皆様、こんにちは。札幌の行政書士のやっくんです。
仲の良かった兄弟でも、相続をきっかけに関係が壊れるケースは珍しくありません。
あんなに仲の良かった兄弟が遺産相続を機に絶縁してしまった。こんな話自分には関係ないとお思いかもしれませんが、実は全くそんなことはありません。
「遺産相続」と聞くと、資産家やお金持ちの家庭だけの問題だと思っていませんか?
実は、家庭裁判所に持ち込まれる相続トラブルの多くは、遺産総額が5,000万円以下、さらには1,000万円以下のご家庭で発生しています。つまり、ごく一般的なご家庭であっても、決して無関係ではないのです。
中でも非常に多く、そして根深いのが「兄弟姉妹間の相続トラブル」です。
子どもの頃はあんなに仲が良かった兄弟なのに、親の死をきっかけに骨肉の争い(いわゆる「争族」)に発展してしまうケースは後を絶ちません。親御さんからすれば、残された子どもたちが自分の遺産をめぐって憎しみ合うことほど、悲しいことはありません。
なぜ、兄弟で揉めてしまうのでしょうか?そこには、いくつかの共通する「特徴」と「落とし穴」が存在します。
本記事では、これまで数多くの相続・遺言サポートを行ってきた行政書士の視点から、「兄弟で揉める遺産相続の特徴5選」と、「悲しい争いを事前に防ぐための具体的なポイント」について、わかりやすく徹底的に解説いたします。
親御さんの立場の方も、将来相続人になるお子様の立場の方も、ぜひ最後までお読みいただき、円満な相続への第一歩を踏み出してください。
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なぜ兄弟姉妹の相続は揉めやすいのか?その根本的な理由
具体的な特徴を見ていく前に、まずは「なぜ兄弟間でトラブルになりやすいのか」という根本的な背景を理解しておきましょう。
兄弟姉妹は、育ってきた環境は同じでも、大人になればそれぞれの生活を持っています。
① 経済状況の違い(裕福な家庭と、そうでない家庭)
② 親との距離感(同居しているか、遠方に住んでいるか)
③ 配偶者や子どもの存在(それぞれの家族の事情)
これらが複雑に絡み合い、それぞれの「主張」や「期待」がぶつかり合うのが遺産相続の場です。
さらに、親が亡くなったという悲しみや喪失感の中で、これまで心の奥底に溜まっていた「兄ばかり贔屓されていた」「私ばかり親の世話を押し付けられた」といった過去の感情的なしこりが爆発しやすいタイミングでもあります。遺産分割協議(誰がどの財産をもらうかの話し合い)が、単なるお金の計算ではなく、「親からの愛情の計り直し」になってしまうことが、解決を困難にする最大の理由です。
兄弟で揉める遺産相続の特徴5選
それでは、具体的にどのようなケースで兄弟間の相続トラブルに発展しやすいのでしょうか。特に要注意な5つの特徴を詳しく解説します。
特徴1 遺産の大部分が「実家(不動産)」である
最も多く、そして最も解決が難しいのがこのケースです。 現金や預貯金であれば、1円単位できっちりと分けることができます。しかし、不動産(土地・建物)は物理的に切り分けることが非常に困難です。
例えば、遺産が「評価額3,000万円の実家」と「現金300万円」だったとします。相続人が長男と次男の2人の場合、法定相続分(法律で定められた取り分の目安)は半分ずつ
(1/2)となります。 しかし、どうやって分ければよいでしょうか?
