切れないと50歳で課税される
お孫様が50歳に達した時点で、口座に使い切れなかった残高(使い残し)がある場合、その残高に対してその年の贈与税が課税されてしまいます。
② 途中で亡くなると相続税の対象になる
資金を口座に預けた親や祖父母が、使い切る前に亡くなってしまった場合、残った金額は「亡くなった人の相続財産」に足し戻され、相続税の課税対象になってしまいます。
結論 やはり都度贈与が一番手軽で確実
では、どうすれば物価高の中の結婚や出産をノーリスクで応援できるでしょうか。
ここでもやはり、前述した、生活費・教育費の都度贈与が最大の選択肢となります。 わざわざ銀行に専用口座を作って領収書を何度も提出する手間をかけなくても、結婚式場や病院、保育園から請求書が届いたタイミングで、親や祖父母がその都度、直接その費用を支払ってあげれば、元々贈与税は1円もかからないからです。
「将来の相続税対策として、今すぐ確実に1,000万円を自分の手元から切り離したい」という明確な目的がある場合を除けば、お祝い事や出産のタイミングに合わせて、その都度応援してあげるアプローチが最も親族間でスムーズに進む方法と言えます。
日常生活の中で、お金を手渡す機会は他にもたくさんあります。例えば、結婚祝い、出産祝い、入学祝い、新築祝い、あるいは誕生日やクリスマスのプレゼント、お年玉などです。
これらについても、国税庁の基本通達において「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物又は見舞い等のための金品で、法律上扶養義務のない者相互間のものであっても、社交上の必要によるものであり、かつ、贈答を行った者と受けた者との関係等に照らし常識の範囲内(社会的地位や親族関係に照らして相当と認められるもの)と認められるものは、贈与税がかからない」とされています。
「常識の範囲内」とは具体的にいくら?
明確に「〇〇万円まで」という法律上の数字はありませんが、一般の家庭の感覚において不自然ではない金額かどうかが基準になります。
① お年玉
数千円〜数万円程度であれば全く問題ありませんが、孫にお年玉として100万円を手渡した場合は、常識の範囲を超えているとみなされ、他の贈与と合算されて課税対象になる可能性が極めて高いです。
② 入学祝い・就職祝い
大学の入学祝いや就職祝いで、新生活の準備(スーツやパソコンの購入、引っ越し代など)を考慮して20万〜50万円程度を包むことは、一般的な範囲内として認められやすい傾向にあります。
これらのお祝い金についても、念のため「〇〇祝い」と書いた祝儀袋で手渡す、あるいは通帳の振込メッセージ欄に「ニュウガクイワイ」と記載して記録を残しておくことで、後々の税務調査で「生活費や教育費、あるいは社交上の祝物である」という弁明が立ちやすくなります。
最後の8つ目は、厳密には生前贈与の非課税枠そのものではありませんが、「実質的に、無税または非常に低い税負担で、子供や孫に確実に資金を遺す(渡す)テクニック」として、資産家の間で非常によく使われている「生命保険」を活用したスキームです。
生前にお金を直接渡すと贈与税がかかりますが、親や祖父母が資金を出し、生命保険の仕組みを利用することで、税金の種類をコントロールしたり、非課税枠を作ったりすることができます。主となる手法は2つあります。
A. 相続税の非課税枠(500万円×法定相続人数)の活用
親(または祖父母)が契約者および被保険者となり、子供を受取人とした終身保険等に加入します。
将来、親が亡くなった時に子供が受け取る死亡保険金は、「みなし相続財産」となり、相続税の対象になりますが、生命保険には「500万円 × 法定相続人の数」という強力な非課税枠が用意されています。
例えば、法定相続人が子供2人の場合、1,000万円までの保険金は完全に無税で子供の手元に渡ります。預貯金のまま遺すと1円から相続税の対象になりますが、生命保険の形に変えるだけで、一瞬で非課税枠を作ることができるのです。
B. 暦年贈与型生命保険(贈与税の基礎控除と保険の組み合わせ)
親や祖父母から、子供や孫へ毎年110万円(暦年贈与の範囲内)を贈与します。
そして、お金をもらった子供や孫自身が「契約者」および「受取人」となり、親や祖父母を「被保険者」とする生命保険(終身保険や養老保険など)の保険料を、そのもらったお金から支払います。
この形をとると、将来おじい様やお父様が亡くなって保険金が降りてきたとき、受け取った子供(契約者=受取人)にかかる税金は、贈与税や相続税ではなく、最も税負担の軽い「所得税(一時所得)」になります。
