「住み慣れた家で自分らしく暮らしたい。」そう願いながらも、年齢を重ねるにつれて、日々の暮らしのなかに少しずつ「困りごと」が増えてくるのはごく自然なことです。
・ 最近、重い米や大きなトイレットペーパーを買って帰るのが苦痛になってきた
・ 病院の受付や会計の仕組みが複雑で、行くたびに億劫になる
・ 役所から送られてきた通知書を読んでも、自分が何をすればいいのかさっぱり分からない
一人暮らしをされている高齢者の方や、離れて暮らす親御さんを持つご家族から、このようなご相談を受けることが非常に増えています。
かつては近所同士のお付き合いや同居するご家族の手助けによって自然と解決していた日常の不便が、核家族化や地域のつながりの変化によって、一人ひとりの肩に重くのしかかる時代になりました。
本記事では、一人暮らしの高齢者の方が抱える日常の悩みと、それを解消するための 日常生活支援サービス の全体像、そして役所の手続きや将来の備えまで、札幌の行政書士の視点から分かりやすく解説します。決して「自分一人で頑張り続けなければならない」と抱え込む必要はありません。一人ひとりの暮らしを守るためのヒントとして、ぜひ最後までお読みください。
「ちょっと困った」を誰にも頼めない。一人暮らしの高齢者が抱える日常の悩み
年齢を重ねるにつれて、買い物や通院、重い荷物の運搬などが負担になる
歳を重ねると、筋力や視力、体力がゆるやかに変化していきます。昨日まで当たり前にできていたことが、ある日突然、負担に感じられるようになるのは決して珍しいことではありません。
例えば、日々の買い物です。スーパーへの行き帰りの道のりが遠く感じられたり、飲料水や米、洗剤といった重い荷物を運ぶのが難しくなったりします。また、天候が悪い日や冬場の凍結した路面(特に札幌などの雪国では深刻な問題です)では、転倒への恐怖から外出自体を控えてしまうことも少なくありません。
通院に関しても同様です。足腰の痛みからバスや電車などの公共交通機関を利用するのが辛くなったり、広い病院内を移動するだけで体力を使い果たしてしまったりします。
役所から届いた書類の書き方やスマートフォンでの手続きがわからない
昨今、行政手続きや生活サービスの「デジタル化」が急速に進んでいます。しかし、これが高齢者の方にとって大きな壁となるケースが多発しています。
役所から送られてくる重要なお知らせや福祉サービス・各種申請の書類は、専門用語が多く、文字も細かいため、目を通すだけで疲れてしまうというお声をよく耳にします。「どこに記入し、どこに捺印すればいいのか」「自分は対象者なのか」を判断するだけで一苦労です。
さらに、行政手続きや各種予約において「スマートフォンやパソコンからのオンライン申請」が推奨される場面が増えました。画面の指示に従って操作することや、画面上での本人確認作業(マイナンバーカードの読み取りなど)に戸惑い、必要な支援や権利の申請を諦めてしまう方もいらっしゃいます。
子どもが遠方に住んでいたり、近所に頼れる人がいなかったりする事情
頼れる人が身近にいない環境も、悩みを深刻化させます。
- 子どもは本州に家を建てて生活しているため、ちょっとした手伝いのために来てもらうのは申し訳ない
- 配偶者を見送り、親しい近所の人も高齢化したり引っ越したりして、日常的に声をかけ合える相手がいない
このような事情から、日常生活のちょっとした不便を相談する相手が見つからない状況が生じています。
「まだ自分でできる」「人に迷惑をかけたくない」という気持ちで困りごとを抱え込んでしまう
真面目で自立心が強い方ほど、「この程度のことで人に頼ってはいけない」「迷惑をかけたくない」と考えがちです。「まだ自分で歩けるから大丈夫」「自分でできるうちは頑張らなければ」と無理を重ねてしまいます。