・ 長男の主張:「自分が実家を継いで住み続ける。次男には現金の300万円を渡す」
・ 次男の主張:「それでは不公平だ。きっちり半分の価値(1,650万円相当)をもらう権利がある」
このように、不動産は「分けにくい」という性質上、必ずと言っていいほど意見の対立を生みます。
不動産の分け方には以下の4つがありますが、どれも一長一短です。
① 現物分割: 土地を物理的に分筆する(狭くなり価値が下がる等の問題あり)。
② 代償分割: 一人が不動産をもらい、他の相続人に自分のお金(代償金)を払う(不動産をもらう人に十分な資金力が必要)。
③ 換価分割: 不動産を売却して、そのお金を分ける(実家を手放すことになるため、同居していた相続人がいると揉める)。
④ 共有: 兄弟の共有名義にする(※絶対に避けるべき最悪の選択肢です。将来、売却やリフォームができなくなり、子どもたちの代でさらに権利関係が複雑化します)。
遺産に不動産が含まれる場合は、事前に対策を打っておかないと、高い確率で揉める原因となります。
特徴2 「特別受益(生前贈与など)」がある
特別受益(とくべつじゅえき)とは、特定の相続人だけが、親の生前に特別な援助を受けていたことを指します。
・ 長男だけが、大学の医学部の高い学費を出してもらった。
・ 長女が家を建てる際、親から頭金として1,000万円の援助を受けた。
・ 次男が事業を始める際、親に多額の借金の肩代わりをしてもらった。
このような場合、他の兄弟からすれば「あいつだけ生前にたくさんもらっていてズルい!遺産分割ではその分を差し引いて計算すべきだ!」と主張したくなるのは当然の感情です。 民法上も、著しく不公平な場合は、生前に贈与された財産を遺産に持ち戻して(加算して)計算する制度があります。
しかし、問題なのは「どこまでが特別受益にあたるのか」という線引きが非常に難しいことです。 「あれはお祝い金だ」「いや、特別受益だ」「親の生活費の一部だ」などと水掛け論になりやすく、過去の預金通帳の履歴などをめぐって兄弟間で激しい非難の応酬になることが少なくありません。
特徴3 特定の兄弟が「親の介護」を負担していた(寄与分)
親の晩年、特定の兄弟(またはその配偶者)がつきっきりで介護をしていた場合も、トラブルの火種になりやすい特徴の一つです。
・ 同居して介護した長女の主張:「私は自分の時間とキャリアを犠牲にして、お母さんの下の世話までした。何も手伝わなかった兄と遺産が半分ずつなんて絶対に納得できない。私の取り分を多く(寄与分として)認めてほしい!」
・ 遠方に住む長男の主張:「介護は親族の義務だろ。遺産は法律通り半分ずつ分けるべきだ」
このように、介護の負担に対する評価の違いから揉めるケースです。 法律上も「寄与分(きよぶん)」といって、親の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人の取り分を増やす制度があります。
しかし、実務上、この「寄与分」が認められるハードルは極めて高いのが現実です。単に「よく介護をした」「病院の付き添いをした」という程度の、通常の親族間の助け合いの範囲とみなされるものは認められません。仕事を辞めて専従し、それによってヘルパー代などの出費を明確に浮かせた(財産を維持した)という客観的な証拠が必要になります。
感情面では「あんなに頑張ったのに」という思いが強いため、法律論と感情論がぶつかり合い、解決の糸口が見えなくなる典型的なパターンです。
特徴4 兄弟間で「経済格差」がある
兄弟それぞれの現在の生活水準や経済状況が大きく異なる場合も、遺産分割協議は難航します。
例えば、一方は大企業に勤めてマイホームも持ち経済的に余裕があるが、もう一方は非正規雇用で生活が苦しい、あるいは多額のローンや借金を抱えている、といったケースです。
経済的に苦しい側からすれば、親の遺産は「喉から手が出るほど欲しいお金」であり、生活を立て直すための重要な資金となります。そのため、「法定相続分きっちり(あるいはそれ以上)を絶対に現金でもらいたい」と強く主張します。 一方で、余裕のある側からすれば「実家はそのまま残したい」「そんなにお金にがっつかなくても」と感じてしまい、両者の温度差から溝が深まります。
「兄さんはお金持ちなんだから、私に多く譲ってよ」という情に訴える要求が通らないと、「冷たい」「薄情だ」という感情的なしこりを残すことになります。
特徴5 配偶者(夫や妻)が口出しをしてくる
実は、兄弟の当事者同士は「ある程度譲り合ってもいい」と思っていても、それぞれの背後にいる「配偶者」が口出しをしてくることで、一気に争族へと発展するケースが多々あります。