一時所得には50万円の特別控除があり、さらに課税対象になる金額が2分の1に半減されるという優遇措置があるため、普通に現金を贈与したり相続させたりするよりも、はるかに少ない税負担(場合によっては無税)で、まとまった資金をお子様・お孫様に届けることができます。
※ ただし、このスキームを成立させるためには、子供や孫自身が自分の意思で保険契約を結び、贈与されたお金を使って自ら保険料を支払っているという「実態」が必要です。通帳の管理や契約手続きを専門家の指導のもと正しく行う必要があります。
行政書士がアドバイスする、贈与成功のための「3つの鉄則」
ここまで8つの方法を見てきましたが、これらを活用してトラブルなく、確実に子供や孫の生活を助けるためには、絶対に守るべき法律上・実務上の「鉄則」があります。これらを怠ると、良かれと思った親心が、将来の親族間トラブルや税務署との戦いという悲しい結果を招いてしまいます。
鉄則1 必ず「証拠(契約書と口座記録)」を残す
贈与は、あげる人ともらう人の、双方の合意で成立する契約です。
税務署の調査が入った際に、「これは数年前に口頭で約束して渡したものです」と言い張っても、客観的な証拠がなければ一切認められません。
① 贈与契約書を必ず作成する
誰が、誰に、いつ、いくらを、どういう方法で贈与したのかを明記し、お互いに署名・捺印した書面を一部ずつ保管します。
② 銀行振込を徹底する
「手渡しのほうが税務署にばれないだろう」というのは大きな間違いです。過去の出入金履歴の整合性から必ず疑われます。堂々と子供名義の口座へ振り込み、通帳に確実な足跡を残すことが、最大の自己防衛になります。
鉄則2 子供や孫の「名義預金」にしない
非常によくある失敗が、親や祖父母が、子供や孫に内緒で彼らの名前の口座(通帳)を作り、そこに毎年110万円ずつお金を貯めて、成人した時や結婚した時に「実はこれ、お前のために貯めておいたよ」と通帳を手渡すケースです。
これは法律上・税務上、贈与とは認められません。なぜなら、もらう本人がその口座の存在を知らず、印鑑や通帳を親が管理しているため、実質的には依然として「親の資産」であるとみなされるからです。これを「名義預金」と呼びます。
名義預金と判定されると、親が亡くなった際、すべて親の相続財産としてカウントされ、過去に遡って高い相続税が課されることになります。
贈与を行う場合は、必ず「子供や孫自身が普段から使っており、本人が通帳や印鑑、キャッシュカードを管理している口座」に対して振込を行ってください。
鉄則3 他の親族(兄弟姉妹など)への配慮を忘れない
お金の問題は、税金だけでなく、家族の感情・人間関係にも深く関わります。
例えば、2人の子供(長男・長女)がいる家庭で、「長男の子供(孫)が札幌で家を建てるから」という理由で、長男側にだけ住宅資金として1,000万円の生前贈与を行ったとします。
この事実を長女側が知ったとき、「なぜ兄さんの家だけずるいのか」「将来の相続のとき、その分を差し引いて遺産を分けてもくれないと不公平だ」といった不満が爆発し、親が亡くなった後の遺産分割協議が泥沼化することが非常によくあります(法律上、生前贈与は「特別受益」として、遺産分割の際に問題になるケースがあります)。
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生前贈与を行う際は、特定の子供だけに偏りすぎないよう配慮するか、あるいは「なぜ今、この子にこれだけの支援を行うのか」を家族全員が集まる場でオープンに話し合い、納得を得ておく、もしくは遺言書を作成してバランスをとるなどのトータルケアが極めて重要です。
まとめ ~ 大切な資産を安心して次世代へつなぐために
今回は、札幌発の物価高に直面するお子様やお孫様を経済的にバックアップするための、贈与税を回避する8つの方法について詳しく解説いたしました。
親が子を想い、祖父母が孫の行く末を案じて資産を分け与える行為は、大変素晴らしいことであり、国もそれを後押しするために様々な非課税特例を設けています。しかし、法律の要件や期限(特に住宅特例の令和8年末や、教育資金特例の令和8年3月末終了など)を正しく把握していないと、想定外の税務リスクを背負い込むことになりかねません。
「我が家の場合は、暦年贈与と住宅特例のどちらを組み合わせるのが一番お得なのだろう?」
「子供たちが将来揉めないように、今のうちにきちんとした書面を作っておきたい」
「何年も前に子供名義で作った通帳があるけれど、これは名義預金になってしまっているだろうか?」
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