しかし、我慢を続けて無理な体勢で家事を行い転倒・骨折してしまったり、申請書類を放置した結果として受け取れるはずの給付金や手当を逃してしまったりすることもあります。
日常生活の小さな不便を放置しないことの大切さ
暮らしのなかの「小さな不便」は、いわば生活のSOSサインです。これを放置しておくと、外出の機会が減って閉じこもり勝ちになり、認知機能や筋力の低下を招いてしまうリスクがあります。
早い段階で適切な手助けやサービスを取り入れることは、「人に甘えること」ではなく、「住み慣れた自宅で長く自分らしく生き生きと暮らすための前向きな選択」なのです。
日常生活支援サービスとは? 介護保険では対処できないサービス
日常生活支援サービスは、暮らしの中の困りごとを支援するサービスの総称です
公的な福祉や民間サービスを調べる際によく目にする「日常生活支援サービス」という言葉ですが、これは単一の特定の制度を指すものではありません。高齢者や障がいを持つ方々が、住み慣れた地域で安心して生活を継続できるように提供される、さまざまな生活サポート全般を指す総称として使われています。
介護保険サービスと、それ以外の生活支援サービスの違い
高齢者の支援といえば「介護保険サービス」を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、介護保険制度と日常生活支援サービスには明確な違いがあります。
介護保険サービスは、要介護認定(要支援1〜2、要介護1〜5)を受けた方を対象としており、訪問介護(ヘルパー)やデイサービス、入浴介助など、主に身体介護や直接的な生活援助を行います。制度上のルールが厳格に定められているため、例えば「庭の草むしり」「ペットの世話」「大掃除」「娯楽のための外出の付き添い」などは、介護保険の対象外(保険適用外)となります。
一方、日常生活支援サービスには、介護保険の枠組みではカバーしきれない「制度の隙間」にある日常の困りごとを柔軟に補う役割があります。
介護認定を受けていない人でも利用できるサービスがあります
「要介護認定を受けていない(自立している)から、何のサービスも使えない」と思い込んでいる方がいらっしゃいますが、これは誤解です。
日常生活支援サービスの多くは、介護認定の有無にかかわらず利用できます。元気なうちから利用できるサービスを知っておくことで、将来体力が落ちたときにもスムーズにサポートへつなげることができます。
自治体、社会福祉協議会、地域の団体、民間事業者など、提供主体はさまざまです
日常生活支援サービスを提供している組織や団体は多岐にわたります。
- 市区町村(自治体): 公的な事業として、配食サービスやゴミ出し支援などを実施・委託しています。
- 社会福祉協議会(社協): 地域に密着した営利を目的としない組織で、ボランティアによる有償生活支援などを運営しています。
- NPO法人・市民団体・地域住民グループ: 助け合い活動として、低価格で身の回りの手伝いを行っています。
- 民間事業者: 家事代行会社、警備会社(見守り)、電力・ガス会社、便利屋などが、多様なニーズに応える有償サービスを展開しています。
支援内容や利用条件は地域や事業者によって異なります
利用の際での注意点はとして、「日常生活支援サービス」という名称の全国一律で共通した単一の法律や制度が存在するわけではないということです。
住んでいる自治体(市区町村)や選ぶ事業者によって、受けられる支援の内容、利用できる条件(年齢・世帯状況・所得制限など)、利用料金は大きく異なります。そのため、実際に利用を検討する際には、お住まいの地域の情報を個別に確認することが必要になります。
