「親が住んでいる札幌の実家、いずれは自分が相続するのだろうけれど、具体的にどうすればいいかわからない」 「兄弟は独立して道外や別の市に住んでいる。実家を継ぐ人はいないけれど、どうにかなるだろう」
そのように、実家の相続について「まだ先のこと」「その時になればなんとかなる」と考えていませんか?
実は、相続トラブルの中で最も厄介で、最も多くの方を悩ませるのが「不動産(実家)の相続」です。現金とは違い、物理的に綺麗に分けることができない不動産は、少しの知識不足や準備不足が原因で、仲の良かった家族の間に深い亀裂を生んでしまう「争族(そうぞく)」の火種になりかねません。
特に札幌をはじめとする北海道の不動産相続においては、雪国特有の「空き家リスク」も重なり、放置することで取り返しのつかない事態に発展するケースが増加しています。
本記事では、実家の相続を将来控えている方、あるいは現在直面している方に向けて、絶対に知っておくべき「不動産相続の危険な落とし穴」と、札幌ならではの注意点、そしてトラブルを未然に防ぐための具体的な対策を、専門家の視点から徹底的に解説します。
なぜ「実家の相続」はトラブルになりやすいのか?
「うちは財産と呼べるようなものは実家の土地と建物くらいで、現金も少ないから揉めるはずがない」
これは、相続相談において非常に多くの方が口にされる言葉です。しかし、実はこの「財産が実家(不動産)しかない」という状況こそが、最も相続トラブルに発展しやすい危険なパターンなのです。最高裁判所の司法統計でも、遺産分割事件の約7割以上が「遺産総額5,000万円以下」の家庭で起きており、その多くを不動産が占めているというデータがあります。
なぜ、実家の相続は揉めるのでしょうか。それには3つの大きな理由があります。
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現金や預貯金であれば、1,000万円を兄弟2人で500万円ずつ、1円単位まで平等に分けることが可能です。しかし、家や土地はそうはいきません。建物を真っ二つに切ることはできませんし、土地も無闇に分筆(切り分けること)してしまえば、使い勝手が悪くなり資産価値が暴落してしまいます。
不動産の価値は「誰が・どの基準で評価するか」によって大きく変わります。
・ 固定資産税評価額(税金の計算のベース。実勢価格より安い)
・ 路線価(相続税の計算のベース)
・ 実勢価格(実際に市場で売買される価格)
実家をもらう側の相続人は「固定資産税評価額くらいだろう(安く見積もりたい)」と考え、お金でもらいたい側の相続人は「不動産屋の査定(実勢価格)で計算すべきだ(高く見積もりたい)」と主張するため、前提となる金額から意見が衝突してしまうのです。
「長男である自分が親と同居して介護をしてきたのだから、実家を相続するのは当然だ」という主張に対し、「親の面倒を見てくれたことには感謝するけれど、法定相続分はきっちり現金で払ってほしい」と他の兄弟から要求されるケースは後を絶ちません。 また、誰も住まない場合「誰が固定資産税を払うのか」「誰が草刈りや修繕をするのか」という負担の押し付け合いが発生します。
絶対にやってはいけない「とりあえず共有名義」
遺産分割の話し合い(遺産分割協議)で意見がまとまらず、疲弊してしまった相続人がつい手を出してしまう最悪の選択肢があります。それが「不動産の共有名義」です。
「とりあえず、兄弟3人で3分の1ずつの共有名義にしておこう。売るにしても住むにしても、あとでゆっくり考えればいい」
これは、問題を先送りしているだけであり、将来のトラブルを雪だるま式に巨大化させる非常に危険な行為です。
共有名義にした不動産には、法律上厳しい制限がかかります。
① 売却や建替えが自由にできない
不動産全体を売却したり、取り壊したりするには、共有者全員の同意が必要です。兄弟のうち
1人でも「親との思い出があるから売りたくない」と反対すれば、実家を売ることはできなくなります。
② 大規模な修繕にも過半数の同意が必要
雨漏りの修理や屋根の葺き替えなど、現状を維持するための行為(保存行為)は単独でできますが、リフォームなどの改良行為には共有者の持ち分の過半数の同意が必要です。
③ 二次相続で共有者がネズミ算式に増える
これが最も恐ろしい点です。共有者の1人(例えば長男)が亡くなると、その3分の1の持ち分は、長男の配偶者や子供たちに相続されます。年月が経てば経つほど、見知らぬ甥や姪、場合によっては会ったこともない親戚が共有者に名を連ねるようになります。数十人の共有者になってしまい、全員の印鑑証明書を集めることが事実上不可能になり、完全に「塩漬けの不動産(負動産)」となってしまうのです。
共有名義は「百害あって一利なし」です。相続の際は、必ず「誰か1人の単独名義」にするか、「売却して現金を分ける(換価分割)」のいずれかを選択することを強くお勧めします。
【札幌特有の落とし穴】空き家放置の恐るべきリスク
ここからは、札幌や北海道内にある実家を相続した場合の、地域特有の落とし穴について解説します。 相続した実家に誰も住む予定がなく「空き家」になってしまうケースが急増していますが、札幌での空き家放置は、本州の雪の降らない地域と比べて圧倒的にリスクが高くなります。