・ 「あなた、長男なんだから実家をもらうのは当然でしょ!絶対に譲っちゃダメよ」
・ 「お義姉さんばかり良い思いをするなんて許せない。きっちり法律通りにもらってきて!」
配偶者は直接の相続人ではありませんが、それぞれの家庭の家計に直結する問題であるため、自分の夫や妻のお尻を叩いて強硬な主張をさせることがあります。兄弟間であれば「昔からの情」で丸く収まるはずだったものが、当事者以外の第三者(義理の兄弟姉妹の目線)が介入することで、純粋な損得勘定だけのドライな争いに変貌してしまうのです。
兄弟の相続トラブルを事前に防ぐための「5つのポイント」
ここまで、揉めやすい特徴を見てきました。読んでいて「うちも危ないかもしれない…」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、安心してください。遺産相続のトラブルは、親が元気なうちに「事前の対策」をしておくことで、そのほとんどを防ぐことができます。
ここからは、行政書士として強くお勧めする、効果的な予防策を解説します。
兄弟間のトラブルを防ぐために、最も効果的で、かつ絶対的な力を持つのが遺言書です。
遺産分割協議(誰が何をもらうかの話し合い)が揉めるのは、「決まりがないから」です。親が自らの意思で「長男には実家を、次男には預貯金を相続させる」と遺言書で明確に指定しておけば、原則として兄弟で話し合いをする必要自体がなくなります。
【遺言書作成のポイント】
① 「公正証書遺言」を利用する: ご自身で書く「自筆証書遺言」は、形式の不備で無効になったり、「認知症が進んでいたから無効だ」「兄が無理やり書かせたんだ」と後から偽造・変造を疑われたりするリスクがあります。公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書遺言」であれば、法的な確実性が高く、検認手続き(家庭裁判所での確認)も不要なため、最も安全です。
② 「付言事項(ふげんじこう)」を活用する: 遺言書には、財産の分け方だけでなく、「なぜこのような分け方にしたのか」という親の思いを記すことができます(付言事項)。 「長男に多く残すのは、これからも実家と先祖のお墓を守っていってほしいからです」「次男は少し少なくなるが、大学進学の時に多く援助したからです」「兄弟仲良く、助け合って生きていってほしい」 このような親の「愛のある言葉」が添えられているだけで、不満を持っていた子どもの心がスッと収まることは本当に多いのです。付言事項は争族防止に極めて有効です。
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遺言書を作成する際、絶対に忘れてはならないのが遺留分(いりゅうぶん)という概念です。
遺留分とは、配偶者や子どもなどの法定相続人に最低限保障されている「遺産の取得分」のことです。たとえ親が「長男に全財産を相続させる」という遺言書を書いても、次男や長女は、長男に対して「自分の最低限の取り分(遺留分)を現金で払ってほしい」と請求する権利があります(遺留分侵害額請求)。
せっかく遺言書を作っても、この遺留分を侵害するような内容だと、結局その精算をめぐって裁判沙汰になってしまいます。 遺言書を作成する際は、各相続人の遺留分を計算し、最初からそれを満たすような財産配分(最低でも遺留分相当の現金を渡すなど)にしておくことが、真のトラブル予防になります。
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親の財産が「どこに」「どれくらい」あるのか、不透明な状態だと疑心暗鬼を生みます。 「長男が親の預金を使い込んでいるのではないか」「他にも隠し財産があるはずだ」という疑いが、争いの引き金になります。
親が元気なうちに、以下の財産をリストアップした「財産目録」を作成しておきましょう。
① 預貯金(銀行名、支店名、口座番号)
② 不動産(登記簿謄本や固定資産税の納税通知書を確認)
③ 有価証券(株式、投資信託など)
④ 生命保険(保険証券)
⑤ マイナスの財産(借金、ローンなど)
一覧表にして明確にしておくことで、相続発生後の財産調査の手間が大幅に省け、兄弟間の無用な疑いを晴らすことができます。
特徴1でお話しした「実家(不動産)しかない」ケースで非常に有効なのが、生命保険(死亡保険)の活用です。
例えば、長男に実家(3,000万円)を相続させ、次男に代償金として現金1,500万円を払わせたい場合、長男にそれだけの自己資金がなければ実現しません。 そこで、親を被保険者、「長男を死亡保険金の受取人」とする生命保険(保険金1,500万円)に加入しておきます。