買い物・通院・家事の負担を軽くする。 身近な生活支援サービス
実際にどのようなサービスが存在し、日々の悩みをどのように解決してくれるのか、具体的にな例をみていきましょう。
買い物代行や食料品の宅配サービス
「スーパーまで歩くのがつらい」「重い荷物が持てない」という場面では、以下のような支援が役立ちます。
① 買い物代行サービス
ヘルパー(介護保険適用の場合)や民間事業者・地域のボランティアが、ご本人に代わって指定された店舗へ行き、日用品や食料品を買い揃えて自宅まで届けます。
② 移動販売・移動スーパー
自宅の前や近くの広場まで専用の車両が販売に来てくれるサービスです。自分の目で商品を見て選ぶ楽しみも維持できます。
③ 生協(コープ)などの定期宅配
注文書や電話、インターネットで注文した商品を毎週定期的に自宅まで届けてくれます。
通院時の付き添いや外出支援
「病院の受付や会計の順番待ちで気分が悪くならないか不安」「バスの乗り降りが一人では危ない」という場合には、外出支援が活用できます。
① 通院付き添いサービス
自宅からの移動の付き添いだけでなく、病院内での受付手続きの補助、診療待ちの付き添い、薬局での処方箋の受け取り補助などを行ってくれます。
② 福祉有償運送・介護タクシー
一人で公共交通機関を利用することが困難な場合に、ドア・ツー・ドアで目的地まで安全に移動をサポートします。
※ 利用条件や要介護度による制限がある場合があります。
掃除、洗濯、ゴミ出しなどの家事支援
「高所の掃除ができない」「重いゴミ袋を集積所まで運ぶのが大変」という日常生活の負担を軽減します。
① 家事代行サービス
部屋の掃除、布団干し、洗濯、食器洗い、料理作りなどを指定の時間内で行ってくれます。
② 戸別ゴミ出し支援
自治体や委託業者が、指定の曜日に自宅の玄関前などから直接ゴミを回収してくれる制度を導入している地域もあります。
電球の交換や家具の移動など、日常のちょっとした困りごとへの対応
高齢者の一人暮らしで意外と危険なのが、「高所での作業」や「重いものの移動」です。電球を取り替えようとして脚立から転落し、骨折してしまう事故は後を絶ちません。
地域シルバー人材センターや民間の「ちょっとしたお助けサービス(便利屋機能)」などを利用することで、電球1本の交換、家具の配置変更、庭の草むしり、雪かきなどを手軽な料金で依頼できます。
配食サービスや定期的な見守りサービス
① 配食サービス
栄養バランスに配慮されたお弁当を自宅まで毎日(または指定の曜日)届けてくれます。単に食事を提供するだけでなく、手渡しする際に「お変わりありませんか」と声をかけることで、安否確認の役割も果たします。
② 見守りサービス
専任のスタッフによる定期的な訪問や電話確認のほか、電気・ガス・水道の使用量をセンサーで知覚して異常を検知するスマート見守り、警備会社の駆けつけサービスなど、多様な形態があります。
身体介護・医療行為・送迎などは内容や必要な許認可で対応できる範囲が異なる
生活支援サービスを利用するにあたり、理解しておかなければならない限界があります。
例えば、無資格のボランティアや一般の家事代行スタッフは、入浴・排泄の介助といった「身体介護」や、服薬指導・爪切り(爪や皮膚に異常がある場合)などの「医療・看護行為」を行うことはできません。また、自家用車で人を送迎して運賃をもらう行為には道路運送法に基づく許認可が必要です。
「何を誰に依頼できるのか」は、サービス提供側の資格や許可によって厳格に分かれているため、事前の確認が必要です。
役所の手続きやデジタル化が難しいとき、誰に相談すればいい?