札幌の冬の厳しさは、皆さまご承知の通りです。人が住んで生活の熱がある家は雪が適度に溶けたり滑り落ちたりしますが、人が住まなくなった空き家は冷え切り、屋根に尋常ではない量の雪が積もります。
・ 雪の重みによる家屋の歪み・倒壊
・ 落雪による隣家の壁や窓ガラスの破損
・ 隣の敷地への落雪・落氷によるトラブル
もし、放置した実家の屋根から落ちた氷塊が隣人を直撃したり、通行人に怪我をさせたりした場合、所有者である相続人は莫大な損害賠償責任を問われる可能性があります。 これを防ぐためには、定期的に業者に雪下ろしを依頼しなければならず、毎年数万円〜十数万円の維持管理費(雪下ろし代、排雪代)が重くのしかかります。
冬期間に家を空ける際、北海道民の常識である「水落とし(水抜き)」。空き家になった実家の水落としが不十分だと、真冬に水道管が凍結して破裂します。春になって氷が溶けると家の中が水浸しになり、床や壁が腐ってカビだらけになります。こうなると、いざ家を売却しようとしても、数百万円の修繕費が必要になるか、解体して更地にするしかなくなってしまいます。
国も空き家問題に本腰を入れており、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されています。 倒壊の危険がある、衛生上有害である、景観を著しく損なっていると行政から判断され「特定空家」に指定され、勧告を受けると、これまで土地に適用されていた「住宅用地の特例(固定資産税が6分の1になる減税措置)」が解除されてしまいます。 つまり、何もしないただの空き家なのに、翌年から固定資産税が突然最大6倍に跳ね上がるという事態に陥るのです。
知らないと罰金も!「相続登記の義務化」(2024年4月スタート)
不動産相続における最大のトピックとして、絶対に知っておかなければならないのが「相続登記(名義変更)の義務化」です。これは2024年(令和6年)4月1日からスタートした新しい法律です。
これまでは、不動産の相続登記(親の名義から自分の名義に変更すること)は「任意」であり、いつまでにやらなければならないという期限もありませんでした。そのため、手続きの手間や費用を惜しんで、亡くなった祖父や曽祖父の名義のまま放置されている土地が日本全国に溢れ返り、「所有者不明土地問題(九州の面積を上回る広さとも言われています)」を引き起こしました。
この問題を解決するため、法律が改正されました。
相続登記の義務化のポイント
① 3年以内の登記が義務に
不動産を相続したこと(親が亡くなり、自分が不動産を取得したこと)を知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。
② 違反すると10万円以下の過料(罰金のようなもの)
正当な理由なく期限内に相続登記を申請しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。
③ 過去の相続にも「遡って」適用される
これが非常に重要です。「2024年4月以降に発生した相続」だけではなく、「それ以前に発生して、まだ名義変更が終わっていない不動産」もすべて義務化の対象となります。過去の分については「2024年4月1日」または「相続を知った日」のいずれか遅い日から3年以内(つまり、多くの場合2027年3月末まで)に登記をする必要があります。
「何年も前に亡くなった親の実家、まだ親の名義のままだな…」と思い当たる方は、早急に手続きに向けた準備を始める必要があります。
相続トラブルを防ぐための3つの分割方法
では、不動産をどのように分ければ争いを防ぐことができるのでしょうか。遺産分割には、大きく分けて3つの方法があります。状況に合わせて最適なものを選ぶことが重要です。
不動産はそのままで、誰か1人が単独で相続する方法です。 「長男が実家の土地と建物を相続し、次男は現金1,000万円を相続する」といった形です。 財産の中に不動産と同等の価値のある現金や有価証券が含まれている場合は、この方法が最もシンプルでトラブルになりません。
実家を相続する人が、他の相続人に対して「自分のポケットマネーから代償金(現金)を支払う」ことで清算する方法です。 例えば、評価額2,000万円の実家を長男が単独で相続する代わりに、次男に対して長男自身の貯金から1,000万円を支払います。 この方法は、実家を残しつつ平等に分けることができますが、「実家を継ぐ人に十分な現金(資力)があること」が絶対条件となります。
誰も実家に住む予定がない場合によく使われる方法です。 実家を売却し、諸経費(仲介手数料や税金など)を差し引いて残った現金を、兄弟で平等に分け合います。 公平に1円単位で分けられるため後腐れがありませんが、「売れるまでの間、誰が管理し、誰が代表して手続きを行うか」を事前にしっかりと決めておく(遺産分割協議書に明記する)必要があります。
実家の相続で後悔しないための事前対策
相続(争族)トラブルを回避するための最善の策は、「親が元気なうちに、家族で話し合い、対策をしておくこと」に尽きます。親が亡くなってから(相続が開始してから)できる対策は限られていますが、生前であれば様々な選択肢があります。
まずは「実家の現状」を正確に把握しましょう。
・ 実家の名義は本当に親のものか?(祖父の名義のままになっていないか?)