親が亡くなった際、長男は保険会社から1,500万円の現金を受け取ります。(※死亡保険金は「受取人固有の財産」となるため、原則として遺産分割の対象にはなりません)。 長男はこの受け取った1,500万円を、そのまま次男に「代償金」として支払えば、二人とも平等な価値(1,500万円相当)を得ることができ、実家も無事に守ることができます。
生命保険は、遺産分割対策(代償金の準備)だけでなく、非課税枠を利用した相続税対策としても非常に優秀なツールです。
いくら完璧な遺言書を作っても、亡くなった後に突然内容を知らされれば、納得できない兄弟が出てくるかもしれません。 可能であれば、親が元気で判断能力がしっかりしているうちに、親と子どもたち全員で話し合う場(家族会議)を持ちましょう。
・ 親の今後の生活や介護の希望はどうするか。
・ 実家は将来誰に引き継いでほしいか、あるいは売却してほしいか。
・ 財産は現在どれくらいあるのか。
「縁起でもない」と避けたがる方も多いですが、親の口から直接「自分の想い」を伝えることが何よりの説得力になります。兄弟たちも、親の意思を知ることで心の準備ができ、相続発生後の無用な対立を避けることができます。
もしも「揉めそう」だと感じたら?早めの専門家への相談を
ここまで予防策をお話ししてきましたが、すでに親御さんの判断能力が低下していて遺言書が作れない場合や、いざ相続が起きてみて「これは兄弟間で意見が対立しそうだ…」と感じた場合はどうすればよいでしょうか。
重要なのは、「当事者だけで感情的にぶつかり合わないこと」です。 一度感情がもつれて「お前とはもう口も利かない!」という状態(紛争状態)になってしまうと、解決までに数年単位の月日と多額の裁判費用がかかってしまいます。
少しでも不安を感じたら、早めに第三者である専門家に介入してもらうことをお勧めします。
【相談先の選び方】
・ 行政書士 「まだ明確な争いにはなっていないけれど、手続きの進め方がわからない」「公平な第三者の立場で、財産の調査や遺産分割協議書の作成をサポートしてほしい」「親が元気なうちに遺言書を作りたい」という場合は、行政書士が最適です。私たち行政書士は、「予防法務の専門家」として、法的に有効な書面の作成や、円滑な合意形成のためのサポートを行います。(※すでに兄弟間で激しい対立があり、相手と交渉しなければならない場合は、弁護士の業務領域となります)。
・ 弁護士 すでに「絶対に納得できない」「調停や裁判で争うしかない」という紛争状態に発展している場合は、弁護士に代理人として交渉を依頼する必要があります。
・ 税理士 遺産総額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超えており、相続税の申告が必要な場合は税理士が専門となります。
誰に相談していいか迷った場合は、まずは身近な「街の法律家」である行政書士にご相談いただければ、状況をヒアリングした上で、必要に応じて適切な他士業(弁護士・税理士・司法書士など)と連携してサポートいたします。
円満な相続は「親の最後の愛情」
遺産相続は、長年培ってきた兄弟姉妹の絆を、一瞬にして壊してしまう恐ろしい力を持っています。「うちは仲が良いから大丈夫」「財産なんて大してないから」という油断が、最も危険です。
残された子どもたちが、親の葬儀の後に笑い合いながら思い出話ができるのか、それとも弁護士を立てて憎しみ合うのか。 それは、「親が生きている間に、どれだけ準備をしてあげられたか」にかかっています。
法的効力を持つ「遺言書」の作成や「財産目録」の整理は、決して残される家族への義務というだけでなく、親から子どもへ贈る「最後の愛情」であり、最高のプレゼントです。
ご自身の財産をどう引き継がせるべきか悩まれている親御さん。 将来の相続に漠然とした不安を抱えているお子様世代の方。
「何から手をつければいいかわからない」という方は、ぜひ一度、当事務所へお気軽にご相談ください。 それぞれのご家庭の状況に寄り添い、法的・感情的にも最善の「争族予防策」をご提案させていただきます。
皆様の円満な相続を、心より願っております。
■ 札幌での相続・遺言のご相談なら
札幌市東区の「つしま行政書士事務所」では、実家の相続手続きや、遺言書の作成に関するご相談を承っております。 40年間の企業法務・契約業務の経験とFPの視点を活かし、ご家族の想いを形にするサポートをいたします。初回相談は無料ですので、一人で悩まずに、まずはお気軽にご連絡ください。
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