日常生活の物理的な困りごとに加え、高齢者を悩ませるのが「書類手続き」と「デジタル化」です。
行政から届く通知書や申請書の内容が理解できない
自治体や年金事務所、医療保険組合などから届く書類は、どうしても専門的で複雑な文章になりがちです。
・ 介護保険の負担割合証が届いたが、どう変わったのか分からない
・ 給付金の申請書が来たけれど、自分が書いて送るべきなのか判断がつかない
このようなとき、そのまま書類を放置してしまうと、受けられるはずの減額措置や手当が適用されなくなってしまう危険があります。
オンライン申請やスマートフォンでの本人確認が難しい
近年、行政サービスの効率化に伴い、マイナポータルを利用した各種手続きや、オンラインでの窓口予約が拡大しています。
しかし、「画面の操作手順が複雑で途中でエラーになる」「暗証番号の入力で固まってしまった」など、デジタル操作に不慣れな高齢者の方が取り残されてしまう場面が増加しています。
マイナンバーカードの更新や各種証明書の取得などで困ったときの相談先
マイナンバーカードの受取や更新、各種証明書の取得手続きで困った場合は、無理に一人で解決しようとせず、以下のような公的窓口を活用してください。
① 市区町村のマイナンバーカード特設窓口・市民課
窓口で直接、操作方法の説明や発行支援を受けられます。
② 地域の出張申請サポート
自治体によっては、区役所だけでなく地域ケアプラザや公民館などでマイナンバーカード申請の手続きサポートコーナーを開設している場合があります。
市区町村の窓口、地域包括支援センター、社会福祉協議会などの活用
役所からの書類や手続きに迷ったときは、まず公的な相談窓口に足を運ぶか電話をしてみましょう。
① 市区町村の高齢者福祉窓口
制度の基本的な内容や、申請が必要かどうかを教えてくれます。
② 地域包括支援センター
後述しますが、高齢者の暮らしに関するあらゆる相談を受け付ける総合窓口です。書類の内容を一緒に確認し、手続きのアドバイスをしてくれます。
書類の記入補助、提出代行、行政書士による書類作成など、それぞれの役割と限界
書類の手続き支援には、それぞれの立場に応じた役割と「法令上の限界」があります。
【各種相談先と書類サポートの役割・限界】
・ 地域包括支援センター / 福祉窓口
[役割]書類の読み合わせ、記入方法のアドバイス、窓口への引き継ぎ
[限界]申請者の代理人として権利義務に関する契約書や高度な法的書類を作成・代行することは
できない
・ 社会福祉協議会(日常金銭管理事業など)
[役割]福祉サービスの利用手続き補助、定期的な公共料金のお支払い手続きのサポート
[限界]対象者は判断能力が十分でない方に限られ、範囲も日常的な金銭管理に限定される
・ 行政書士(専門職)
[役割]官公署(役所)に提出する各種許認可・申請書類の作成、権利義務に関する契約書
(遺言・任意後見・財産管理など)の作成
[限界]身体介護や家事代行などの実務サービスを直接提供することはできない
行政書士は、「書面による手続きのプロ」として、ご本人の意思に基づいた正確な書類作成や行政手続きのサポートを行います。
暗証番号や銀行のパスワードなどを安易に他人へ教えないこと
手続きやデジタル操作で困ったとき、親切そうに近づいてくる悪質な業者や詐欺に注意しなければなりません。
マイナンバーカードの暗証番号、銀行口座の暗証番号、クレジットカード情報などは、たとえ親しい間柄であっても、また公的な職員やサポートスタッフであっても、安易に教えてはいけません。 正規のサポートにおいて、職員がパスワードを聞き出したりメモして預かったりすることは絶対にありません。
自治体・地域包括支援センター・社会福祉協議会の活用法
「困りごとがあるけれど、どこに行けばいいか分からない」という方は、まず公的な「総合相談窓口」を活用しましょう。
市区町村の高齢者福祉担当窓口で確認できる支援制度
お住まいの市区町村役場の「高齢者福祉課」や「介護保険課」などの窓口では、自治体が独自に行っている高齢者支援事業の情報を得ることができます。
例えば、家具転倒防止器具の取り付け助成、緊急通報装置の貸与、紙おむつの支給サービス、高齢者向けバス乗車券の発行など、知られていない制度が数多く存在します。
地域包括支援センターが担う高齢者の総合相談や関係機関との連携