・ 住宅ローンなどの抵当権は抹消されているか?
・ 土地の境界線ははっきりしているか?(境界未定の土地は売却時に揉めます)
誰に実家を継がせたいのか、親の意思を法的に有効な形で残すのが「遺言書」です。 特に「同居している長女に実家を残したい」「面倒を見てくれた息子の嫁にも財産を少し分けてあげたい」など、法定相続分とは異なる分け方を希望する場合は必須です。 自筆証書遺言は形式不備で無効になるリスクがあるため、公証役場で作成する「公正証書遺言」を強く推奨します。
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最近注目されているのが「家族信託(民事信託)」です。親が認知症になってしまうと、実家を売ることも修繕することもできなくなってしまいます(口座も凍結されます)。 親が元気なうちに、信頼できる子供に実家の管理・処分の権限を託しておくことで、認知症発症後でも子供の判断で実家を売却し、その資金を親の介護費用に充てることができるようになります。
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行政書士がサポートできること
実家の相続問題は、戸籍の収集、財産調査、遺産分割協議書の作成、そして各種名義変更や売却手続きなど、非常に多くの手間と専門知識を要します。平日の日中に役所や金融機関を何度も往復することは、お仕事をされている方にとっては大きな負担となります。
私たち行政書士は、相続手続きにおける「書類作成と事実証明のプロフェッショナル」です。
【当事務所がサポートできる主な業務】
- 相続人の確定(戸籍謄本・除籍謄本等の収集、相続関係説明図の作成)
- 相続財産の調査と目録の作成
- 遺産分割協議書の作成(話し合いで決まった内容を法的に正確な文書にします)
- 遺言書の起案・作成サポート
- 金融機関等の預貯金解約・名義変更手続き (※不動産の相続登記申請そのものは司法書士、相続税の申告は税理士の独占業務となりますが、当事務所では信頼できる各士業ネットワークと連携し、窓口を一本化してスムーズに対応いたします)
私自身、約40年にわたりサラリーマンとして企業の契約業務などに深く携わってまいりました。長年の実務で培った「契約・文書作成の正確性」はもちろんのこと、社会人としての長年の経験を踏まえ、ご相談者様一人ひとりのご事情や感情に寄り添った対応を何よりも大切にしています。
また、ファイナンシャルプランニング技能士(FP2級)の資格・視点も活かし、単なる書類作成にとどまらず、相続後の家計やライフプランニングを見据えた総合的なアドバイスを提供することが可能です。
「法律の専門家」というと敷居が高く感じられるかもしれませんが、どうぞ近所の頼れる相談役として、お気軽にお声がけください。
まとめ ~ 問題の先送りが最大の落とし穴
「実家の相続」は、誰もがいつかは直面する避けられないライフイベントです。 特に札幌のような降雪地域においては、空き家の放置は雪害による損害賠償リスクや維持費の増大など、一刻の猶予も許されない重大な問題を引き起こします。さらに、相続登記の義務化により、「とりあえずそのままにしておく」という選択肢は法律上も許されなくなりました。
最大の落とし穴は「問題の先送り」です。 親が元気なうちから少しずつ話し合いを始めること、そして、もし相続が発生してしまったら、すぐに専門家を頼って迅速に手続きを進めることが、大切な家族の絆と財産を守る唯一の方法です。
「うちの場合はどうなるんだろう?」と少しでも不安を感じたら、まずは一度、専門家の無料相談を活用して現状を整理してみてはいかがでしょうか。
■ 札幌での相続・遺言のご相談なら
札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
【お問い合わせ先】 つしま行政書士事務所
- 所在地:札幌市東区
- 対応エリア:札幌市内および近郊エリア(出張相談も承ります)
- 営業時間:平日 9:00〜18:00(※事前の予約で土日祝や夜間も対応可能です)
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