地域包括支援センターは、高齢者の暮らしを支えるための「保健・医療・福祉の総合相談窓口」です。保健師、社会福祉士、主任ケアマネジャーなどの専門職が配置されており、お住まいの地域ごとに担当のセンターが決まっています。
◉ 主な役割
・ 介護や健康に関する相談への対応
・ 悪質商法や虐待からの権利擁護
・ 介護予防ケアプランの作成
・ 必要な福祉サービスや民間機関へのつなぎ(連携)
相談は無料で行えます。「どこに相談していいか分からない悩み」は、まず地域包括支援センターに相談するのが最も確実です。
社会福祉協議会や地域のボランティアによる生活支援の可能性
各市区町村にある社会福祉協議会(社協)では、地域住民の助け合い活動を推進しています。
ボランティアによるちょっとした家事手伝いや話し相手、サロン活動などを運営しているほか、判断能力に不安がある高齢者向けに「日常金銭管理事業(地域福祉権利擁護事業)」を実施し、福祉サービスの利用手続きや公共料金の支払いをサポートしています。
民間の家事代行、買い物支援、見守りサービスなどの活用
公的な支援やボランティアだけでは対応しきれない時間帯や作業内容については、民間の有料サービスを組み合わせるのが効果的です。
民間のサービスは費用が発生するものの、利用回数や内容の自由度が高く、自分の好みや生活リズムに合わせた柔軟なサポートを受けられるというメリットがあります。
相談先がわからないとき まず市区町村の高齢者福祉担当窓口に問い合わせる
もし地域の相談窓口の名称や電話番号が分からなければ、市役所や区役所の代表電話にかけ、「高齢者の生活相談をしたいのですが、どの部署に繋げばいいですか」とお尋ねください。担当部署や最寄りの地域包括支援センターの連絡先を案内してもらえます。
札幌市で利用できる制度や相談窓口
本記事をお読みの皆様のなかで、札幌市にお住まいの方、あるいは札幌市にご両親が住んでいる方向けに、札幌市の主な相談窓口や制度をご紹介します。
① 札幌市 地域包括支援センターと介護予防センター
札幌市内には各区に複数箇所の地域包括支援センターとと介護予防センターが設置されています。お住まいの「条・丁目」によって担当センターが細かく決まっていますので、札幌市の公式ホームページまたは各区役所保健福祉課で確認できます。
② 札幌市社会福祉協議会(各区社会福祉協議会)
地域での助け合い事業や有償ボランティア事業、日常金銭管理サービス(「安心サポートネット」事業など)を展開しています。
③ 札幌市の高齢者福祉サービス
札幌市では、配食サービス事業や軽度生活支援事業(日常の簡易な作業の手伝い)、緊急通報システム事業などを実施しています。利用条件や自己負担額はサービスによって定められていますので、お近くの地域包括支援センターへご相談ください。
サービスを利用する前に確認したい!料金・契約内容・トラブル防止のポイント
民間事業者や有料の生活支援サービスを利用する際は、後からのトラブルを防ぐために、事前に契約内容をしっかり確認することが極めて重要です。
料金体系と追加費用、交通費、キャンセル料の確認
「思っていたより請求金額が高かった」というトラブルを避けるため、以下の点を確認しましょう。
- 基本料金: 1時間あたりいくらか、または1回あたりいくらか。
- 追加費用: 時間延長をした場合のアディショナル料金、早朝・夜間・土日の割増料金はあるか。
- 交通費: スタッフが自宅まで来るための交通費(実費か一律料金か)は別途請求されるか。
- キャンセル料: 体調不良などで急にサービスをキャンセルした場合、前日・当日のキャンセル料はいくらかかるか。
具体的に何をしてくれるのか、対応できないことは何か
依頼する作業の「範囲」を明確にしておくことが大切です。
例えば、掃除を依頼する場合でも、日常的な掃除機がけや拭き掃除までなのか、レンジフードの分解清掃や高所の窓拭きまで含まれるのかで対応が分かれます。作業当日に断られて困ったということにならないよう、見積もり時や事前の打合せでやってほしいことと事業者が対応できないことを具体的に確認しましょう。
契約期間、解約条件、返金規定などの確認
- 単発(1回限り)の契約なのか、月額定額の継続契約なのか。
- 解約したい場合は何日前までに申し出ればよいか。
- 途中で解約した場合、すでに支払った費用(違約金や前払い金など)の返金規定はどうなっているか。
特に高齢者の場合、突然の入院や施設入所などでサービスを急遽解約せざるを得ないケースがあります。解約条件が厳しすぎないか確認しておきましょう。
預貯金通帳、キャッシュカード、印鑑などを預ける場合の慎重な判断
買い物の代行などを依頼する際、現金や電子マネーを預ける場面が出てきます。
預貯金通帳、キャッシュカード、実印や銀行印を事業者に丸ごと預けることは、極めてリスクが高い行為です。 金銭トラブルや横領被害を予防するため、必要な現金のみを事前に手渡しし、必ず「領収書」や「お買い物レシート」とお釣りを確認する運用を徹底してください。
もし日常的な金銭管理自体が困難になってきた場合は、個人の業者に頼るのではなく、社会福祉協議会の公的事業(日常生活自立支援事業)や、後述する行政書士等の専門職との「財産管理委任契約」などを利用すべきです。
高額な前払い金や、必要以上に長期間の契約を求められた場合の注意
「今契約すれば1年分まとめて安くなります」「入会金として数十万円が必要です」などと、高額な前払いや長期間の契約を強引に迫る事業者には注意が必要です。その場の雰囲気に流されず、「一度持ち帰って家族や信頼できる人に相談します」と言って、その場での即決を避けてください。
契約書や領収書を保管し、家族など信頼できる人にも契約内容を共有すること
交わした契約書、利用明細書、領収書は捨てずに必ず一箇所にまとめて保管しておきましょう。また、離れて暮らすお子さんやご親族がいる場合は、「〇〇という会社と、週に1回掃除を頼む契約をしたよ」と、契約内容や連絡先を共有しておくことで、万が一の際にも迅速に対応できます。
不安を感じた場合の消費生活センターなどへの相談
「強引に契約させられてしまった」「言っていたサービス内容と違うのに高額な請求をされた」など、契約に関して少しでも不安や疑問を感じた場合は、すぐに公的な相談窓口へ連絡してください。
- 消費者ホットライン: 局番なしの「188(いやや!)」に電話すると、お近くの消費生活センターを案内してくれます。
元気なうちに考えたい。 将来の生活を支える契約や制度
ここまでは日々の買い物や掃除といった日常生活の支援について解説してきましたが、一人暮らしの高齢者の方にとって、もう一つ避けて通れないのが将来への不安です。
・ もし自分が認知症になったら、誰がお金の管理をしてくれるのか
・ もし動けなくなって病院や施設に入るとき、誰が身元保証や手続きをしてくれるのか
・ 自分が亡くなった後、自宅の片付けや葬儀は誰がしてくれるのか
こうした不安は、元気で判断能力がしっかりしている今のうちに、法的な契約や制度を準備しておくことで解消できます。
- どのような制度か: 自分の意思表示(判断能力)はしっかりしているものの、身体が不自由で銀行に行けない、手続きに行けないという場合に、信頼できる特定の人(受任者)に自分の代わりに財産管理や生活上の手続きを行ってもらう契約です。
- できることの例: 預貯金の払い戻しや振込代行、公共料金の支払い、定期的な生活費の届出、医療費の支払い手続きなど。
- ポイント: 当事者間の合意によって成立します。民間の家事代行と異なり、代理権(ご本人の代わりに手続きを行う権限)を明確にした契約書を作成して行います。
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- どのような制度か: 将来、認知症や病気などで自分の判断能力が低下したときに備えて、「誰に(後見人)」「どのような支援(財産管理や介護契約などの代理)」をしてもらうかを、お元気なうちに公証役場で「公正証書」にして定めておく契約です。
- 仕組み: 契約を結んだ時点では効力は発生しません。実際に判断能力が低下した段階で、家庭裁判所に申し立てを行い、「任意後見監督人」が選任されて初めて任意後見としてのサポートがスタートします。家庭裁判所のチェックが入るため、不正が防げる安心感があります。
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- どのような制度か: ご自身が亡くなった後のさまざまな手続き(死後事務)を、第三者に託しておく契約です。
- できることの例: 医療費や施設利用料の精算、遺品整理・部屋の引き渡し、電気・ガス・電話などの解約手続き、葬儀・納骨・供養に関する手配など。
- ポイント: 通常、人の死亡によって委任契約は終了しますが、「死後事務委任契約」は死亡後も契約を継続させる特約を結ぶことで、身寄りのない方や遠方の家族に負担をかけたくない方の死後の不安を解消します。
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これらの制度は、人の人生の「段階」に合わせて使い分ける必要があります。
【人生の段階と活用する主な契約制度】
1.元気だが身体が不自由な時期(判断能力:あり)
⇒ 『財産管理委任契約』で日々の金銭管理や手続きをサポート
2.認知症などが進行した時期(判断能力:低下)
⇒ 『任意後見契約』を発動させ、後見人が財産や契約を保護
3.お亡くなりになった後の時期
⇒ 『死後事務委任契約』で葬儀・納骨・部屋の片付け等を執行
⇒ 『遺言書』で遺産の分け方を指示
このように、一つの契約で生前から死後までのすべてをカバーできるわけではありません。ご自身の今の状態と将来の希望に合わせて、複数の契約を組み合わせて設計(ライフプランニング)することが大切です。
行政書士に相談できること。 書類作成や契約の準備をサポート
将来の備えや複雑な手続きを考えたとき、力になれる専門職の一つが「行政書士」です。行政書士がどのようにお役に立てるのか、その業務範囲と限界について説明します。
行政書士が取り扱える範囲での各種契約書や行政提出書類の作成支援
行政書士は、「権利義務に関する書類」や「官公署(役所)に提出する書類」を作成する法律の専門家です。
一人暮らしの高齢者の方に対しては、前章で解説した「財産管理委任契約書」「任意後見契約の原案」「死後事務委任契約書」、そして自筆証書遺言や公正証書遺言の「遺言書作成支援」など、将来の意思表示を法的効力のある書面にするサポートを行います。
財産管理委任契約や死後事務委任契約などを検討する際の契約内容の整理
契約書をつくる前段階として、「自分が将来どうしたいのか」「どのようなサポートが必要なのか」をご本人と一緒に丁寧に整理(コンサルティング)します。
「毎月のご生活費はどのように引き出すか」「万が一のとき、どの病院に搬送してほしいか」「葬儀の規模や納骨場所の希望はあるか」など、お客様の想いやご希望をひとつひとつヒアリングし、漏れのない契約内容として文章化します。
遺言書の作成支援や、相続に備えた書類の準備
自分が亡くなった後に、残された財産を誰にどのように引き継ぎたいか(あるいは特定の団体に寄付したいかなど)を明確にする「遺言書」の作成を支援します。戸籍謄本の収集、財産目録の作成、公正証書遺言を作成する際の公証人との事前打合せや伝達、当日の証人立ち会いなどをトータルでサポートします。
任意後見契約について、公正証書による契約の準備を支援できる
任意後見契約は法律上、「公正証書」で作成しなければならないと定められています。行政書士は、お客様の意向に沿った任意後見契約の文案(原案)を作成し、公証役場との打ち合わせや必要書類の収集、当日の付き添いなど、スムーズに公正証書が作成できるよう準備を整えます。
契約の内容や案件によっては、弁護士などとの連携が必要になること
高齢者の問題は複雑であり、一つの専門職だけで完了しないことも多くあります。
例えば、すでに認知症が進行しており法定後見の申し立てを行う場合や家庭裁判所との手続きが必要な場合は弁護士など、相続税の申告や対策が必要な場合は税理士、契約書を公正証書にする場合は公証人との連携が必要です。
信頼できる行政書士は、自分の業務範囲を超えた問題が発生した場合でも、他士業の専門家や地域包括支援センターと連携し、窓口となって適切な専門職へおつなぎします。
行政書士は契約書作成・確認作業などの専門業務をお手伝いします
大切な注意点として、行政書士の本来業務は「書類作成や契約準備の法的サポート」であり、行政書士自身が日々のご自宅の掃除や通院の付き添いといった「生活支援サービスの実務」を直接行うわけではありません。
※ 行政書士が「財産管理契約」に基づいて銀行口座から生活費を出金してご本人に届けるなどの金銭管理業務を行うことはありますが、家事代行そのものをするわけではありません。
ご自身の求めるサービスが「法的文書の準備」なのか、「日々の手足となって動いてくれる生活支援」なのかを理解し、適切な専門家や事業者を使い分けることが重要です。
まだ大丈夫と思っている今こそ。 自分らしい暮らしを守る準備を始めよう
行政書士として高齢者やそのご家族とお会いするなかで、痛感することがあります。それは、「問題が起きてからでは、選択肢が非常に狭まってしまう」という現実です。
困りごとが深刻になる前に、利用できる支援や相談先を知っておくこと
認知症が高度に進行してしまってからでは、自分の意思で誰に頼むかを決める「任意後見契約」や「遺言書」を結ぶことができなくなります。(意思能力がないとみなされ、裁判所が後見人を選ぶ法定後見制度しか利用できなくなります。)
また、完全に体力を失ってから生活支援サービスを探し始めるのは、ご本人にとっても大きな負担となります。だからこそ、「まだ自分でできる」「まだ大丈夫」と思えている心と体に余裕がある今こそ、情報を集め、準備を始める絶好のタイミングなのです。
家族がいる人も、いない人も、頼れる人やサービスを整理しておくこと
お一人さま(身寄りのない方)はもちろんのこと、離れて暮らすお子さんがいる方も同様です。子どもがいるから安心と思っていても、仕事や育児を抱えるお子さんにどこまで負担をかけてよいかは別の問題です。
「ここまでは公的サービスや民間業者に頼る」「ここからは家族に相談する」「万が一の法的な手続きは専門家に委任しておく」というように、頼る先を整理しておくことは、ご自身の安心だけでなく、ご家族への最大の思いやりにもなります。
緊急連絡先、かかりつけ医、重要書類の保管場所などを確認すること
今すぐできる第一歩として、以下の情報をエンディングノートやノートに書き留め、整理しておくことをお勧めします。
① 緊急連絡先
親族の連絡先、担当のケアマネジャー、地域包括支援センター
② 医療情報
かかりつけ医の名称・電話番号、持病、服用している薬
③ 重要書類の場所
年金手帳、保険証、マイナンバーカード、通帳印鑑などの保管場所(鍵の場所など)
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自分でできることと、人の支援を受けることを分けて考えること
暮らしのすべてを人に頼る必要はありません。「料理や散歩は自分で楽しんでやる」「重い買い出しと高所の電球交換だけはサービスを頼む」というように、自分の力で行うことと、人の手を借りることを明確に分けることで、自立した生活を長く維持できます。
必要に応じて家族や専門家と話し合うこと
自分の希望(どこで暮らし続けたいか、万が一のときはどうしてほしいか)を、日頃からご家族や地域の信頼できる専門家に伝えておきましょう。話をすることそれ自体が、自分らしい暮らしを守る確かな第一歩となります。人に頼ることは決して恥ずかしいことでも、わがままでもありません。長く自分らしく生きるためのポジティブな権利なのです。
おわりに
長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
歳を重ねるにつれて生じる日々のちょっとした困りごとや、将来に対する不安――。一人暮らしのなかでそれらを抱え込むと、時にとても大きな重圧に感じられるかもしれません。しかし、本記事でご紹介したように、地域には自治体、地域包括支援センター、社会福祉協議会、そして多様な民間の生活支援サービスなど、皆様の暮らしを支える温かい手がたくさん用意されています。
当事務所では、一人ひとりのご状況やご希望を丁寧にお伺いし、以下のようなサポートを行っております。
- 将来の不安に備える各種契約書の作成(財産管理委任契約、任意後見契約、死後事務委任契約など)
- ご自身の想いを確実につなぐ遺言書の作成支援・相続のご相談
- 各種行政手続きや申請書類の作成サポート
私どもが大切にしているのは、「真心・誠実・誠意」をもって、お客様お一人おひとりの事情に寄り添う姿勢です。決して押し付けの提案や無用な契約をお勧めすることはございません。
ご相談をお受けするなかで、書類作成や法的な手続きではなく、まずは日々の介護や生活支援が必要だと判断した場合には、自治体の福祉窓口や地域包括支援センター、他の専門家など、最も適切な相談窓口へ責任を持ってお繋ぎいたします。
「こんな些細なことを相談してもいいのだろうか」
「何から手を付ければいいのか分からない」
そのように迷われているご本人様はもちろんのこと、「札幌で一人暮らしをしている高齢の親が心配だ」とお悩みの遠方にお住まいのご家族様からのご相談も大歓迎です。
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